JP法指標コラム JP法の指標においても、一般的なテクニカル指標と同様に、 指標の日々の変動をスムージング(移動平均化)して、 騙しを減らすとともに、指標の方向性を見極め易くする手法が用いられている。 その時に、JP法では、単純な移動平均法ではなく、指数平滑法を用いている。 JP法の指標を理解するにあたっては、この指数平滑法の理解が一つのポイントとなる。 |
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スムージングについて
〜 移動平均線と平滑移動平均線 〜
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1. スムージング
スムージング [ smoothing ] ‥‥ コンピュータの表示、あるいは、印字する2点間を補完して、
滑らかな輪郭を得る技術。
( コンサンスカタカナ語辞典 第6刷 発行 株式会社 三省堂 )
2. スムージング(移動平均化)〜 方向感を掴み易くし、かつ、騙しを減らす
〜
もともとは、株価弾性値は、
ある期間の平均的投資家の懐勘定を把握すること意図として、作られたものである。
平均的投資家の懐勘定は、日々の株価の変動を受けて、著しく変動している。
そのため、それをそのまま分析していては、方向感を掴みにくく、
また、これを売買シグナルとしていては、騙しも増える。
そのために、生弾性値の幾日かの平均を使うことによって、滑らかな動きに変えて、
方向感を確認するとともに、騙しを減らそうという考え方が生まれる。
これは、一般的な移動平均線を使う場合にも用いられる考え方でもある。
3.株価移動平均線とコスト移動平均線(出来高加重移動平均線)
通常、株価分析に用いられる株価移動平均線は、
その周期(日柄)の投資家の平均取得単価の近似値を表しているとして、
分析の対象とされる。
‥‥であるならば、なぜ、その平均取得単価を考える際に、出来高を考慮しないのか?
実際、出来高が、データとして、存在しているのだから、それを生かさない手はないだろう。
こういう考え方を生かしたのが、コスト移動平均線(出来高加重移動平均線)である。
4.株価移動平均乖離率とコスト移動平均乖離率(出来高加重移動平均乖離率)
現在、株価移動平均乖離率もよく使われるテクニカル分析の指標である。
これに対して、JP法では、より厳密に、投資家の懐具合を把握することを目的として、
コスト移動平均線(出来高加重移動平均線)からの乖離に着目することにした。
つまり、生弾性値とは、コスト移動平均乖離率(出来高加重移動平均乖離率)なのである。
そして、株価弾性値は、動きの激しい生弾性値を、指数平滑法を使って、スムージングして、
方向感を掴むとともに、騙しの減少を意図して作られたものである。
5.スムージングの手法
〜 移動平均法と指数平滑法 〜
同じスムージングを行うにしても、
どのような移動平均法を使うによって、その結果が異なって来る。
一般的な株価移動平均の算出に用いられている計算方法は、単純な移動平均法である。
例えば、n日株価移動平均を算出する式は、
株価移動平均 =
‥‥ となる。
これに対して、株価弾性値の計算に用いられているのは、指数平滑法と呼ばれる方法である。
指数平滑法は、直近の値動きほど大きく加重する加重移動平均法の一種で、
累積加重平均法とも呼ばれている方法である。
指数平滑法は、一定期間内の平均値ではなく、保有データの数値をすべて計算期間としている。
例えば、n日株価指数平滑平均を算出する式は、
初日
株価指数平滑平均(初日)= 終値(初日)
初日以降
株価指数平滑平均 (当日)
= 株価指数平滑平均(前日)+ { 終値(当日) − 株価指数平滑平均(前日)} ×
‥‥ となる。
上記の式にある の部分は、平滑化定数と呼ばれる。
平滑化定数は、0≦平滑化定数≦1であり、
一般に、期間n日間の平滑化定数は、 が用いられる。
6.指数平滑法の特性
指数平滑法は、移動平均法と比較すると、
直近の値に重みをかけた値で出てくるが、いくら古い日の値でも、わずかに、その影響が残る
という一見、不思議な特性を有している。
これは、指数平滑法が、
過去の指数平滑平均と当日の値の差に、平滑化定数(1より小さい数)掛けたものを、
過去の指数平滑平均に加えて計算しているため、
直近の値に重みを掛けながらも、過去の値の影響を残すということが可能になっているためである。
7.トレンド分析と指数平滑法
指数平滑平均線は、単純な移動平均線よりも、振幅が小さく、反応が早い。
したがって、
トレンド分析においては、その転換を早く知ることに有利な上、
小さなトレンドに迷わされない(“騙し”が少ない)とされている。
これは、その計算式を見れば、明らかであるが、
単純な移動平均線は、計算に際して、直近の値が追加される時に、
その代わりとして、一番古い値が計算から外される。
したがって、その影響で、移動平均が振れてしまうことになる。
対して、平滑移動平均線は、
過去の移動平均と当日の値の差に、平滑化定数(1より小さい数)掛けたものを、
過去の移動平均に加えて計算しているため、
過去の値の影響を残しながら、移動平均を算出して行く。
このことが、古い値が計算から外されることによる影響を無くし、
また、直近の値に重みを付けながらも、
移動平均としては、振れが小さくなるという特性を持たせることになっている。
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株価移動平均2線乖離率とMACDの違いについて
〜 移動平均線と指数平滑平均線 〜
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MACDとは、「Moving Average Convergence Divergence
trading method」の略で、
日本語では、「移動平均・収束・拡散法(発散法)」と呼ばれる。
MACDは、株価移動平均2線乖離率と同様に、2つの移動平均線の乖離率に着目しているが、
その際に、単純な移動平均線を用いるのではなく、指数平滑平均線を用いる。
つまり、MACDは、2つの指数平滑平均線の乖離率に着目しているのである。
指数平滑平均線は、単純な移動平均線よりも、振幅が小さく、反応が早い。
そのため、トレンド分析においては、
その転換を早く知ることができ、かつ、小さなトレンドに迷わされない(“騙し”が少ない)
という特性を有している。
MACDは、指数平滑平均線のその特性を生かして、
より早く、より正確に、トレンドの把握を行うことを意図しているのである。
MACDの算出式
MCAD = 長期株価指数平滑平均 − 短期株価指数平滑平均
株価指数平滑平均
= 株価指数平滑平均(前日)
+ 平滑化定数 ×{ 株価指数平滑平均(当日)− 株価指数平滑平均(前日) }
平滑化定数 =
MACDのシグナル = 一定期間のMACDの移動平均線
MACDでは、
上記のMACDとMACDのシグナルの交差と、その水準を使って、
テクニカル分析を行う。
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株価移動平均2線乖離率、MACD、M指標、MAV指標の比較
〜 算出された乖離率に対して、指数平滑平均を求めるM指標、MAV指標 〜
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株価移動平均2線乖離率、MACD、M指標、MAV指標は、
それぞれ、乖離率を求める対象、乖離率を求める対象の平均法、乖離率を計算後の処理が異なる。
その詳細は、以下の通りである。
|
乖離率を求める対象 |
乖離率を求める対象 の平均法 |
乖離率を計算後の処理 |
株価移動平均2線乖離率 |
株価移動平均 |
移動平均法 |
そのまま |
MACD |
株価指数平滑平均 |
指数平滑法 |
そのまま |
MACDのシグナル |
株価指数平滑平均 |
指数平滑法 |
移動平均法 |
M指標 |
出来高加重平均 |
加重平均法 |
指数平滑法 |
MAV指標 |
売買代金移動平均線 |
移動平均法 |
指数平滑法 |