第10回 勝負しちゃいました<6/19>
好事魔多しで、今は気を引き締めなければいけない時だとも思うのですが、金曜日はちょっと無理して買ってしまいました。 この間、利食ったキンセキと三菱伸銅を買い戻したのはよいとしても、1000円割れの日興証券や急落した京セラ、それから決算期待のノジマなど、あちこち買い散らかして、普段あまり手数料のあがらない自分としては相当な手数料を稼いでしまいました。 ほとんどが信用なので、今のような不穏なときに買い過ぎるのは、防衛本能に反します。たとえ上がることがほとんど確実に思えても、じっとこらえるのが長くこの仕事をやっていくために必要なことだと自分を戒めているのですが、金曜日は若気のほうが勝ってしまいました。 私はどう考えても、今は「買い」と強く思えるのです。2-3ヶ月前、そんなに強気で大丈夫かなという人が、今は資金はあっても弱気です。情報通信相場で何も乗れず、中低株相場にも乗れていない人も弱気です。その理由は様々であっても、曲がっている人たちが弱気ということは、とりもなおさず強気が可能というのが第一の感覚です。 それに、今上がっている銘柄が不安だというのなら、どんな銘柄のどんな時が安心なのか、私はつくづくに不思議に思えます。3万円のソニ−や400万円のドコモなら人気と実力があるから、安心だと思えるのでしょうか。今でこそそんなことはないと否定するでしょうが、中低位株好きの人たちでさえ、その頃はそんなことを言い、私の勧める銘柄をゲテモノで、心配だと言っていました。今上がっている銘柄は、そのほとんどがゲテモノとしてトコトン売られ、最近になって意外に業績が上昇したので、少しだけ見直し買いが入っている段階です。 例えば、極端な例がカメイ(8037)です。 単独決算で、減益なのでガッカリしていたところ、先日発表された連結では1株利益で69円の大健闘です。東北地方では非常に信頼の厚い企業で、本業の石油販売では不振だったのですが、子会社の自動車販売やコカコ−ラが順調に伸びて、本業の不振を完全にカバ−した形です。金曜日にちょっと上がって、528円と最近の高値になりましたが、資産内容に定評があり、15円配当確実のこの銘柄を仮に550円で買っても、どういう不安がありましょう。人気がないため、また500円近辺に戻ってしまうことを心配するのでしょうか。それとも、市場全体の大暴落で、470円の安値を更新してしまうことを心配するのでしょうか。しかし、そのような心配は、いついかなる時にもいかなる銘柄を買うときにもあるはずであり、そのリスクがいやなら、株を止めるべきとさえ思います。
キンセキ(6949)や三菱伸銅(5771)は、大幅上昇した後なので、それほど安心ではありませんが、今期の業績上昇が確実だとすれば、どのくらい高値から押すかの不安であり、元の木阿弥に戻ってしまうのではないかという安値覚えの不安を抱くのは、株を買う以上、行き過ぎた心配だと思います。 (今の携帯電話向け中心の半導体や電子部品の品不足はいずれ解消され、生産過剰になると心配する人もいます。確かにそうでしょう。上がったものはいずれ下がります。問題は今が上がり初めか、天井近くかの判断であり、その点も投資家はそれぞれに判断する必要があるはずです)
いずれにしても、私は今の局面は、銘柄と株価位置の判断さえわきまえれば、比較的に安心して株を買えるときだと思っています。
週明け、全面安になれば、ややつらいことになりますが、それは元より覚悟しています。 |
第9回 我々にとってはよい相場 <6/12>
SQだGDPだといって、先週後半の日経平均はジリ貧になり、また1万7千円を割ってしまいましたが、強がりなんかでなく、心底から日経平均なんかもうどうでもよいと感じています。 我々外務員にとっての至上課題はお客をいかにもうけさせるかです。お客が儲かっている限り、手数料は後からついてきます。そして、我々がいちばんやりがいを感じるのは、日経平均が上昇し、だれもがエビス顔になっているときではなく、日経平均はそれほど上がらないのに自分のお客は儲かっている時、あるいは日経平均が下がっているのに自分のお客は大損をまぬがれているときです。 ただし、2−3週間前のように、日米の株価指数が下がり、下げパニックがますます広がりかねないような時はさすがに困ります。証券市場に糧を求めていく以上、市場にペンペン草も生えないような状態が訪れては死活問題になるわけです。したがって、ほどほどの状態が一番望ましいわけなのです。 そういう意味では、日経平均は体温計のようなものだと思います。37度以上だったら警戒だし、35度以下でも警戒ですから、そのラインを切る状態だったら、手に汗握って体温計の目盛りを気にする必要があると思います。しかし、平熱の中での変動だったら、毎日の上がり下がりを気にしても、なんの意味もないはずです。 先週は、我々にとってとてもよい相場でした。前回触れたソフトバンクは下がりましたが、まだ打診の段階ですし、乗り換えの対象にした京セラはそれ以上に下がっているので、お客に対して顔がたっています。ただし、同じお客で、アマダマシニックスを半分売ったと書きましたが、これについては、翌日寄り付き早々に20円も下がり、やはり売っておくものだと思った途端、逆に38円高の310円に急騰し、安く売り過ぎた結果になりました。 もっとも、後悔しているわけではありません。当初の目標が270−300円だったのですから、この株についてはこのお客の残りも含め全株を293−304円で売却してしまいました。外資系ではなんと670円目標というレポ−トを出したそうで、その後も高いようですが、2倍になってもおかしくない割安株で安値に放置されている株はまだいくらでもあるはずです。 前に、決算発表での注目株を列挙したところ、原文にはなかったケイ線の囲みまでつけて、非常に目立つ形でこの欄に載り、しかも6銘柄中から合同製鉄、エイデンの2銘柄が目先失敗の結果となり、気にしておりました。しかし、アマダマシニックスの成功でやや面目を持ち直したのではないでしょうか。 もっとも、この文章は、銘柄当てを目的としているのではなく、我々外務員の本音を書こうとしているのですが、毎日が銘柄の商売ですから、どうしても銘柄推奨のようなことにもなってしまうわけです。 先週の状況に話は戻りますが、水曜日の引け後、机を並べている仲間との雑談の中で、目下の当たり屋から三菱伸銅(5771)が面白そうだという話が出ました。見ると、連結EPS24円への急回復予想で、当日の終値は8円安の313円で、明らかに買いと判断されました。決算発表が前の週の金曜日で、混雑日ではあるし、土曜日の新聞はのんびり見てしまったので、見落としていたのです。 すわ買いだと思い、その日のうちにお客に電話し、常連の2人から翌日の注文を獲得しました。(その他のお客からは、考えておくと、これもまた決り文句の返事でした) 翌日は買い気配から10円高の323円の寄り付き、その後押しがあるはずと思い、半分の株数を下に差していたのですが、そのまま上に行きましたので、結局1人は336円、もう1人は340円まで上げて買ってもらいました。その後、他のお客も含め、買い増しのチャンスを狙ったのですが、結局買えないまま翌日の金曜日には、390円まであり、385円の終わりでした。 言い出しっぺの当たり屋は370円でさっさと利食って、別の株に乗り換えましたが、私はタイプが違うので、ここはじっくり480円目標で持続し、さらに買い増しのチャンスを狙うことにしています。 大真空(6962大阪)には相変わらず一番力を入れて、金曜日にはとうとう810円まで買ってしまいました。午前中にキンセキを利食って、ほっとしているお客にやや無理気味に買ってもらったら、大引けは800円の変わらずだったので、やや調子に乗りすぎたかと反省しています。 好事魔多しはつねに自戒していることです。日本電波はじめ水晶3銘柄が上がり、オリコが上がりそうになり、山善まで上がりかける、おまけに前から注目している内田洋行(8057)も強含んでくるとなると、どうしても気分が上ずってきます。過去の大失敗は自分や自分の運を過信した結果でした。 その一方で、攻めるときは攻めに徹すべすということもあり、安易な弱気も禁物です。バランスに注意しながら当面は中低位株物色の流れの中で、お客の儲けを蓄積したいと考えています。 |
第8回 防衛本能<6/6> 追加分 日経平均は週明けの今日(5日)、1万7千円台を大きく回復しました。市場の動きもだいぶ明るくなってきましたので、様子を見ると言っていたお客に「どうです、そろそろ買いませんか」と声をかけましたが、だいたいそのタイプのお客は、「ちょっと上がちャってて、買いにくいね」と今度は言い出すに決まっているのです。
先週までは、下げ止まりが確認できなければ買えない、で、上がってくれば今度は上がっているので買えない、というのでは一体いつになったら買うのかと毒づきたくもなるのですが、大切な財産の運命を決めることなのだから、他人がとやかく言うべきでないということを肝に銘じて、私はニコニコと電話を切るのです。 結局、今日も結局買ってくれた顧客は、前回話題にしたお客ともう一人だけで、その二人は先週だって、私が強く勧めれば買ってくれたはずの人たちです。 東京エレクを買い損なったお客には、大真空を買い増ししてもらいました。日本電波、キンセキも買ってもらっているので、同一業種に入れ込み過ぎかとも思いましたが、他の持ち株も上がり、余裕が出てきたので、ここは勝負のときだと思いました。 もう一人のお客は、今年になってなぜか非常にうまく行っており、今回の下げの中でも結構うまく拾えました。中でも、京セラを決算前に1万4千円台で買ったのは非常にラッキ−だったのですが、そのラッキ−をさらに活かそうと思い、同じ1万9千円台に上がってきたソフトバンクに入れ替えてもらいました。趣旨としては、どちらも2万円は一つの壁で、常識では見送りが賢明だが、もし大きな上値があるなら断然ソフトバンクのはずなので、同じくらいの目先反落リスクを負担するなら、ソフトバンクのほうが投資魅力があるというものです。 あと、後場に入り、私の穏健注目のアマダマシニックスがなんと50円高の270円に急騰しましたので、このお客に半分を売却してもらい、大真空を買い増ししてもらいました。 どうせ買うなら、なぜ先週まとめて買わないかと思われるかもしれません。ですが、先週はどんなに理屈では強気でも、やはり恐かったのです。心情的に恐かったばかりでなく、これまでの経験を踏まえたうえでも冷静に恐かったのだと自己分析します。 多少、高くても今週の方がずっとよい買い場だと私は思います。 とまれ、相場が明るくなったお陰で、それやこれやで、なんとか商いを稼げそうですので、合同製鉄など塩漬け株が活躍する日を夢見て、地道を第一にやっていきたいと考えている次第です。
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第8回 防衛本能 <6/5> やっぱり1万6千円は底値水準だったようです。私など表向きは「1万6千円で弱気を言ってどうする」という立場を表明しておりましたが、内心は戦々恐々、お客に買いを勧めて「様子を見たほうがいいんじゃない」と言われると、それもそうですね、君子危うきに近寄らずですからね、などとすぐにシッポを巻いてしまったので、実のところ、たいして買っていなかったのです。
今思い出して、いちばん残念なのは、東京エレクの1万2800円を買い逃してしまったことです。私の古いお客で、今はいちばん大きくやってもらっている人がいったんはその指値を出したのですが、私がよけいなことをあれこれ言ったので、ちょっと様子を見ようということになり、注文を取り消してしまったのです。 そのときは随分離れていたのですが、終わってみたらなんと1万2800円がその日の安値で、同値ですから買えていたかどうかは分からないものの、買えていれば1000株あたり今のム−ドだと400万円の利食いが可能になりそうな情勢ですから、往復の手数料も含めて実に残念なのです。 ただし、それは結果論で、もし買えていればもっと安かったかもしれないし、ひょっとすると、日経平均1万4千円なんていう大暴落に遭遇していたかもしれません。 そのお客は女性なのですが、自分で仕事をしていて、実に勝負度胸のよい人です。これまでも、優良株系の銘柄が深刻に売られているとき、何度か思い切って信用で買い込んだことがあります。そのときに決まって出るセリフが「ゼロになってもいいの」です。しかし、私はそれでは困るのです。そのお客さんがゼロになったら、私の収入は大変な痛手を受け、新規開拓をゼロからやり直さないといけなくなるからです。したがって、そのお客が強気になると、私はどうしても無意識にも、慎重な意見を吐いてしまいます。 今回も、東京エレクの指値に直接反対せず、日経平均はもう底が見えてますよ、と口では強気を言いながら、まわりで追証に苦しんでいる人がどんなに多いか、信用残高や高値買いつきの円滑な整理がどれほど絶望的かを世間話のように並べ立て、ついに自主的な注文撤回にこぎつけたのでした。 そのお客はいちいちの結果で、私がよけいなことを言ったからもうけそこなったなどと文句を言う人ではありませんが、あんたと私は性格が違うねとよく言います。もしかすると、私が担当者じゃなければ、紀伊国屋文左衛門みたいな大もうけをしている人かもしれませんが、どこかでパンクしていたかもしれません。 細く長くという私の外務員としても打算(防衛本能)とは別に、顧客と営業マンが違ったスタンスを持つことは資産運用上のバランスから、長い目でよい結果につながることだと思います。 |
第7回 <6/1> 今日(水曜)、光通信がとうとう5100円の売り気配になりました。1000円になるという説もありますが、私は去年この株のカラ売りでやられたので、売り買いどちらにも参加する気はありません。 10日ほど前にこんなことがありました。お客様の一人から電話があり、光通信を他社から勧められたが、どう思うかという問い合わせです。そのときは確か、光通信が1万円ぎりぎりまで落ちて、朝方急反発した日で、1万1500円くらいしていたと思います。私はすぐに「わかりません」と答えました。すると、その人は「まただまされたら、いやだから断るね」と言って、電話を切りました。後で、確かめると確かに断ったそうです。 そのお客は実は2年前に、ある銀行から外債を勧められ、その系列の証券会社に口座を設けたのです。しばらくすると、担当者が訪ねて来て、なんとあらよという間に信用取引を始めることになってしまったのです。最初のうち、その担当者のことを引き合いに出して、私は随分責められました。彼は次々と銘柄を勧めてくる(私はいつも同じ銘柄ばかり)、彼は実に売買が速い(私は持たせたきり)等々、少しは見習ってみたらというわけです。 しかし、所詮は薄利商いの繰り返しなので、パンクするのもあっという間でした。その担当者は言葉たくみに私のところの株券まで補充するよう頼んだのですが、顧客はすんでのところで断り、売買を止めました。 それっきりその証券会社の話は顧客から聞かなくなったので、私はそれで終わったと思っていたのですが、ところがどっこいで、昨年担当者が変わりまた新しい営業マンが訪ねて来て、絶対安全確実な債券で少しずつ損を取り返しましょうということで取引が復活したということです。しかし、その債券とはEB債という実は大変なリスクを負担するもので、最初はちゃんと3ヶ月後に元本がもらえたものの、今年2月頃から値下がりしたNTTやソニ−の株券に化けて返還される代物でした。(正式名称、他社転換条項付き債券) その顧客が今度こそ話が違うと文句を言ったところ、必ず取り返しますから待ってくださいと言い、しばらくして言ってきたのが冒頭の光通信株です。 私はその新担当者はあるいは人のよい人間かもしれないと思います。EB債も絶対大丈夫だと自分自身で信じきっていたのかもしれませんし、その損を取り返したいという気持ちが強かったからこそ、焦って光通信株を勧めたに違いありません。 しかし、株はつくづく恐いと思います。焦れば焦るほど結果は悪くなることがつねで、焦った気持ちでのいちかばちかで成功した試しがありません。もしその顧客が11500円で光通信を買っていたら、その日終値はストップ安の8000円台、その後もストップ安が続き、半値の5800円まで最短距離で下落していたはずです。 追 記 合同製鉄がとうとう80円台もつけました。会社説明会でなにか悪い発表でもあったと誤解されている人もいるようですが、そんなことはありません。会社の今期見通しは3月末の市況を前提にしています。それ以降、日経の商品市況欄にもしばしば報じられている通り、鋼材市況は少なくとも4%以上改善し、なおかつさらに値上げが通りそうな状況です。原料のスクラップも今のところ3月末よりは値が落ち着き、慎重に見ても5%は利益率が好転しています。仮に現在の市況が来年まで続くとすれば、4月は収支トントンのペ−スだったとしても、11ヶ月で約27億円の利益改善要因になります。すなわち、経常収支27億円の黒字、特別退職金12億円の特損を差し引いても最終利益は15億円の黒字、1株利益約6円ということになります。したがって、もし私が調査マンなら、市況の強含みも加味して1株利益10円以上を予想するレポ−トを作るはずですが、残念ながら、当日は見回したところ骨のありそうなアナリストは見当たりませんでした。 大真空は決算発表後の月曜日はなんと売り気配で706円の寄り付き、その後もはかばかしい値動きではありませんが、日本電波工のすばらしい連結予想利益が示す通り、この業界に対しては当面は強気一貫で行くべきと愚考し、あまり悩んでいません。 |
第6回 <5/29> 先週末の木金、事情があって他の外務員の顧客の追証処理を代行しました。水曜の夜、その顧客の自宅を訪ねたのですが、顧客は会合で遅くなるということで、やはり株をやっている奥さんと一般的な話をしただけで帰り、深夜自宅から電話をして一時間くらい話をしてようやく処分について大筋の了解をえました。 実はその顧客にはすでに内容証明が届いており、木曜日には会社の裁量で処分することが可能なのですが、なるべく円満な処理になるよう最後の努力をしたわけです。私は2年前にそのお客とあったことがあるのですが、そのころは数百万円規模の投資家でした。おそらく去年から本格的に信用取引を始めて、値嵩株ブ−ムに乗って、3月の最盛期には1億5千万円の建て玉に膨らんでいたのです。そして4月の急落時にやはり内容証明により半分を処分したのですが、今回はもはやほとんど残らない状態までの処分が必至でした。 その顧客にとって痛かったのは、担保株で残っていたのがオラクルで、建て玉にCTCがあることでした。ともに株式分割を発表して急落し、しかも金曜にはオラクルが権利落ちしてしまうのです。もし建て玉の権利落ちならむしろ必要担保が減少し楽になるのですが、現物なので逆に当座の担保価値が大幅に減少してしまいます。 だから、顧客がどんなに希望しても、もう新たにつぎ込む資金がない限り、オラクルは全株を売却しなければいけないことは確実でした。 木曜日、幸いにしてナスダックが反発しており、東京も明るい動きが期待できる状況となりました。朝、顧客に電話を入れ、原則は寄り付きの処分ですが、顧客の希望も入れて、オラクルと建て玉について相当高めの指値売りを出しました。その結果、前場中にオラクルと信用のトランスコスモス他が売れて、CTCが売れずじまいでした。皮肉なことにトランスは前場終了後にものすごい増益決算を発表し、後場はストップ高買い気配となってしまいました。そして、前場軟調だったCTCも後場は2000円高をつけ、本来なら売れるはずのところ、ここでお客から泣きが入り、せめてCTCの売りを明日まで待ってくれとお願いされ、1日延ばすことになりました。 このような処分はつねに皮肉な結果になりがちですが、残したCTCはその日はなんと2500円安の結果になり、売ったトランスは翌日も続伸確実、権利落ちで身軽になるオラクルも翌日ストップ高は半ば予想されました。 せめてもの救いは、翌日CTCが前場ではストップ安まであったのですが、最後の勝負ということで後場まで粘り、前日比800円高で売れたことです。それからもう一つ、残った建て玉をそのままにしておくと金曜日に下げた分また維持率割れになるのですが、買値から半分以下に下がった建て玉なので現引きにより、大幅に担保率が改善できたことです。 いずれにしても、善良な顧客が1億円に近い金額をわずか2ヶ月でドブに捨てたような結果に終わりました。 追記 金曜日に発表された大真空の今期見通しは、連結1株利益27.7円と予想以上にも収益の改善を見込むものでした。日本電波、東京電波、キンセキと他の水晶機器専業に比べればはるかに低い水準ですが、次世代の携帯電話向けではさらにシェアを伸ばすことも考えられ、1株純資産の1030円以上に評価されてもおかしくないと思います。実は、先々週あまりにも上げピッチが早かったので、ほとんどを売却したのですが、その後大幅に調整し、週末終値は730円なので、週明けに買い戻しを顧客に勧めてみるつもりです。 鳴り物入りで顧客に勧めたオリコとキンセキは明らかに割安なのに、思いがけず鈍い上げ方ですが、きっとあまりにも好業績すぎるので疑うむきも多いのでしょう。もちろん発表された数字はあくまでも予想ですが、その通りぴったり行かないにしても、80%くらいの数字は達成可能性が高いと見て、やはり割安です。 もっとも、今の相場状況では、私の顧客さえもなかなか新規の投資に慎重になってしまう人が多く、なかなか注文をもらえないでいるのですから、すっきりとした上昇に結びつかないのも不思議ではありません。 先週末の発表で、無難なところでは、連結1株利益24円に回復し予想PER20倍のフジクラではないでしょうか。2倍になるような大幅高は期待薄で、かつ山善のようにはっきりと投資価値が確信できるほど割安ではないので、私の好みではないのですが。 |
第5回 <5/25> 日経平均は今日(水曜)とうとうザラ場で1万6千円を割りました。私のまわりは通夜のような雰囲気が漂う中、ハイテクに強気だった若い外務員は顔面蒼白で追証の計算をし、年寄り外務員でさえソニ−の下値はいったいいくらなんだと素人のような質問を相手をかまわずしています。 私は幸いにも信用建て玉の評価損は比較的軽微なので、「1万6千円で弱気を言ってどうするんですか」とお客に後輩に大声を張り上げています。 ところで、合同製鉄の今期見通しは、経常利益収支トントン(連結では3億円の黒字)最終12億円の赤字と私の予想を下回りました。決算発表を受けて株価は108円から103円に下落しましたが、終わりでは107円の4円高と再び買われたので、もしやという期待感も持ったのですが、今日はやっぱり売られて、いきなり10円安の97円で始まってしまいました。私の顧客には100円以上は決算を見てから買いましょうと相談していましたので、直接のダメ−ジはそれほどでもないのですが、期待に胸をふくらませていただけに、がっかりしています。 この欄でも大恥をかいた結果になってしまったので、弁解させていただきますが、私は今でも会社側の見通しは慎重に過ぎるのではないかと心底思っています。来週の月曜日に東京地区の決算説明会があるので、会社側の見通しの前提条件が判明するはずです。私は去年から日経の商品市況欄にはつねに注意していますが、たまたま決算発表の当日には、自由競争・価格破壊のチャンピオンである東京製鉄が鋼材価格の値上げに転じたことが報じられており、少なくとも合同製鉄の主力製品である異形棒鋼では採算がかなりよくなっているはずです。 もちろん私は鉄鋼業界のことには素人などで、合同製鉄の会社の見通しが間違っているなどと言うつもりはないのですが、価格(というより原料スクラップとの価格差)がちょっとしたはずみで5-10%平気で変わるのが電炉業界であるのは事実で、今回の会社の前提条件の設定には、今後値上げを浸透させたいという政治的な配慮も働いているのではないかとも思う次第です。 とはいえ、当面はこの銘柄に対するこだわりをしばらく忘れて、決算結果のはっきりとよかったオリコ(8585)とキンセキ(6949)に注力したいと考えます。(残念ながら、今の顧客マインドでは、いくら叫んでもいくらも注文が取れないのですが) あと、よく調べていませんが、山善(8051)も好決算でしたね。5円に増配で、連結1株利益18円で、165円なら、いくら商社で人気がないといっても、ゼロサムになりにくい銘柄として買えると思います。 |
第4回 <5/22> 豊田通商で地団駄踏んだ次の日、今度は美津濃でみごと会心の勝利をおさめました。水曜日の昼ごろ発表があり、1株利益20円台への回復予想です。ただし私が知ったのは1時間後くらいで、見たら株価は310円の30円高で、うーん遅かったかと思いました。しかし、その後株価は伸び悩み、なんと290円まで下がったのです。豊田通商のことがあるので、私はすぐに電話しました。そして、首尾よく295円で目的の株数を仕入れられたのです。当日の立ち合いはあと1時間もありませんでしたが、即転も狙い横目に見てましたところ310円に再び上昇して終わりました。翌日は記憶では311円から始まって322円まで上昇してきたところで、ややだれ気味になったのでドライに割り切り319円で利益を確定しました。実はさらに翌日には348円まであったのですが、目的が手数料稼ぎと顧客利益の両立という虫の良い話ですから、欲張るつもりはさらさらありませんでした。とかく虫の良い考えは大失敗に結びつきやすいというのが経験則ですから。 長い間には、お客様に大変申し訳のない大損害を与えたこともあります。2年前には店頭株だったテスコンにほれ込み、ただ同然の値段になるという大失敗がありました。ちょうど新聞で旧経営陣4人が粉飾決算で逮捕されたということが報道されていますが、私はほれ込むあまりに、この会社を訪ね、逮捕された中の1人に会い、さらにほれ込んで、自分まで株主になってしまったのです。もっとも、つぶれるまでには大幅利食いのチャンスがあり、冷静に対処しておけば苦しまずにすんだのですが・・・・。 株は楽しいけれど、恐ろしいものだと痛感します。その恐ろしいものを全国の証券マンのうちの大多数があまりにも安易に手数料と両立すると考え、結果的に無茶苦茶な取引を顧客に勧めていると私は思います。お客様の側の損害や日々の苦しみもさることながら、軽い気持ちでの手数料稼ぎが深みにはまり、損失補てんの約束をしたり自分のお金をつぎこんだりで、転落していった元証券マンは数知れないでしょう。 ところで、このホームページの「相場の本音論」で、株はゼロサムだと論じてありますが、その意見に私は反対ではありませんが、全然別の角度から、ゼロサムではないという信念を持っています。 たとえば、だれも買わなくても、持っているだけで値打ちがある株があります。配当が高く業績に不安がなければ持っているだけでよいはずです。あるいは今は配当が少なくても、将来ものすごい会社になると確信できれば、持っているだけで楽しいはずです。そのような銘柄であれば、安く買えるにこしたことはありませんが、仮に目先の株価が買値を下回っても、完全に負けたことにはなりせん。 いろいろな失敗の結果、私は投資の基本をそこに置くことに決めています。株そのものの価値を確信できる銘柄を運用の基本に置く限り、暴落の不安は半減します。たとえば、前記の美津濃は300円以下で買う限り、6円配当が堅いとみれば、それほどの不安はありません。250円位にもし急落したら、その時点でテスコンのように粉飾決算なのかどうかを検討すればよいだけです。 市場も、ネットバブルの崩壊により急速に、足元を確かめる傾向を強めています。つい最近までは夢がなければ株じゃないという風潮でしたが、いまは逆に1株利益がいくらか、PERがいくらかに異常なほどこだわり始めているようです。 前回の注目銘柄で、エイデン(8161)についてはお詫びしなければなりません。1株利益がなんと急減予想になってしまったのです。経常利益では増益予想なのになぜ最終利益が減るのかと思い、会社に電話で聞いてみたところ、退職金の積み立て不足を一括償却するためだそうです。合理的な発想をする外人投資家が健在なら、こんなことは気にしないのでしょうが、当面の風潮では人気化は難しいでしょう。(価値は確信できますので、安いところを売る気はありません) その代わり、オリコ(8585)の1株利益見込みは予想よりさらに高い80円でした。当日中に485円まで買われましたが、週明けは同業のライフの破綻が報じられたとはいえ、一段高は必至と思います。 注目していなかったところで、キンセキ(6949)の好決算は圧巻でした。注目に挙げていた大真空と同業ですが、1株利益単独77円、連結93円はものすごいものがあります。私は喜んで発表後のストップ高も買いました。翌日の金曜日は早速の反落で、1447円で終わりましたが、東京電波や日本電波との比較で超割安、大真空は800円台では買う気がしませんので、当面はこの銘柄に重点をシフトしたいと思います。 したがって、来週は日経平均が上がろうが下がろうが、オリコ、キンセキに重点を置き、月のアイカ工(4206)火の合同製鉄(5410)の買い増しチャンスを狙いたいと考えています。 |
第3回 <5/17> ちょっと間をおいて書こうと思っていましたが、今日(16日)は相場がよかったにもかかわらず地団駄踏んでしまったので、悔しさまぎれにまた書きます。 前に述べたとおり、目下は決算発表を意識しながら日々の商いを組み立てています。昨日の発表予定で先週からマ−クしていたのは、大同特殊鋼とアルプスでした。どちらも株価位置が低く、今期はまあまあの業績予想になるだろうと思われたからです。ただし急にはびっくりするような上値はないだろうから決算発表前によほど安ければという感じで狙っていました。しかし、大同特殊鋼は思いがけず昨日のザラ場中に発表が伝わり、あらよという間に急伸、小安かったのが終わってみたら24円高の217円でした。しかも、今日も買われ、高値ではなんと243円をつけたのです。昨日の午前中まで190円台でいくらでも買えたのですから、1日半で25%の利益(タラバ)を逃したことになります。 またアルプスは、昨日は35円安の1430円まであったので、買おう買おうと思いながらためらっているうちに1日が過ぎ、順調な決算発表が判明した今日も朝方は15円高の1485円くらいでしたから、また買おう買おうと思いつつ、しかしFOMCが・・・・などとぶつぶつ言っているうちに今日も終わってしまいました。 偶然ですが、大同特殊鋼とアルプスの株価はおよそ7倍差、発表された今期の連結1株利益の見込みも同じ7倍差くらいなので、PERは同じくらいで取引されていることになります。ちょっと前だったらこんなことはありえず、ハイテクのアルプスが急騰、内需低位の大同特殊鋼はしっかり程度だったのでしょうが、市場のム−ドが随分変わったものだと痛感する次第です。 ところで本当に悔しかったのは、豊田通商を買い逃してしまったことです。今日決算発表が伝わって株価を見たら上昇していたものの、だれ気味で344円に2万株の売り物がありました。とっさに360円以上で売れると判断し、即答で買ってくれるはずのお客のダイアルを回しかけたのですが、待てよと思い1分ほど考えてしまいました。それから電話して注文をもらったところ、15秒ほどの差で買い逃してしまいました。これはもし買えていれば即転か翌日の売りになったはずで、往復の手数料を逃した結果になっており、外務員としての生活上実に悔しいのです。 先日は、オリコと合同製鉄のみ例に挙げましたので、今後の私の注目決算発表を書いておきましょう。
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第2回 <5/15> 先週木曜日の下げで、また追証が多発しました。外務員仲間のほとんどが頭をかかえています。中には「この業界はいつまでたっても賽の河原の石積みだ」と無常観にひたりきっているそこそこのベテランもいます。 私は比較的元気です。別に自慢するわけではなく、昨年後半からの二極化の中で負け組側に立っていたので、いまさら下げる理由もエネルギ−もない干物のような銘柄を抱え込んでいるので、ここにきてはむしろ明るみさえ差しています。おそらく情報通信相場に乗れなかった投資家はみなそんな感じを持っているのではないでしょうか。 私は外務員歴は2年ですが、証券会社に途中入社してからは23年になります。自慢はその頃からずっと付き合ってくださっているお客様が相当数いらっしゃることです。 そのほとんどの顧客が「頭が固い」と私のことを言いますが、どうもその性分は死んでも直らないようです。自分では柔軟に日々の相場に対応しているつもりですが、気がつけば、いつも間にか顧客の建て玉も現物も、それはおろか自分の財産でさえも、いくつかのこれはと思う銘柄に凝り固まってしまっています。(外務員自身でも現物投資は許されています。ただし、成績にはなりませんが) だから、はずれると辛い日々になってしまいます。バブルの頃に優良株を勧めたり、97年から店頭株を勧めたりしたのは、今考えるとタイミングをちょっとずらせばよかっただけで、大枠はそんなに間違っていなかったのですが、結果は大失敗でした。 それにも懲りず、今回は「負け組」で去年から頑張っています。よくいえば、バリュ−株です。一例をあげれば、前回決算発表が注目とした合同製鉄(5410)です。 この銘柄は昨年初めの90円台から勧め始めて、6月には安い人で倍の195円をつけたのですが、のぼせ上がっていたので、買いこそしませんでしたが、みごとに売り逃してしまいました。秋にもう一度185円までの戻りがあったのですが、少しだけ売れただけであっという間に急落、4月の79円まで辛い日々が続きました。 先週99円まで戻り、ちょっと元気が出てきましたが、本音目標の300円台まではまだまだ辛い日々が続きそうです。 |
ある外務員の本音 第1回<5/11スタート> 歩合外務員というと、なんだかリスキーな感じがすると思いますが、実は私も2年前に証券会社の正社員から歩合セールス転じるまで、そんな印象を持っていました。しかし、時代のせいもあるのでしょうが、案外にノーマルで堅い人も多いようです。 もちろん、中には極端に少ない顧客と預かり資産で、どうやって稼ぐのかものすごい手数料を挙げる人もいますが、一般的には、社員セールスよりコツコツ地道タイプが多いとさえ言えます。(ごく平均的には、数億円から十億円位の預かりで、月に200万円くらいの手数料を顧客からもらっているのではないでしょうか) かくいう私も、堅物派を自認しています。したがって、表題を見て、証券界のぎとぎとした裏話でも書いてあるかと想像した人の期待を裏切ってしまうと恐れます。ですが、私は私の地で行くしかなく、これから書くことは正真正銘私の本音なのです。 さて、決算発表もいよいよたけなわですが、私はファンダメンタルズ重視のタイプなので非常に張り切っています。決算発表がどのくらい稼ぎ場になるかについて、一例を述べますと、たとえば昨年の日立情報(9741)です。 それまで万年的にとろとろした動きしかしない1400円台の不人気株でしたが、決算を発表した次の日はストップ高でしかも値つかずのまま終わりました。買えたのはさらに次の日の1780円(気配値から156円高)です。そのまま上がり続け、1ヵ月後には3390円、半年後には7280円になりました。(半年後の話はタラバです) ついでに言いますと、この株は今年もチャンスがありました。4月27日の決算発表の日は3690円でした。去年の例もあるので、私はお客に話だけはしてみたのです。しかし、ハイテクの地合いが不安定なので、決算発表を見てから買おうということになりました。しかし、案の定翌日は買い気配となり、250円高で寄り付いたのですが、下手な指値をしてしまい、買い逃してしまいました。当日は結局終わりは500円高のストップ高、しかもその翌日もストップ高、3日目の5月2日に4890円の高値をつけました。 今日(5/10)、日本電波工(6779)がハイテク株安の中で4330円の220円高と買われましたが、これは明日11日の決算発表を期待したものだと思われます。 劇的な好決算効果を狙える銘柄としては、やや先ですが、18日のオリコ(8585,443円)や23日の合同製鉄(5410、94円)を考えています。 |