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第120 深呼吸して待つ日々<11/13>

 このところ、決算説明会など株の売買以外のことで忙しく、しばらく休んでしまいました。
 もっとも、「よっし」と気合を入れて株価ボードを見つめても、出るのはため息ばかりで、どうにもならない展開ですね。
 手が出ません。だれもがもう少し待ってから買っても遅くないと思っているのですから、売りが出る分相場は下がります。見ている他ありません。

 アメリカが強いのにむしろびっくりします。先週NYダウがちょうどテロ事件前の水準に戻した途端の航空機墜落事件ですから、これをきっかけにドスンと下げたままだったら、9600ドルが重い上値の壁として意識されるところでした。NYダウが望みのある位置に踏み止まったのに加え、ハイテク株の基調も明るく、特に半導体株指数は6日の戻り高値更新まで、あとちょっとの水準です。
 アメリカの株を見ている限り、9月がやはり大底だったという感覚が日々強まります。悲しいことは、アメリカはアメリカで、日本は日本だというあきらめが日々市場の多数意見になりつつあることです。つまり、9月はアメリカ問題で下げ、それは終ったにしても、今度は日本独自の実態悪でいよいよ本格的に下げるのではないかという悲観です。
 実際、日々新聞の国内記事を見て、よかったなということがありません。企業業績は悪化の一途ですし、特殊法人の整理は進まず、生保や銀行の前途は暗く、年金も健保もまっ暗です。

 しかし、二番底を打つとしたらこんなときのはずです。日本はもうだめだと思う投資家がいるからこそ、9月の底が近づいてきても、まだ売る人が出て、2回目の「ど安値」がつくのです。
 日柄的にはもう少し先かと思っていますが、今日の日経平均1万円割れで、いよいよ正念場に突入ですね。問題は1万円ではなく、9500円を割るか割らぬかです。(日経平均よりTOPIXの98年安値980Pのほうを実際は注目しています。)
 私は割らないと思っています。日本株にとっても9月が大底だったと考えています。

住金が43円まで売られ、合同製鉄も80円を一時割りました。住金の43円は1963年の証券不況時の安値に顔合わせです。多分、相当に弱気が出尽くした値段と考えます。
 銀行も、どのみちすぐに答えが出る問題ではないので、みずほの30万円割れは、もうそろそろ反転してもおかしくないでしょう。
9月までの下げで、日本株は下げ尽くしたのか否か? その答えは間もなく出ます。今はその答えをじっと息をひそめて、ときどき深呼吸しながら待つというスタンスを取っています


第119 株価を信じる<11/7>

 今日の下げは、ちょっとびっくりです。米国の引け後、クァルコムが大幅安しているとはいえ、銀行はおろかハイテクまで激安になるとは想像できませんでした。
 みずほHは、一体いつになったら止まるのか? 3年前の旧富士銀の安値250円台に準じて20万円台もありえない話ではなくなって来ました。
 昨年から、株価の先見性をいやというほど見せつけられているので、銀行株がこれだけ下げれば、実体経済の上でも今よりさらに険悪な事態に陥るのではないかと素直に不安になります。
 しかし、再三書いていますように、この時期にすっきりとした上げ相場が訪れるのはむしろ不自然で、今は不安でも仕方がないと割り切るほかありません。

 2つの意味で、株価を信じたいと思います。1つは、株価の先見性で、もし9月が安値なら、来年春に実体経済も底を打つだろうということです。国内の市場ムードだけ見れば、ほんとに9月が安値なの? という弱気も起きますが、米国のハイテクの動きからは、IT不況の底が近づいてきた可能性大と考えるべきでしょう。今見える景色では、パソコンや携帯が売れ出すには大変だろうと感じられるものの、自分のなまじっかの感想を信じるより、まず株価という事実を信じたいと思います。
 
 もう1つは、まったく逆のことのようですが、株価はつねに短期的には間違うものだということです。大きな視野や市場全体では先見性を発揮する株価も、細かく見れば、行き過ぎたり、反応が遅かったり、チョンボばっかりしているようです。ただし、チョンボは必ず訂正される、価値のある株は必ず買われる、すなわち、株価が最終的には正しい結論を出すだろうということ、そういう意味ではいちいちの株価の動きに惑わされることなく、あくまで大局的な株価を信じたいものです。

 ところで、昨日書いた「週刊ダイヤモンド」の担当者に、計算式に使っている用語の初歩的なミスを電話で指摘したところ、「定義は自由だ」とつっぱられてしまいました。
 同誌は「Zスコアとは」という説明で、「第3項は、総資産事業利益(税引前営業利益)率である」と明記しています。さらには、計算式で「(税引前営業利益÷総資産)×3.3」と表示し、その説明として「税引前営業利益は税引前純利益に支払利息割引料と社債・CP利息を加えたもの」とあります。
 このうち「税引前営業利益」という用語は、いささか珍妙な用語ではないかと思われますが、問題は、それが事業利益とほぼ同一のものであり、かつ純利益に金融費用を足したものであると定義されている点です。
 普通の用語なら、同誌が計算に使っている合同製鉄の前期決算は、事業利益も営業利益も黒字であり、それらを使う限り得点はプラスになります。ところが、実際の計算では、30年以上前の米国で考案された式を使うために、前期大幅な特別損失を計上した会社の得点は大幅なマイナスになります。
 計算式は何を使おうと自由です。ただ、あまり実際的ではない計算式を使えば、その雑誌の品格が疑われるだけです。
 ところが、同誌は、計算式とは明らかに違う意味を持つ会計用語を使用し、「定義は自由だ」と強弁しています。さらには、今後「米国型の会計基準に近づくこと」から「Zスコアで自社の経営を診断することの有用性はますます高まっていく」と堂々と書いてあります。
 財務会計や企業評価の基準が1960年代に後戻りすると考えるのは、あまりにも日米の現代ビジネスのダイナミズムを馬鹿にした話ではないでしょうか。


第118 様々な想定<11/6>

 米国は思いがけなく強い展開ですが、日本は今日も相変わらずの始まりですね。
 相変わらずの最たるものが、銀行株の下げで、みずほが今日も最安値更新です。新規公開株など小型株の一部に猛烈高があるものの、第一部のハイテクには勢いがなく、中低位株は完全に見送りです。
 上場会社の倒産が続出するのではないかという不気味なムードが漂っています。私の勧めている合同製鉄もジリジリと下げており、「本当に大丈夫か?」と聞かれますが、もとより「絶対、大丈夫」などと保証する筋合いのものでありませんので、顧客の不安を完全に打ち消すには至りません。

 だけど、思うのです。相場が本格上昇に転じるにしても、いきなりに9月までの下げが嘘みたいに上昇したら、それは9月までの相場をあまりにも馬鹿にしたことになります。下げるには、下げるなりの理由がありました。いま現在の景況を目の当りにすると、私は愚かにも今になって半年前に弱気だった人の先見性に感心してしまうのです。
 このところ、米国にやや明るい兆候が出てきたとはいえ、1年以上にわたった下げ相場を反転させるに足りる新材料はまだ我々の眼には見えません。買い方の拠り所は、9月がセリング・クライマックスになったのではないかという感覚だけといっても過言ではありません。とすれば、今の日本株のもたつきは自然な現象であり、ぜひとも通過すべきプロセスと考えられます。

 当面の相場について、いろいろな場合を考えてみました。
 @ 最悪・・・・米国急落、日本も急落、9月安値大幅更新
 A 中悪・・・・米国反落、日本は続落、日経平均9500円にからむ保ち合い長期化
 B 中善・・・・米国強含み保ち合い、日本保ち合い、日経平均は二番底形成後上昇
 C 最善・・・・米国急騰、日本も近日戻り高値更新、上昇相場へ
    (米国安、日本高のケースは当面確率が少ないと考え省略)

 このうち、AかBかがもっともありそうと考えているのは私ばかりではないでしょう。特に、Bは98年10月からの状況とほぼ同じで、私はこれを基本想定にしています。
 昨夜、米国の半導体株指数が500を超えたことから、@の可能性は相当に薄らいだと考えます。むしろ、今年の4月には半導体株指数の500超から米国株の急反発が鮮明化したので、Cの可能性が少し出てきたのではないかと考えます。
 Bを基本に、AかCかというところで、今の私は傍観者になり果てています。
 本当は、@がないとすれば、第2のユニクロを目指して、小型で魅力のある株の発掘に情熱を燃やすべき局面なのでしょうが、やはり第一部市場の動きが気になって、気持がどうしてもディフェンシブになってしまいます。

 ところで、合同製鉄は、1株株主資本約300円、資産に対する比率(自己資本比率)31%の内容から、本来は不安がないはずですが、1ヶ月以上前の雑誌(「選択」)で、銀行が「要注意債権」にすべき会社のリストに載ってから、顧客の問い合わせが相次いでいます。
 確か富士銀はすでに要注意債権としていたはずで、全業種にわたり帳簿上の純資産が信じられなくなっている現状では、赤字かつ無配の長期化等の形式基準により、画一的に合同製鉄が「要注意債権」に分類されてもやむをえないと考えます。
 ただし、形式的な分類を当てはめる限り、マイカルのような会社が最後の最後まで「要注意」にはならないというミスマッチがつきまとい、要するに今の日本の現状では、形式的な分類ではその会社が本当に危ないのかという判定ができないということが確かに言えるはずです。
 (日本企業の財務諸表の信頼性が一日も早く回復することを祈っています)

 合同製鉄は11月20日に決算を発表します。株式の評価損で最終利益段階での損益は微妙ですが、本業は順調のはずです。バランスシートも株式関係を除いてはほぼ信頼できると考えます。
 日経平均が小高い昨日今日、メインバンクのみずほの下げに連動するようにじり安になっていますが、根本的な売り要因があるとは私には思えません。売る人が多ければ70円台も考えられるものの、多分82〜3円で止まるだろうと楽観しています。

 いろいろ書きましたが、メリハリのあるようなことは書けませんし、今はまさしくそのような心境の毎日です。せめてリアルビジョン(6786)が権利落ち後の高値57万円を抜いて一段高を果たせば、少しは元気になるかもしれません。

追記
 「週刊ダイアモンド」今週号に倒産危険度ランキングが掲載され、合同製鉄がなんと16位にランクされています。
 もともと低評価がやむをえない側面があるものの、これは形式基準もなにも、あまりにも雑な評価をした結果と私は思います。
 前期比で危険度が大幅に上昇していますが、この主な要因は同誌集計基準のBの項目の大きなマイナスによります。その算出にあたり、前期の税引前利益を使用しているのはおそらく本来アルトマンの提唱する算出方法(事業利益)とは違うはずで、初歩的な誤りがあると考えます。
 合同製鉄が今後も前期のような大幅な特別損を計上し続けると考えるなら、倒産寸前と評価されるのは当然です。
 この点を同誌の担当者に確かめてからと思いましたが、今日は連絡がつかないので、とりあえず私の考えのみを述べておきます。


第117 資産運用<11/1>

 昨日から今日にかけて、顧客の運用成績を集計するのにてんやわんやでした。
 現物だけの人は簡単です。信用の場合は、評価損の3%超を差し引いて実質評価額を計算しますので、今のようなときは見かけより随分減ります。
 あいにくと、月末にかけての日経平均の4日続落で戻りがだいぶ剥げ落ちましたが、それでも9月末に比べると、ほとんどの人が回復しており、ひとまず安心しています。

 ある顧客の場合、3ヵ月おきに成績を計算しているのですが、9月より回復しているものの、3ヵ月前の7月末と比べるとなんと58%の減少で、過去最悪の成績となりました。信用をやっているせいとはいえ、日経平均が12%しか下がっていないのに、なんとも申し訳ない結果になっています。3月にアドバンテストを12,400円台で信用買いし、4月の15,750円を見ても売らなかったら、9月に期日が来たときはただの5300円台でした。この銘柄に限らず、ハイテクの上値と下値を大きく見誤ったのが失敗の原因でした。

 この顧客の場合、過去も資産が大きく増減しています。一時、評価額の増減を折れ線グラフにつけ始めたことがありますが、すぐにグラフ用紙をはみ出したので止めてしまいました。「ゼロになってもいい。だから、大きく狙う」がこの顧客が私に預けている資産についての運用理念である以上、ある程度の変動は止むをえないのですが、今回は私も顧客も今までになくへこたれています。前3ヵ月に続く大敗で、評価額がかつてないレベルまで減少してしまったからです。

 ただし、挽回を焦ることだけは止めようと、顧客と申し合わせています。前回の急落時98年の場合は、98年11月から3ヵ月の成績は+12%の小幅回復に止まりましたが、次の3ヵ月では+60%の好成績で、平均株価の回復をはるかに上回りました。

 今回も、今のところ、どう見ても二番底形成に進んでいます。これを書き出したころは、日経平均はプラスだったのに、今はマイナスに転じてしまいました。5日続落になるとすれば、よほど深刻な状況ですが、今さらジタバタする気はありません。9月が大底、今月から来月のどこかで二番底という想定のもとに、静観を基本とし、資産的に余裕のある顧客にはこれはという銘柄をお勧めしていくのみです。


第116 悲観と楽観の踊り場<10/29>

 今回の表題は、顧客向けレポートと一緒のものです。現在の相場状況を、「もみ合い」とか「綱引き」とかとも表現できますが、「踊り場」という言葉のほうが方向感があるので気に入っています。
 もっとも、方向感といっても、階段を昇る途中の踊り場であるか、降りていく途中と考えるかでは大違いです。最近は上向きと考える人が増加しているとはいえ、本当に下向きではないの?とあらためて問われると、自信をもって「上だ」と答えられる人はまだ少ないでしょう。
 今日は日経平均は40円安くらいですが、銀行、証券に加え、ハイテクの一部が大幅安になっており、気分はきわめてブルーです。そうなると、本当に相場は底を打ったのかと、またぞろ不安感を強めている人も多いはずです。

 今のところ、9月からの相場状況は、98年10月からの大底形成時に非常によく似ているようです。98年の場合は、10月底打ち、11月上昇、12月反落、1月2番底、3月本格上昇と進みましたが、そのせんでいけば、今回は11月反落となりますので、ここにきて市場参加者の意気が上がらず、上値が重くなっているのはやむをえないこととだと思います。

 私も常識的に反落を警戒しています。実は先週、古河電工の720円台や日興の710円台に注目し、両銘柄とも10%強上昇しただけで今日はちょうどその値段に押し戻されていますが、今回のその値段は様子を見ざるをえません。
 98年の場合は、2番底で平均株価がほとんど最安値ぎりぎりまで落ちました。今回は多分、平均株価が9月安値にニアミスすることはないと考えていますが、上の方にも吹っ切れた動きをする確率が小さいと考えられる以上、平均株価と主力株の動きが気重くなるのはやむをえないと考えるべきでしょう。

 当面は平均株価では調整気分が漂うと思いますが、株の買い場かどうかとは別の話です。前回も述べましたように、9月が大底だとすれば、中小型株の中には今後もジリ高を続ける銘柄が多いはずですし、その中には前回の相場で大化けしたファーストリテイリングやネット関連株のような夢のある銘柄もあるはずです。
 だから、長期狙いなら、現在は毎日が買い場とさえ考えています。このタイプでは、例えばリアルビジョン(マザーズ6786)47万円に注目しています。
 また、短期的に見ても、現在の調整気分が前向きの傾向を持った「踊り場」なら、戻り一巡の主力株より、出遅れ感と本質的な割安感の強いマイナー銘柄に分があるはずであり、それらの銘柄の短期張りも有効と考えています。
 このタイプでは、やや上がりましたがニチメン(8004)139円、同じくコーナン商事(7516)1400円、超マイナーですが前回述べたエフアンドエム、中小型ではありませんが下値不安の少ないTOTO(5332)615円などに目先注目しています。


第115回 戦略を考える<10/25>

 今朝のTV(モーニングサテライト)で、米国株の底入れは来年の第2四半期だろうという意見がなされておりました。私はあの日本語の上手な外人に親しみは感じても言うことはいつもたいしたことがないと思っているのですが、相場の底入れがまだ先とする考え方にはそれはそれで一理ありと感じました。
 相場が本当に底を打ったかどうかは、神様でなければ分かりません。我々は分からないなりにいずれかの判断を選び、あるいは保留し、日々の行動を決めていく必要があります。
 私自身は、少なくとも日本株については、相場はもうすでに大底を打ったと考えています。

 現在、相場の大勢観を大きく分ければ次の3種類でしょう。
 @ まだ底を打っておらず、そのうち再急落する。
 A 底を打ったが、そのうち上昇一服し、2番底を取りに行く。
 B 底打ち上昇の傾向がますます続き、反落があるとしても軽微。

 私は現在きわめて常識的なAを基本想定にしています。すなわち、おっかなびっくりながら、
 買いの時期と考えており、それに対して@のシナリオによるリスクがもちろんある他、Bのリスク(買いが不十分なことによる「置いて行かれる」リスク)もあると考えます。
 ただし、もっと本音を言うと、Bの気分です。というのも、個別銘柄の現在の水準は非常に魅力的なものが多く、かつ仮に平均株価が往って来いの2番底型になっても、本当に魅力的な銘柄ならほとんど反落せずに上がり続ける例があるからです。(98年でいえばファーストリテイリングなど、小型成長株は特にそうです)

 次に、どういう角度から銘柄を選択するかが問題となります。これも根本的に大別すれば、次の3つのどれを選ぶか、です。
 @ 不安感の少ない株(ディフェンシブ・ストック)
 A 不安感のあるバリュー株
 B 不安感のある収益期待株(成長株および回復期待株)

 人それぞれに考え方がありましょうが、私はせっかく今のような大暴落直後の相場に参加するのあれば、不安感によって大幅安した銘柄に投資したいと思います。したがって、@に属する鉄道、薬品、食品などは基本的に考慮外としています。

 不安感のあるバリュー株という表現は、本来は矛盾です。しかし、バブル崩壊による不良資産の激増と経済の長期的な低迷の中で、表面的な数字ではバリューが信じにくい状況となり、かなり多くの銘柄がその実態とかかわりなく、単なる不安感によって売られています。その不安感に合理性が薄く、リスクが過大に織り込まれていることを確信できれば、その銘柄はよい投資対象になるはずです。合同製鉄やニチメンなどは、その角度から注目しています。

 一方、不安感のある収益期待株については、その不安感が合理的なものかどうか分析することは簡単なことではありません。将来のことが主に問われているので、評価の幅は当然大きくなります。例えば東京エレクやアドバンテストの今後の収益がどうなるかを予想することは、ほとんど雲をつかむようなものです。だから、不安感は当然のものとして認めざるをえず、そのリスクに対して、リターンの魅力をどの位に見積もるかが判断の分れ目になります。

 私はそのような形で、AとBの中から銘柄を選別していきたいと考えています。つまるところ、市場に漂う不安感をなるべく客観的に分析しながら、自分が許容できると思う「不安」な銘柄を探していきたいと考えています。
 1つだけ、最近の注目例を挙げます。ナスダックJの非常に出来高薄の銘柄ですが、エフアンドエム(4771)は昨日まで72万円と安値に張り付いていました。この会社は生命保険の営業員相手のニッチでユニークな企業なので、当面は景況とかかわりなく安定成長が続くはずです。それなのに、9月に急落し10月にも下げ続け、株価だけ見ると非常に不安な動きです。理屈からは不安の余地は少ないと判断されるものの、バリュー系ではなく成長期待系なので不安感を消し去ることは困難です。漠然とした不安感と戦いながらちょっとだけお客様に勧めたところ、終値で75万円に上がりました。きっと80万円台に上がれば、もっと買いやすくなるのではないかと考えています。中間決算の発表は11月16日で、好収益が確認されれば不安感が解消され、人気も戻ると考えます。それまでは不安感との戦いです。


第114回 人より儲けるためには? 結論<10/23>

 合同製鉄が100円台を回復しました。相場は徐々に平常時の相場に戻りつつあるようです。だとすれば、本当は議論なんかしているときではなく、具体的な戦術を練るときなのかもしれませんが、私も多くの人と同様、直近の下落体験を引きずり、思い切りのいい陽気な行動はとれなくなっています。
 いま、多くの投資家が慎重です。慎重なこと自体はよいことですが、アツモノに懲りてナマスを吹くような形で、本来の自分に必要な分(リスク負担)より余分に慎重になっているとすれば、それは自分自身に適した投資を行っていく上でよい結果につながらないはずです。
 ということで、投資姿勢についての議論を続けさせていただきます。

 株はギャンブルではないと思います。しかし、勝負ごとであることは確かです。結果を完全に予測することが不可能な中で出処進退をたえず問われます。
 戦争と同じで、勝てばリターンをえられます。その代わり、もし負ければ、リスクが現実のものとなります。冷静にその得失を天秤にかけ、ベターを求める投資姿勢を貫けば、長い目では必ず成果に結びつくはずです。
 名将の条件が、戦術の巧拙より戦略(出処進退)の如何にあると言われるように、株式投資の本質的な巧拙は、進むべきか退くべきかの判断力で分かれると考える理由です。

 株を保有するリスクは、次の3つに分かれます。
 @ 全損のリスク(倒産リスク)
 A 長期的な株価低迷リスク(経済全体もしくは個別企業の長期没落)
 B 短期的な株価急落リスク(市場要因もしくは企業の短期的な悪材料)
 C 売りたいときに換金できないリスク(流動性リスク)

 このうち、不急不要の資金であれば、Cのリスクは無視することができます。さらに長期投資を前提にすれば、Bの短期的な株価下落リスクを無視することもできます。
 すなわち、信用取引などをしていない一般的な投資家にとっては、株式投資に伴う本質的なリスクは、@とAに限定することも可能なはずです。
 ところが、現実には今回のように株価が大幅に急落した場合、@とAに加え、BとCのリスクが過大視される傾向にあります。
 ある投資家がいるとします。その人は経済の先行きに対してそれほど悲観的な見方をしていないと仮定した場合、@とAの本質的なリスクについては人よりも自分は確率が小さいと思うという目安を持つはずです。ところが、おうおうにして眼前の株価急落が心理に影響し、買った瞬間にさらに急落するのではないか、売ろうとしてもまっさかさまに落ちていって売れないのではないか(損して売る気はないにもかかわらず)という強迫観念に襲われがちです。すると、最初に戻り、いったんは自分で目安をつけたはずの@とAのリスクも含めて、買うリスクが漠然と非常に大きなものに思え始め、つまるところ、買いたいけど買うのは怖い、買うのは怖いけど買いたい・・・・という理屈と感情がごちゃごちゃになった堂々巡りに陥ってしまいます。

 以上の心理構造は私自身の体験によるものですが、多くの投資家の場合も多かれ少なかれそうだと思います。株価急落時に恐怖感が強まり、株価上昇時に楽天的な気分が強まるのは人間が感情的な動物である限りやむをえません。株式投資では、その他もろもろの感情が本来の自分の判断に混入してきて、判断力を鈍らせます。

 投資判断の最終段階において、決断の巧拙を決めるのは、いかに自分の感情を他人のもののように眺め、いかに自分なりのリスクとリターンの目安を冷静に天秤にかけ、いかにその判断(自分自身の本来的な投資方針に基づく結論)に忠実な行動をとれるかだと思います。

 そのほんの1例を述べれば、「順張り」の問題です。
上がってくると強気行動をするタイプに2通りあります。1つは「順張り」を最初から決めて行動している人であり、もう1つは感情的にたまらなくなって買ってしまう人です。両者の行動は似ていても、本質はまったく違います。
「順張り」という方法の是非はさておき、それ以前の問題として、状況に感情を支配されて自分のリスク感を変動させてしまう限り、少なくとも長い目ではよい結果に結びつかず、逆に自分自身のリスク感覚を安定的に管理できる人は、少なくとも長い目では人よりもよい結果を出せるはずだというのが私の結論です。


第113回 人より儲けるための試論<10/22>

 前回の私の文章に対して、厳しいご意見がありました。
 <去年からのこの簡単な下げ相場で、顧客に損をさせてしまうような人が、なぜ「これから自分を磨く」などといえるのでしょうか?>というものです。つきつめれば、相場が下手である以上、真面目めかした「奇麗事」は止めたほうがよいというご指摘だったと思います。
 その一方、同感するところがあるので、もう少し議論を煮詰めるべきではないかというご意見もありました。
 今回は、「奇麗事」かどうかの議論はひとまずおき、株で本質的に人より儲けるためにはどうしたらよいかという目下の関心事について、前回と角度を変えて再論させていただきます。

 まず、あまり業界に詳しくないお客様の中には、「業界人は証券のプロなのだから、当然一般人より儲けるのが上手いだろう」と考える人も結構いらっしゃいますが、これは違います。
 営業マンはもちろんのこと、運用のプロであるはずのファンドマネージャーやディ−ラーでさえ、長年やっているから株の運用が上手い人ばかりとは限りません。
 プロはプロなりになんらかの専門知識を持っているはず(実はそれさえ疑問)ですが、だからといって株が上手いかどうかは疑問です。碁や将棋のように、プロとアマの能力差が歴然としている世界ではないと思います。

 その一方で、証券のプロを自認する人の中には、実際に面白いように儲かり続け、自分は株が上手いと考える人も結構存在します。私も一時期はそうでした。しかし、当たり続けるのは所詮限界があります。必ずはずれる時期があり、多くの人は最初の小さな失敗をきっかけに、だんだんただの人になっていきます。その例をたくさん見てきました。

 その挙句、株の上がり下がりは時の運で決まり、所詮はバクチなのだという意見も、この業界には根強く存在します。私はこの意見に対して一面賛成であり、一面不賛成です。
 株の上がり下がりや運用成績は偶然性で左右されるものの、だから、あれこれ考えても仕方がないという意味なら私は反対です。というより、もし我々がさいころバクチのお先棒をかつぐことしかできないとすれば、私はこの業界に絶望するしかありません。

 株式投資を上手くやるために、大きく分けて2つの方法論があります。
 1つは、ファンダメンタル分析です。根本的には、株式そのものの価値を計量することから出発する方法といってよいでしょう。銘柄分析といってもよいかもしれません。
 もう1つは、テクニカル分析です。こちらは根本的には、過去の株価の軌跡を投資家心理の揺れ動きの帰結と考え、そこに法則性を見出し、現在から未来にかけての株価波動(少なくともその傾向性)を予測しようという方法といってよいと思います。

 しかし、私が問題にしたいのは、今回のように、ただでさえ世界同時不況の色彩が強まりつつある中で前代未聞のテロ事件が発生した非常時に、それらの方法論がほとんど役に立たなかったという事実です。(実はふだんでさえあまり役に立たないのではないかという疑念もある)
 それらの方法論は単なる判断の手助けとして、あくまで常識的な目安を与えてくれるにすぎず、大底かそれとも地獄への入り口かという極限状況において、自分の財産を賭けて決断するためには根本的に何かが足りませんでした。

 事件発生翌日の9月12日に、株を売った人もいれば、買った人もいます。結果だけ見て、売った人が愚かで、買った人が賢明な投資家だとは私はまったく考えません。
 一時の感情に支配されてではなく、自分自身の冷静な選択として売りを選んだのだとすれば、それはそれで立派な投資行動だろうと思います。売りと買いのいずれを選ぶにしても、あの瞬間に必要だったのは、ファンダメンタル分析やテクニカル分析の次元ではなく、もっと高度の哲学的ともいうべき次元での判断であり決断だったと思います。

 売りと買い、それに静観を含め、非常時に毅然として自分の行動を選べるような判断力・決断力は、平常時にも当然有益な結果をもたらすはずです。感情に支配されやすい人よりも、感情をコントロールできる人のほうが長い目で成績がよくなることは前回述べた通りです。

 では、実際の心理メカニズムとして、どのような形で判断力と決断の優劣の分れ目が生じるのでしょうか? 長くなりましたので、次回(明日予定)に述べさせていただきます。


第112回 超過収益は可能か?<10/18>

 ハイテクの一段高で市場にようやく活気が感じられ始めた矢先、あいにくの米国株安ですが、底打ち期の相場に紆余曲折があるのは当然なので、それほど気にしていません。
 それに、東京市場が始まってみれば、まずまずの粘りが感じられます。ひところは、ハイテクが安いとなれば、関連した銘柄が枕を並べて安く、よほど安値でなければ買い物が入らない状況でしたが、今日は米国で急落した半導体の一角にさえプラスの銘柄があります。
 「人は人、平均株価の多少の上下にかかわりなく、この銘柄は今日買いたい」という形で、本来的な投資意欲がよみがえって来た結果だと私は思います。

 私もぼつぼつと強気に転じています。昨日は古河電工を勧めました。続騰の半導体関連はタイミング的に様子を見ざるをえなかったからです。古河電工は、WDMで急失速ですが、仮にハイテク成長分野の不調が長期化しても、ルーセントからの買収で強化された光ファイバー部門(ハイテク関連とはいえ実質的には在来型というべき分野)などで安定的な評価が可能です。だから、本質的な魅力はともかくとして、安心度の高いハイテク系銘柄として狙っています。

 ところで、最近こそ少し当たっていますが、今回の暴落では、私を信頼してくれている顧客に多大な損失をこうむらしてしまい、無力感をつくづくに感じています。我々歩合外務員の存在意義があるとすれば、顧客により多くもうけてもらうことです。あるいは、暴落のときに損失を少なくすることです。しかし、自分の力で本当にそうできるのか? 所詮、相場の上げ下げに流されているだけではないのか? 今さらながら、そんなことを考えてしまうのです。

 このことを専門的にいうと、「超過収益の獲得は可能か?」という命題になります。つまり、市場平均より高い収益率を偶然にではなく当然のものとして獲得していくことが可能か、ということです。
 プロならそんなこと当たり前じゃないかと思う人も多いかもしれませんが、我々現場の立場からいうと、自分自身の不成績もさることながら、鳴り物入りで宣伝された某大手証券の巨大ファンドの不成績などを見ていると、そんなに簡単なことではないとつくづく思います。
 所詮相場の上がり下がりなど分かるわけがないと割り切り、お太鼓持ちのような純粋営業に専念する証券マンや、なまじっか銘柄を選ぶより指数連動型投信が一番いいと考える証券マンが相当数増加しているほどです。

 パチンコや麻雀と違い、株はゼロサムゲームではありません。株の保有自体が収益をもたらし、理論的には全員でハッピーになることが可能だからです。ただし、投資家を大きく分ければ、もうけやすいタイプと損しやすいタイプがあると私は思います。
 感情に支配される人は普段はそこそこ当たっても、ここぞというときの判断がちぐはぐになることが非常に多く、その結果、感情を冷静にコントロールできる人の当たる確率が高まる傾向があるようです。
 より厳密にいえば、リスクとリターンの天秤を感情的にぐらぐらさせてしまう人の失敗確率はいやになるほど高く、その分の利益がゼロサム的に他の投資家に流れていると思うのです。

 だから、株式投資に上手下手(超過収益)があることは確かです。そのことに疑問の余地はありません。ただし、リスクを選択し決断するのは顧客であり、私はそのお手伝いをするわけですが、問題は、では私は顧客に対して客観情報の他に、どのような有益な情報を付け加え、有効なアドバイスを行うことが可能かということです。

 アナリストの業績予測は、今回のような変動期にはほとんど役に立ちませんでした。ましてや相場の予想など、少なくとも私自身では予想することがなんの役にも立ちませんでした。当たることもあれば、はずれることもあるというのでは、予想しないほうがましというべきです。

 結局、今回いちばん役に立ったのは、リスクとリターンのかね合いの分析ではないかと考えています。顧客の中には、私なんか比べものにならないほど、そのかね合いについての感覚がすぐれていると感じる人がいますが、その場合でも、分析の材料を提供するという点で、私の存在意義を発揮していくことが可能のはずです。

 過去の暴落より格段に厳しい今回の顧客の損害状況を眼のあたりにして、営業マンの進むべき道は3つしかありません。
 失敗を忘れて積極営業を続けるか、なるべくどっちつかずの消極営業に徹するか、それとも失敗を教訓にして新たなる境地を開くかの3つの道です。
 私はぜひ第3の道を選びたいと思います。目下のところ、銘柄の選別や投資タイミングの判断など、超過収益の獲得のための技術やノウハウの向上では確たる目途がありませんが、リスクのとらえ方、すなわち相場哲学や勝負根性とでもいうべき精神的なものが意外に大切であり、今後も自分自身を磨いていくことが可能ではないかと考えています。


第111回 千載一遇の買い場はいつか?<10/16>

 大局的に見れば、日本の株価が大底をつけた可能性は日に日に高まっています。
 それにもかかわらず、昨日に続きどんよりとした市場ムードが広がり、活気をもって売買されている銘柄はほとんどありません。
 前回書いたように、これは仕方がない現象です。世界不況という爆弾が炸裂しました。我々の眼前にあるのは目を被うばかりの企業業績の悪化です。強気派から見れば、むしろこういうときこそ、株の買いチャンスなのですが、それでも急騰後の今週は二の足を踏みたくなるのは当然でしょう。なぜなら、大底からの反騰(不景気の株高=理想買い)の初期は、一本調子の上げが考えにくく、おうおうにして揺り戻しがつきものだからです。

 例えば98年10月の場合は、いったん上昇しかかったものの、11月には反落に転じ、年末年始には安値更新ぎりぎりにまで売られました。本当にすっきりした上昇相場を実感できたのは5ヵ月後の3月初めからです。(3〜4月は目の覚めるような全面高)
 今回の場合、米国主導の崩壊であり、再出発なので、日本流の相場日柄を当てはめるのは危険ですが、それでも、特別の好材料がないままの自律反発である以上、紆余曲折は当然覚悟しなければなりません。
 本当に安心できる買い時期は、まだまだ先と考えられます。いま、多くの投資家が、仮に株を買うにしても、もう少し地合いがよくなってからにしたほうがよいと無意識のうちにも考えているはずです。相場スタンスに「買う」と「売る」と「休む」があるとすれば、今は「休む」べきところと考えているわけです。

 では、千載一遇の買い場についての私自身の考えはどうか?
 逃げるわけではありませんが、それは人それぞれ個々の判断によると思います。

 相場局面に、上昇、下落、保ち合いの3局面があります。それぞれの局面に応じて「買う」「売る」「休む」をうまく振り分ければ、面白いようにもうかるはずですが、それができれば神様です。 どう見ても上がりそうだったり、どう見ても下がりそうなときがありますが、それが極まれば転機を迎えるわけですから、所詮絶対ではありません。
 現在は、普通には「どうも上下とも動きにくそう」と感じられるわけですが、だから、本当に大幅続騰や急落がないかどうかは分かりません。

 ・・・・・・・・。これを書いているうちに、売られていたハイテクがプラスになり、つれて日経平均も反発に転じました。たった1時間前には、これ以上ないくらいどんよりしていたところ、思いがけなく青空がのぞき、もしや!ということだってないわけではないという気がしてくる、これがまさに相場ですね。

 日銀がゼロ金利を始めた99年3月のように、絶対に買い安心と思え、そして事実面白いように成果が上がる幸福な時期もないわけではないものの、所詮短い間です。それに、その時期に売った人もいるのですから、だれにとっても千載一遇の買いチャンスと感じられるときはなく、結局は人それぞれの総合判断によるものです。

 私はもちろん今日が、というより今日だけがぜひ買うべき日とは思いません。明日上がるか下がるか、正直なところ分からないのです。しかし、ロングタームでみれば、今日も含めた一定期間が願ってもない買いチャンスだったことになる確率は相当に高いと考えています。
 私がそう言うと、それは当たり前のことだと言わんばかりに、相当多くの人が同意してくれるのですが、それでいて実際には、まだまだとても株は買えないという観念(もしくは単なる感情)に支配されている人が非常に多いように感じます。
 まだまだ底が見えない相場なのか、それとも底はすでに見えたと思うか、感情に左右されない自分自身の判断を持ち、右往左往をなるべくせずに日々の相場に対処したいものです。

 結論:買い場の判断は人それぞれですが、私は来年にかけて、バブル崩壊後2度目ともいうべき買い場がずーっと広がっていると考えています。

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