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第140回 待つのみ(2)<2/4>

 今日の日経で、東証出来高に占める短期売買が活発化した結果、時価総額に対する売買回転率が非常に増加していると報じています。
 記事にもあるとおり、インターネット取引の普及が大きな理由になっており、個人の日計り商いや短期売買に加え、証券会社のディーリング、ヘッジファンドなどの短期売買が絡まりあって、出来高面における「活況」を呈しているわけです。
 それに対して、我々外務員の取引では閑古鳥が鳴いています。今月もまた一人、仲間が証券界を去っていきます。


 我々の取引をネット取引に対して、対面取引と言います。手数料を下げて売買頻度を高めてもらえばいいじゃないかという人もいますが、短期的にはともかく長期的にはペイするはずがありません。人件費を最小化するネット取引に対して、価格面で対抗するのは、戦車に竹やりで挑むようなもので、ビジネスモデルが成立しません。
 我々が報酬を正当なものと考えるなら、ネット取引とまったく別次元で顧客にメリットを提供する必要があります。
 顧客が感じるメリットはいろいろ考えられ、我々の目指すべきサービス内容も一概にはくくれませんが、私自身は「資産管理上の助言」という方向に大きな将来性を感じています。すなわち、目先的な上げ下げの予測の巧拙より、大局的な見地からのリスク管理や税務管理など資産運用面での助言に活路を見出そうと努力中です。

 現在緊急の相場と関係のないことを書きましたが、@信用顧客とA銀行や低位株で破綻懸念が強い銘柄の持ち株比重が特に高い顧客を除けば、静観を決め込まざるをえない状況であり、一喜一憂しても仕方がないと考えています。

 今、みずほが20.5万円まで下げて来ました。一喜一憂しても仕方がないと書いたばかりですが、@やAの顧客もいる以上、やはり非常に気になります。今のところ、銀行株以外の国内関連では12月安値より上値で比較的落ち着いているのが救いですが、ここ当面の動きについては神に祈りたくなります。
 ところで、今日発売の「週刊ダイヤモンド」によれば、合同製鉄の「正しい株価」は時価の4倍近い298円となっています。去年11月には「危ない会社」のワースト16番目にランクされたのに、随分違った評価です。


第139回 待つのみ<1/30>

 日経平均が9800円台、TOPIXが960ぎりぎりと、下離れの怖れが出てきました。
 ハイテクと銀行株がいずれも不安な動きで、株価を見ていると前途を悲観したくなる状況ですが、私は今のところ悲観していません。
 どんな悪材料も株価は先見して早めに織り込むはずであり、どんな下げ相場もいつかは下げ止まり、反発に転じるという信念を堅持しています。

 希望を持てる現象として、今回の下げ局面では新興市場の人気株はもちろんのこと、低位株や品薄小型株の下げは比較的軽微で、12月のような個人・法人の狼狽売りが出ないことが挙げられます。
 これについて、主力株の下げが遅れて個人の諸株の投げを誘い、そのうち急落するだろうという悲観的な見方もできますが、それは個人投資家を馬鹿にし過ぎています。最近の個人投資家は決して鈍感でも知恵遅れでもないはずです。
 個人の、特に現物投資が買い越し基調にあるということは、経験的にはその時点の相場水準が大局的にはそこそこに買える水準に達していることを示しています。
 プロ的な投資家が勢いよく売ったり買ったりするときは、目先的にはタイミング的にずばり正解の確率が高い反面、大局的に見ればとんでもない水準での売買だったという結果になるということが、多々あることと好対照をなします。

 冷静に考えて、銀行がどんな事態になろうとも、金融パニックが起こって日本経済の根幹が揺らぐというシナリオの確率は無視すべきほど小さいはずです。景気は当面において急激な悪化は考えにくく、むしろ米国に引きずられやや好転する兆候もあります。
このような状況において、上場企業の大半については、今後のファンダメンタルズをさらに悲観すべき状況とは私には到底思えません。

 現在、二部や店頭はもちろんのこと、第一部市場でも多くの銘柄が、その財務内容や収益の見込みから考えて、本来なら魅力的な水準にあります。
 例えば、ほんの一例で合同製鉄。1株純資産300円はほぼ正味と考えることができ、かつ現在の景況でも復配が可能な収益水準にあり、かつ製品市況の下げ止まりは大局的に相当確実なものと考えられます。今期は、残念ながら、みずほなど株式の評価損発生で復配は見送られるでしょうが、本来、相場が正常なら、少なくとも150円以上に評価されて然るべきと考えます。
 また、500円位の中位株にも、驚くほどの割安株がごろごろ転がっています。株価が驚くほど割安にまで下落すれば、企業内容が変化しない限り、下値不安は限定されます。ちょうど2年前、日経平均が2万円以上のときに、490円前後のカメイ(8037)を驚くほどの「割安バリュー株」として顧客に勧めましたが、日経平均が半分以下になった今も、当時より高い530円前後で取引されています。私の知る限り、企業内容がなんら好転したわけではなく、安すぎる株はもはやたいして売られないという好例だと思います。

 全体相場の地合いは今後も揺れ動きはするのでしょうが、本格的なモメンタム(方向性)の転換は3月第1週をとりあえず想定しています。現在は、信用の顧客の期日や追証をなんとかしのぎながら、銘柄の勉強をして、その日に備えるばかりです。


第138回 やや後退の弁<1/25>

 パソコンのトラブルで、今週の書き込みが今日まで出来ませんでした。パソコンにはもっと強くなりたいものです。
 今週は厳しい相場状況となりました。米国の軟調は覚悟の上でしたが、銀行株を中心にする国内関連株へのマインドも低調に推移し、たとえ本当は買いたくても目先的には見送らざるをえない状況です。

 私はこれまで「春は近い」のではないかという期待を持ち、それゆえ「正念場」と思っていましたが、どうもこの正念場は簡単にはくぐり抜けられそうもなく、月並みですが、3月初めまでは期待を持たないほうがよさそうだと思い始めました。

 問題を整理すると、現在の日本株安は2つの要素が複合して生じています。
 @ は、9月安値から急回復した米国株価の戻り一服。
 A は、12月安値の銀行株や低位株一般の戻りの鈍さ。 です。
 昨年9月までの日本株は、ハイテクと国内株が基本的に一心同体に動いていたと言ってもよいと思いますが、10月以降は@の米国株を中心とする株価サイクルとAの銀行株を中心とする株価サイクルの2つに分裂した様相になっています。
 平均株価は@とAが複合して算出されるわけですが、日経平均はハイテク値がさの影響を強く受けて@に偏った数字が算出されるので、TOPIXのほうが比較的に実態に近い傾向を表わすといってよいでしょう。
 残念ながら、そのTOPIXがバブル崩壊後の安値を更新しました。TOPIXが堅調に推移し、「1月高」により二番底形成に進むという期待は裏切られつつあります。

 目先の上昇相場に期待をもつ人が減少すれば、買い手は公的資金か目先を無視できる長期投資家に限られ、そのような投資家は上値を積極的に追う買い方はしないので、上値が重くなり、今のように見送り気分が極端に強まるのは当然のことです。
 ただ、救いがあるのは、目先的に希望の少ない地合いが続く中で、極端な下ブレも今のところ起こってないということです。
 弱気の人は、公的資金で買い支えているだけで、2月3月には急落するよと言いますが、私はそうは思いません。日経平均を構成するような主力銘柄で見れば、年金買いがなければ今にも急落しそうな物騒な地合いですが、一般の数多くの銘柄で見た場合、銀行や中低位株が崩落的に下げた12月とは明らかに違った相場地合いであると思います。
 相場の先見性を信じるなら、上記Aの国内関連株のサイクルで見れば、12月に2〜3月に予想される悪材料を織り込んだ可能性があります。
 どんな悪材料も、織り込んでしまえば、根本的な下落要因ではなくなり、上値への復元余地がどの位あるのかということに焦点が移ります。

 銀行株を中心にする国内関連株の現在の状況は、おそらく、12月に悪目を出し尽くしたのではないかという感触のもとに形成されていると考えます。
 したがって、現在の市場が予想していないよほどの新事態がない限り、今後大きな下ブレはないだろうと考えますが、本格上昇の時期まではまだ1ヶ月以上かかる可能性が高いというふうに、やや後退してしまった次第です。


第137回 何を買うべきか<1/18>

 昨日で日経平均は7日連続安となったものの、これはハイテク安が主な要因になっており、それほど気にしていません。注目はTOPIXですが、一昨日、昨日のザラ場では問題の980を割れたものの、終値では15日の980.3が安値で、98年10月安値980.1をかつかつ上回っています。
 今日は、米国の時間外が安いのにハイテクが堅調に始まり、銀行は反落していますが、日経平均でいま95円高、TOPIXで8ポイント高と上昇、よほどのことがない限り、先週のように金曜日の後場安にはならないだろうと思われます。

 先週から、もし株を買うとすれば何を買うべきかを具体的に考えようと思いながら、なかなか本論に進めません。
 銘柄を選ぶのに、個別の株の内容吟味から始めるボトム・アップと全体論から始めるトップ・ダウンの2つの行き方があり、バフェット氏は前者の方法で巨富を築き上げました。私も本来は個別株に魅力があれば、「森を見ずに樹を買え」と主張したいのですが、現状では、例え長期的に有望かつ安心という割安銘柄があっても、株価が簡単に上昇するとは思えません。

 仮に相場が急回復に転じても、過去の経験からは、買われるのはよほど期待の高い超人気株と、よほど内容が苦しく、売られていた逆の人気株(悪役)であり、不人気ゆえに割安な株の本格的な株価回復には相当なタイム・ラグを生じます。98〜99年の場合で言えば、10月の最初の反騰の主役は下げの悪役だった銀行であり、翌年にかけコツコツと緩やかに上昇し続けたのは当時店頭株だった光通信や小型成長株としてのファーストリテイリングで、一般株が急騰したのは翌年3月のことです。ましてや、不人気な好内容株に見直し人気が起きたのは、4〜6月にかけてだったと記憶します。

 中には、上がるのはいつでもいいから安心して持っていられる株を買いたいという顧客もいますが、多くの顧客のニーズは「なるべく早く上がりそうな株」です。
 我々にとってつらいのは、相場全般の下落もさることながら、平均株価が景気よく上昇しているのに、勧めた株の回復が鈍いときです。(もっとも、急がば回れで、そのような株が後になって大幅高して結果的には喜ばれたことも多いのですが)

 相場回復時にすぐに上がりそうな株、というのが一般的には銘柄選別の条件になります。その条件に、ただ単に人気だけでなく、個別に裏づけを持った銘柄であることという条件を重ねた場合、意外に難しさを伴います。
 考えてみれば、人気があるということと割安であるということは矛盾に近いといってもよく、両条件を合致させることが難しいのは当たり前のことかもしれません。
 そんなことをこのところ、うずうず考えています。

 1つだけ銘柄候補を挙げれば、パチスロのサミー(6426)です。利益3倍増予想を受け、昨年8月には9920円まで買われた後、2年連続の株式2分割で、現在3000円前後で推移しています。
 製品に不具合を起こしてミソをつけたとはいえ、今期予想1株利益は412円で、PERは8倍にも達しません。パチスロの成長が止まっても、この会社はかねてから総合アミューメント企業へ脱皮していく戦略を実行しており、やや長い先への期待は十分にあります。
 今日、将来のNY上場を目指しADRを発行することが伝えられ、注目されます。米国での売買を目指すことは、クレイフィッシュのように顰蹙を買った例はあるものの、普通は、会社の財務と企業姿勢のディスクローズに相当な自信があるからと考えられるからです。


第136回 来るべき日に何を買うか?<1/16>

 今朝、TOPIXがとうとう980ポイント割れとなりました。その後、銀行株が反発し、指数もプラスに転じ、今日の終値が注目されます。
 あるお客様に「今は一喜一憂しても仕方がないよ」と逆に諭されましたが、TOPIXが98年10月の水準を保つかどうか気になります。加えて、みずほとUFJの株価も気になります。

 希望的な観測ですが、今日、銀行とTOPIXがこのまま堅調に推移するなら、たとえ今夜の米国株が売られても、底入れの一つの条件が整います。昨年3月のように米国株安の中で日本株の反騰機運が高まらないとも限りません。
 現段階では「買いチャンス!」と明言する度胸はありませんが、相場基調の転換に備えておく必要は十分にあると考えます。

 もし顧客から「今日株を買いたいが、何を勧めるか」と聞かれれば、その顧客が店頭やその他の毛色の変わった小型株を選好する人でない限り、私は迷うことなくみずほかUFJを挙げるはずです。なぜなら、いま普通の第一部市場の株を買うということは「2〜3月危機説」に反抗することであり、主力銀行が大きな綻びを出すことなく危機を克服できるということが大前提になるはずだからです。
 ただし、顧客から「では、銀行は本当に大丈夫か?」と聞かれれば、私はそれに対しては「お客さんに判断してもらうしかない」と答える他ありません。
 だから、本当に自信を持って、買ってくださいと勧められるのは、銀行株が随分値を戻してからになるはずであり、そのときに銀行株を勧めてももうそれほどの魅力はないかもしれません。

 もしみずほやUFJが40万円近くに値を戻したら、それでも9月末の値段より安いのですが、市場のムードは必ずや一変するはずです。それから積極買いに転じても十分まだ魅力がある銘柄が多いと考え、今はそれが何かを考えています。

 相場回復時には相場なりの水準にあると思われるハイテクや銀行株など代表株を除外し、意外高の余地のあるものを大別すれば、中低位株、ハイテク系不人気株、好内容割安株、小型成長株などが投資候補になります。

 以上は、何を買うべきかについての前書きみたいになってしまいました。実は、顧客の中には追証が出ている人もおり、商いはないのに忙しい状態なので、続きは日を改めさせていただきます。


第135回 春に備える<1/10>

 朝方、みずほが30万円の大台を回復し、すわと思ったら、たちまちしぼんでしまいました。火曜日に日経平均が1万1千円につっかけて、あっという間にはね返されたように、第一部市場は実に頭の重い展開です。
 年末から毎日上昇している店頭平均も、今日は反落模様で、業種規模を問わず見送り気分が強く漂っています。
 2〜3月の危機が叫ばれている現在、仕方がないことかもしれませんが、株式市場は心の張りを失って、時間だけがただ流れていくような気がしてなりません。

 相場の季節も今は冬です。寒さに脅え、うろたえる人は少なくなりましたが、その代わり、この冬の状況が限りなく長く続くかのようなあきらめ気分が支配的になっています。
中には、冬だって頑張れるさと短期売買に徹している人もいますが、私はそのタイプではありません。値打ちのある株はそのうち上がるさと強がったところで、やはり春の日差しを浴びながら株式投資をしたいという気持に変わりはありません。
 だから、今は基本的には、じっと待っています。時間だけがぼおっと過ぎているのではないかという焦りはありますが、それでもじっと待っています。

 ところで、相場が春に向かうとすれば、冬と春の分岐点はどう考えておけばよいでしょうか? まず日経平均の1万1千円台乗せが重要なシグナルになることは疑いありません。私自身は日経平均よりTOPIXのほうが本来は大切と考えますが、多くの相場参加者がそれで相場体温を測り、先物のほとんどがそれを売買している以上、日経平均が市場のセンチメントに大きな影響を与える事実は否定できないからです。

 日経平均が1万1千円を超えれば、持ち合い解消の売りがどっと出ると言われていますが、果たしてそうでしょうか?
 私はこう思います。まずどっと出るものなら1万1千円台に完全には乗らないはずです。したがって、もしこれから乗ってくるとすれば、それは比較的売り物が出ないときです。そして、もし売り物が案外に少ないとすれば、最初は少しずつ、場合によってはどっと売り物を出そうと思っていた売り手も、様子を見たほうがよさそうだと思い始めます。
 このようなメカニズムにより、1万1千円台はもし完全に乗せれば、案外に軽く、次は1万2千円台に挑戦ということになるのではないかと考えます。

 いや、そんなことはない、銀行は膨大な株を売らなければいけないのだから、軽くなるはずがないよと考える人も多いかと思います。実際、持ち合い解消の道のりの長さを思うと、日本株は上がるときがいつ来るかと心が暗くなります。
 しかし、これまで、持ち合い解消の売り圧力が絶望的に意識されたのは、つねに相場不振期だけでした。相場が上がってくると、嘘みたいに悪材料として意識されなくなるのです。
 根本的には、金融機関等の運用担当者も、上がるものをわざわざ安く売ろうとするわけではないので、持ち合い解消が相場を圧迫するかどうかは、相場が上がるかどうかそれ自体にかかっており、相場が上がるときは持ち合い解消はそれほどの悪材料ではなくなるという当然といえば当然の心理に行き着きます。
 (つまり、持ち合い解消売りがあるから上がりにくいと考えずに、上がりにくいとみんなが思う状況だから、持ち合い解消売りが出やすいと考えたほうがよいと思うのです)

 私は春が近いと思います。今日は恐る恐るですが、まだ持ち株が少ない人に丸紅とUFJを勧めました。今考えていることは、春が来たら何を買うべきかということです。これについては来週書きたいと思います。


第134回 銀行株価を引き続き注視<1/7>

 新年の相場が上々の始まりとなり、胸をなでおろす思いです。
 年末年始に考えたことは、銀行株を中心に国内株がどうなるかは、もはやあれこれ考えても仕方がない、株価にすべてをゆだねる他ないということです。

 年末に続きまたTVの話で恐縮ですが、昨日の「サンデープロジェクト」で榊原氏ほかそうそうたるメンバーが口を揃えて、日本経済はますます悪化する、金融危機が起こると言い切っていました。
 聞いていると、暗然とせざるをえませんでした。実態の悪さを思い知らされたのもさることながら、これだけのそうそうたる人たちが明快に「悪い」といえば、悲観的な見方をする人がますます増え、その結果、景気はますます悪くなるかもしれないと考えたからです。

 私も銀行の経営がそれほど余裕のあるものではないと思います。例えば各銀行のバランスシートで「繰り延べ税金資産」という資産が結構巨額になっていますが、将来黒字を出したときにのみ実効があり、赤字のまま倒産するなら、まったく価値のない資産です。しかし、拓銀や山一が破綻したときとは違い、明らかな不良資産を隠蔽し、完全な粉飾決算になっているのではないはずです。引き当てるべき不良債権をどの範囲まで拡大するか、引当率をどの程度とするかで、銀行の自己資本以上の金額が簡単に上下する性質を含んでいます。

 だから、一人ぐらいは、主要銀行は独力で生き残れるという意見を述べてもよかったのではないでしょうか。あまりにも意見が揃いすぎるというのは、まさしく事実であるか、事実への見方が偏り過ぎているかのどちらかですが、現時点ではそのいずれとも判断すべきではないと私は感じました。

 後場に入って、銀行株が堅調になってきました。銀行、銀行とこだわっているようですが、私はそもそも銀行株にはほとんど興味がないのです。バブル崩壊後ずっとカラ売りを勧めてきたくらい、銀行株には魅力を感じないのですが、この局面では銀行株がだめなら、国内関連株のほとんどはだめと考えざるをえず、どうしてもその株価動向を注視せざるをえません。

 ハイテク系も含めて、まだ伝票を1枚も書いていません。しかし、このまま行けば、日経平均も銀行株も大方の予想を裏切る上昇を示す可能性もあり、相場のモメンタムが完全に変化することも有望です。今は焦らず、少しずつ種を蒔いておけば、上がれば上がったでなんとかなるという目算をしています。


第133回 V字型回復かU字型か<12/27>

 今朝のTVにまたドイツ証券の武者氏が出演していました。顔を見ただけでほぼ何を言うかが分かりましたが、ただつねづね主張している基本シナリオ(日経平均8000円に下落後のV字型回復説)の他に、他のシナリオも一応の可能性として掲げたものの、現時点から緩やかに上昇に向かうシナリオについては可能性がほとんどないとわざわざ明言したのには多少のショックを覚えました。
 彼の主張は、銀行への公的資金投入など政策の強力な発動がない限り、日本株の回復はないという論理に基づいているようです。
 それに対して、そういう形でのV字型回復ももちろんありえるものの、今の日本経済は劇的に回復するよりも、じわじわと時間をかけて回復を模索する(U字型)可能性のほうが高いのではないかと考えているのが私たちの立場です。

 経済のV字型回復を主張する武者氏が目先の株価については弱気で、じわじわの状態しか期待できないと考える私たちが目先の株価について強気なのは皮肉なことです。
 本来なら、V字型回復が期待できるのなら、株価は買いなのでしょうが、株価が下がり催促しなければ、政策の発動がないとするのですから、目先の株価に弱気になるのは論理的には当然といえます。
 ただし、政策の発動だけが株価の回復要因ではありません。例えばバブル崩壊後、大勢的には下がり続けた銀行株にしても、90年代には何度となく反転上昇の勢いを示しましたが、政策による反転ばかりでなく、むしろ自律反転のほうが多かったのではないでしょうか。

 証券関係者には他力本願型の発想が多く、かつては「国策は買い」が市場を席捲し、最近の不振相場ではつねに「政策の不在」や「当局の市場への無関心」が嘆かれています。
 本来、証券は他人に何かを期待して価値判断するものではなく、あるがままの状態に対して先行きの様々な可能性を考慮したうえで、自らの納得できる価値を決定していくものであるはずです。
 そして、証券の価値の源泉である企業活動も、本来は政策も含めた他からの支援がなければすぐ破綻するような脆弱な基盤には立っていないはずです。

 バブル崩壊のツケが一挙に厳しくつきつけられている現在、多くの企業の基盤が揺らぎ、不安感が漂っていますが、多くの企業に対して現在の株価は悲観を織り込み過ぎており、たとえ経済のV字型回復がなくても、株価の反騰(個別ではV字型)が十分に期待できるというのが私の意見です。

 以上を本年最後の文章とさせていただきます。来年は7日以降に再開します。


第132回 お先真っ暗か?<12/25>

 先週末に銀行株に下げ止まりの兆しが出て、期待した連休明けですが、福島銀行への是正命令で、主要銀行も売り気配の始まりとなり、市場のムードは最悪です。
 円安が180円まで進むという予想コメントが流れたり、週刊誌に大銀行がつぶれるという記事が出たりで、投資家に限らず日本人の大部分が今は「お先真っ暗」と感じているのではないでしょうか。
 ただし、気をつけなければならないことは、「お先真っ暗」のどの程度を今の株価が織り込んでいるかということです。

 株価は基本的には先行きを相当に織り込みます。今の株価は3月頃までのぞっとするような実体経済の推移をすでに相当に織り込んでいるはずです。
 もし、現実の推移はその程度の「ぞっと」では足りず、もっとモノスゴイことが起こると考えるなら、今の株価は売りになりますし、逆に、現実の推移を100%近くもしくはそれ以上に織り込んでいると考えるなら、今の株価は買いになります。
 実体経済が好転すれば買い、悪化に向かえば売りという単純な判断は、投資の上ではおうおうにして悪い成果につながりかねません。

 私は、丸紅が58円、ミノルタが92円、あさひ銀行が57円に売られた先週半ばの段階で、株式市場は来年に予想される日本経済の苦難を相当に織り込んでしまったと考えます。なぜなら、例えばの話、その3社に均等額を投資したとすれば、仮に1社くらいゼロになっても2社残れば大きな利益が発生し、仮に2社がゼロになっても残る1社が3倍になって元本を回収できるというソロバンが大まかに成立すると考えるからです。
 生き残った場合にも、これらが半永久的に低位株であり続けるという悲観論だってあるのでしょうが、株価のダイナミズムからそれはないと私は思い、省略します。
 つまり、3社への均等額投資の成果は大まかに次のように把握できます。
 @ 全部ゼロ=大損
 A 2社ゼロ、1社回復=引き分け(残った銘柄を3倍で売る)
 B 1社ゼロ、2社回復=利益
 C 3社とも回復=大儲け
 問題は、それぞれの確率ですが、1社ずつで見れば心配だと思えても、3社全部がゼロになる確率はありえないほど小さいと考える普通の人は、この投資プランに魅力を感じるのではないでしょうか。
 私は非常に感じます。したがって、先週の株価水準はいくらなんでも行き過ぎていたと考えるのです。

 私事ですが、非常に嬉しいことがありました。10年前まだ正社員だった頃の顧客が私の行く先を調べて電話をくれました。会社を定年になり暇にしているというので自宅を訪ねたところ、私の扱いでまた株を始めたいということでした。
 聞くと、大手証券から日経平均リンク債やらEBやらオープンやら勧められ、納得できないままに損を重ねてきたということで、損もさることながら、納得できないことに不満を感じて、私のことを思い出したと言ってくれました。
 早速、資金の一部でみずほHと合同製鉄を買うことになり、今朝実行しました。10年ぶりの取引なので、結果が心配ですが、万一どんな最悪の結果になっても、最低限の了解をえられるという自信はあります。

 株を勧めるのにゼロになるリスクを強烈に意識せねばならないような日々が続いていますが、一日も早く笑って思い出せるようになりたいものです。


第131回 二番底を形成中か?<12/20>

 前回触れた通り、現在の相場は、逆バブルの様相があり、弱い銘柄には次々と短期の売り仕掛けが入り、売りが売りを呼ぶ展開になります。
 もし現在の「弱い銘柄」の下げが経済的合理性を持っているものなら、この逆バブル現象の本質はバブルではないということになり、まだまだ傾向として続くことになります。
 問題は、その合理性です。

 弱気論者に言わせれば、100円以下の銘柄のほとんどは市場から退場を迫られている悪玉であり、それらが撲滅されるまで国内関連株は下げ止まらないという論理です。
 そしてもし、そうなら、不良債権額は飛躍的に増大し、大銀行の自己資本なんかあっという間に吹っ飛んでしまい、国有化を迫られることにもなりかねません。
 さらに金融システム動揺の影響は、財務内容が悪い株価中位の銘柄にも及ぶので、安心できるのは限られた「勝ち組」企業だけということにもなります。
 図式的ですが、いま市場を席巻している弱気はおしなべて以上の論理に収斂させることができると思います。

 本当にそうでしょうか? 昨年春までフィーバーしたネットバブルでは、「100年に一度のインターネット革命」という言葉が、多くの投資家の思考を支配し、一見合理的ではあっても非現実的な論理が、あたかも今すぐにでも起こる現実であるかのようにまかり通りました。そして、現在の相場では、「構造改革」という言葉に、投資家の思考があまりも支配されているのではないでしょうか?

 今の日本経済が「100年に一度」か少なくとも50年に一度かの「構造改革」を迫られていることは疑いありません。それはまさしく厳しい課題です。
 しかし、数十年に一度の変革が一挙に現実化すると考えると、去年のネットバブルと同じく現実からかけ離れた論理の世界にはまり込んでしまいます。
 明治維新が元年に一挙実現したものではないように、「構造改革」はおそらく90年代に端を発し、全体としてはこれからも長い時間をかけて遅々として進んでいくものでしょう。

 私は、現在緊急に退場を迫られている企業は、それほど多くないと思います。丸紅を筆頭に多くの低位株や、あさひ銀を筆頭に主要銀行に対する不安感は「濡れ衣」だと考えます。かつて株価1000万円を豪語した光通信がそうはならなかったように、多くの上場企業が近い将来に退場することはないと考えます。

 ただし、回っている歯車は簡単には逆転しません。昨日、「弱い銘柄」の一つだった日興がストップ高したり、今日は問題の丸紅が反発していたり、安心売りのムードに若干の転機が訪れつつあるのではないかと考えますが、まだまだ楽観できません。
 多分、昨日21万円台をつけて小幅反発しているみずほHが25万円台をつけてくれば、市場心理は大きく変わってくるはずで、その時点で日本株の二番底(2つの意味、1つは9月安値に対して、もう一つは98年10月安値に対して)の可能性が現実化してくると考えます。

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