第20回 決意表明<7/24> 日経平均が上がらないのはやむをえないとしても、相場全体に活力がないのは嫌になりますね。 活力がないのは嫌だ、なんとか自分の株が上がってほしい、上がらないのはおかしい、・・・・というような思考に意味がないのは分かっています。しかし、そのうえであえて言いたいのですが、いったいなぜ今、日本株全体に対して弱気にならなければならないのか、私には不思議でなりません。 私たち証券を自分の仕事としているものは、基本的に「相場のことは相場に聞け」を鉄則としています。相場の現実に対抗して、自分の理屈のほうが正しいと思い込み、流れに逆らって痛い目に遭った経験上、相場に対しては素直にならざるをえないのです。 しかし、その一方、流れに身を任せていれば済むというものでもありません。機関投資家の担当者なら、他も同じように悪いのだから仕方がないで済むかもしれませんが、私たち外務員にとっては、自分の数少ない顧客がもうけそこなったり、大損してしまったりしたとき、自分自身の生活基盤が危機にさらされ、それに対して、言い訳などはききません。 だから、相場の流れに対して、つねに一歩距離を置き、ときには逆らうこともぜひ必要なのです。 いまなぜ弱気なのでしょうか。日経平均のことなどは私には分かりませんし、それほどの興味もありません。 私が自信を持って言えるのは、ある特定の銘柄の価値についてのみです。 私の感覚では、今の日本株には魅力的な投資対象が相当にあり、目先の値動きなどきにせず、どんどん買いたい銘柄がいっぱいあると思えてなりません。 例えばオリコ(8585)505円です。最近倒産したライフに、内外からいろいろな引き受け申し込みがあるということが話題になっていますが、信販の抱える個人向け債権とその顧客は銀行の預金や貸出先、証券会社の預かり資産、生損保の契約資産などよりよほど魅力的なはずです。多少の不良資産があっても、引き受けようという企業が続々と名乗り出るのは当然と思います。 ライフに比べ、オリコには5倍以上の資産があり、年3000億円レベルの粗利が確実に見込めます。ゼロ金利が解除されて多少の金利上昇があっても、銀行ほど収益への悪影響は受けないはずです。 まだ償却しきれない法人向け不良債権は、会社発表では1000億円であり、増えても数百億円のレベルのはずです。 前期に多額の不良債権償却を行ったため、見かけ上の純資産は減少し、財務内容健全とはいえませんが、不良債権のディスクローズが不明確な日本信販より、安心感は高いといえます。 そのオリコが高値から約100円下げ、PERは6倍強に低下しました。その理由は、旧長銀や新生銀行からの借り入れがあるため、危なくなったら債権放棄に応じてくれないという不安心理と相場全体への不安心理が相乗したものだと私は考えます。 金融業は何が起こるか分からないから恐いね、という投資家もいるかもしれません。しかし、他の業種でもここに来て見送られている事情は根本的には似たりよったりの杞憂だと私は思います。すなわち、物事を悪い方にばかり考え、悲観的な結論に流れているのです。 慎重なことはよいことです。でも、それなら、なぜ去年の暮れや今年の2月頃に慎重にならなかったのですか。ソニーの3万円を高いと思わなかった人ほど、今は極端に慎重になっていると私は感じます。 外務員としての防衛本能から、むやみやたらに戦線を拡大することは避けたいと思いますが、もし余裕があればいろいろな銘柄、特に110円台の合同製鉄(5410)、前記のオリコ、1500円のキンセキに強気したいと考えています。
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第19回 当面の作戦<7/18> 今日(月曜)は、日経平均では高かったにもかかわらず、我々の顧客の持ち株の値動きは総じて重苦しく、我々外務員仲間は朝からため息をついていました。 私も今日はまったく手持ち無沙汰に終わりましたが、それほど悲観はしておりません。来春にかけて、新しい相場(業績相場)が始まっているとすれば、まだ立ち上がりかけのころはそんなものでしょう。過渡期には混沌や矛盾がつきものと割り切り、眼前の現象に神経質にならないよう努力することも必要だと思います。 さて、週明け早々にまた書き込み始めたのは、合同製鉄が8円安の116円で終わったからです。私はもともと目先は上手くなく、いれこみ過ぎると失敗することも多いのですが、今回の合同製鉄の上昇では比較的にクールに眺められたので、多分下がっても110円台という感覚は目がくらんでいないと思います。 理想的には、110円ぎりぎりなので、とりあえず明日は売り気配でも出て、安寄りになってくればよいなと考えています。 その他、今日高かったので、買いチャンスの見つけ方が難しくなりましたが、かねてからの注目銘柄のうち、オリコ(8585)とキンセキ(6949)は下げ一巡と考え、強気方針で臨みたいと思います。 簡単ですが、混沌相場の中での私の目先方針を述べさせていただきました。
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第18回 夢に向かって努力<7/17> 前回、合同製鉄の120−130円が実現したら嬉しいなと書きましたが、さすがに1月高値の135円はいきなりには難しいだろうと思い、やや遠慮気味に見ていたのです。そしたら、なんと書いた翌々日には137円の高値まであり、恐いほど嬉しいという実感でした。 正直なところ、合同製鉄については相当な高値を予想しているにもかかわらず、先週は1000株も買いませんでした。それどころか、130円くらいになると、とりあえず半分だけでも売っておこうかという顧客からの相談が相次ぎ、それに対して私は「いずれはものすごく上がると思うが、目先の上がり下がりは予想しにくい」という比較的にクールなコメントに終始しましたので、ある程度の売り注文が出ました。 クールにならざるをえないのは、昨年売り損じて顧客に迷惑をかけたからです。合同製鉄の業績については前には個人的な予想1株利益は15円であると書きましたが、現在は18円に上方修正し、かつ今期30円もありえないことはないと考えております。(その根拠等について興味がある方は、私のレポートを毎週掲載してくれている日本不動産経営協会(JRMA)のホームページで、「今週の株式投資案」をご参照ください。ただし、更新は火曜日になるかもしれません) 合同製鉄への投資には、目下の私の夢が託されています。ただし、株価は私が努力して上がるものとはまったく思っていません。薄商いのときなんかちょっと買いを入れれば、引け値がよくなるのになと思ったりはしますが、人為的な株価は絶対に悪い結果を招くというのが私の信条ですから、自然な結果を待つようにしています。この欄で、合同製鉄のことをしきりに書いているのは、どう考えても本音で安いと思うから書いているのであって、間違ってもみんなで買って株価を上げようなどとは思っていません。 私が努力していることは、私のお客様と私自身を将来的にものすごくもうけさせることです。だから、本当の夢はその点にあり、合同製鉄に託す夢はそのプロセスでしかないとも言えます。合同製鉄の結果がどのように出るかは今はじっと待つしかないのですから、私は他のことで努力しようと考えています。 たとえてみれば、個別銘柄への投資は、軍隊の派遣です。昨年前半、合同製鉄とローランドに主力部隊を派遣し、まず順調な進撃により相当な含み利益を蓄えましたが、敵地に深入りし過ぎ、身動きがとれなくなりました。第三の主力部隊として、アイカ工を育成中、激烈な二極化相場となり、私に残された戦力は、せいぜいゲリラ部隊程度でした。 今年に入り、ゲリラ部隊があちこちで戦果を上げ始めてくれたので、合同製鉄とローランド部隊が休養中でもそこそこの戦力を新規銘柄にぶつけることができるようになりました。最近の注目銘柄であるホソカワミクロンにはCBでリスクが限定されていることもあり、自分としてはまずまずの資金を結集することができました。大真空にも比較的に安心感が高いということで、徐々に資金を結集中です。 軍隊が勝つことによりますます強くなるように、まずは投資した銘柄の成功です。もうけることにより、ますますリスクを分散し、ここぞというときの物量戦も可能になります。 織田信長は桶狭間の戦いでバクチ的な勝利をおさめた後、不利な戦いを極力避け、勝つべくして勝つような戦い方に徹しようとしたそうです。それでも、もちろん戦いに絶対はなく危険な目にも遭ったのですが、なるべく安全な方法を選ぼうと努力したからこそ、天下への道は開けたのだと思います。 私がライフワークとしたいことは、資産全体のリスクをなるべく小さなものにしながら、高いトータルリターンを目指していくことです。
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第17回 嬉しいこと<7/12> 今日(火曜)の相場は朝から軟調でしたが、昨日、アイカ工がストップ高、大真空が大幅な新高値と最近の注力株が好調に転じたので、私はこれまでになく余裕のある気持ちで、相場を眺めておりました。すると、後場も半ば過ぎから、合同製鉄とホソカワミクロンが強含み始め、それぞれ目先のフシ抜けの110円の5円高、810円の40円高と非常によい引け方となりました。嬉しくなって、この文章を書き始めた次第です。 いうまでもなく、相場にとって大敵は、ルンルン気分になることです。自分を相場の天才でないかと思い始めたり、自分には天運があると過信したときに、おうおうにして大失敗をやらかすことは痛いほど思い知っています。 しかし、嬉しいことは嬉しいのです。できれば、ポーカーフェイスに徹したほうがきっと大きな成功に結びつくとは思いますが、私は仕事中はぐっとこらえて、家に帰ってから、相場の失敗成功を割と素直に女房に話して、それで自分の気持ちの整理をつけるタイプの人間です。 合同製鉄は、前にも書きました通り、去年の大失敗銘柄です。平均買値はそれほどでもありませんが、一番高い人は170円台で買い増ししています。今思うと、195円の高値をつける前ならともかく、落ち初めて買ったのもあるのですから、なぜそんなところで買い増しする気になったのか不思議なほどです。それこそルンルン気分で欲に目がくらんで、なにも見えていなかったとしか思えません。 そんな失敗をした銘柄ですから、私がこの銘柄について強気を言うことは、負け惜しみと紙一重になりやすく、できればそっとしておきたいのですが、負け惜しみでもなんでもなく、冷静に考えて「有望」と思えるので、あえて強気を述べ、顧客に「またか」とうんざりされているのです。ついでに言えば、私の大変好きなローランドでも去年同じような大失敗をして、現在も私にとっては大きな在庫があるのですが、こちらは目先それほど「有望」とは思えないので、愛着の念は述べても、強気は述べておりません。 合同製鉄は、前に書きましたように、現在の製品市況が続けば、1株利益15円が期待できると私は考えております。さらに来期は鉄筋棒鋼の価格が本格的な底入れを果たすと考え、会社側の中期目標である1株利益で33円相当の収益を1年前倒しで達成する可能性が高いと考えております。 ただし、会社側の予想が最終赤字かつ無配という現状では、ノーマルな買いによる人気化にはハンディキャップがありますので、上記のような収益見通しを相場がどのような形で織り込んでくれるかについては私は定見を持ちたくありません。したがって、決算発表でがっかりしてからは、基本的に売りも買いもせず、眺める姿勢を基本としています。 今日、嬉しかったのは、手口が特に偏っていなかったからです。手口が極端に偏れば、目先の思惑性は出てくるものの、いずれ反動安につながり、私のように去年の195円を通過目標と考える人間にとっては、かえって回り道の結果になることも多々あります。 したがって、仮に合同製鉄がこのまま120−130円に上昇しようと、どうこうするつもりはないのですが、もしそうなれば、大きなトレンドの第一歩を刻んだと考え、きっと今以上に嬉しいでしょう。 それに対して、ホソカワミクロンのCBに対しては買い増しで対処したいと思います。
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第16回 アナリストについての私見<7/10> 先週、アナリストの目標株価4000円の買い推奨で、アンリツがストップ高し、その後も上伸しています。週末には古河電工がストップ高したり、板硝子や住友大阪の持続的な人気を考えると、光通信関連の銘柄についてウカツなことはいえませんが、アナリストが何かを言えば、それっとばかり人気が一方向に傾く今の風潮は考えものだと思います。 アナリストというのは、一般的には調査マンです。株価原論や自分の担当とする業界のことには通じているかもしれませんが、現実の株価のことはほとんど素人同然の人も多いようです。特に日本では、数年前まで銘柄の調査レポートは業績だけの報告に終始しており、株価判断をしなくてもよかったので、株価についてまったく無関心の調査マンさえいました。 最近では、株価のレーティングを記し、目標株価さえ明示するレポートも一般的になったので、さすがに株についてまったく知らない調査マンはいなくなったと思いますが、それでもわずか数年の訓練で、人様に教え諭すほど株に通じることができた調査マンがどのくらい存在するのか疑問です。 アナリストが目標株価を掲げることはよいことだと思います。しかし、所詮はにわか勉強の意見が大部分のはずですから、市場はそれに対してどのくらい分かってきたかを試すために、胸を貸してやるくらいの度量を示すべきだと思います。まるで神様のご託宣でも出たように、その目標株価に踊らされてしまう現状は、彼らのためにもならないはずです。 私見では、外資系も含めて日本人のアナリストに不足しているのは、株式という資産の根本的な魅力についての認識だと思います。つまり、株式投資の原点です。 おそらく彼らの大部分は、自分自身で株を買ったことさえないのではないでしょうか。仮に職務上のモラル意識で今は株をやってないにしても、もし退職したらぜひ株を持ちたいと念願しているでしょうか。彼らの文章を見る限り、そういう熱意は私には伝わってきません。 彼らの多くの株価判断はすべて他の銘柄との比較の上に成り立っています。ある銘柄では、単純にPERで割安と説き、ある銘柄ではPCFRで割安と説き、ある銘柄ではEBITDAを持ち出し、ソフトバンクでは米国の類似企業とのプレミアムの差を持ち出すなど、多分にその場その場のご都合の論拠になっています。 もちろん彼らは言うでしょう。限られたスペースで、それも大衆投資家向けだから、精密なバリュエーションは書いていないのだと。しかし、彼らは恐ろしいことに、試験のとき覚えた株価原論や数式は知っていても、実用的なバリュエーション(妥当株価を理論的に裏付ける作業)をする力はないのです。 (このことについては、野村週報7.3号に、フェアバリューを推定することがいかに現実的には難しいことであるかが述べられています) ある株が安いか高いかを判断することは非常に難しいことです。ましてや目標株価を設定することは至難のことです。しかし、投資家は、アナリストや営業マンの言葉に踊らされて毎日右往左往している投資家を除き、無意識のうちにこの作業をしているのです。アナリストだけが株価判断をしているわけでなく、またアナリストのほうが判断材料は豊富であっても、最終的によい判断をしているとは限らないのです。 ソニーや光通信を高値で買った投資家は自分の財産をすり減らしました。そして、ソニーや光通信を勧めたアナリストは、今は別の銘柄を勧めているはずです。失敗した後、その原因を冷静に反省し、損をしたくないという切実な思いをバネにすれば、必ずや次の判断のときにプラスに働くと思いますが、私が知る限り、投資家の一部とアナリストの大部分は、そのせっかくの教訓を生かしているとは感じられません。 私は大損したくありません。株をやる以上、損することは仕方がないとしても、間違ってもわけの分からないまま大損するような投資は、極力避けたいと思います。だとすれば、アナリストの調べたことは大いに参考にしますが、彼らの判断は間に受けません。 ひとりひとりの投資家が、その株の本当の価値を胸の中で値踏みすることにより、株式市場は成り立つわけで、証券界が本当に健全化に向かっているのか、いまその原点が問われていると思います。
追記 抽象的な中傷と思われたら困るので、具体的な批判を一つだけ書いておきましょう。 大手鉄鋼株は、6月後半にアナリストが次々とレーティングを下げたので、もともと上がっていなかったところを叩かれた形になり、軒並み新安値スレスレとなりました。 私は合同製鉄には魅力を感じていますが、大手鉄鋼にはまったく興味がありません。けれど、なんでこんな安いところで雁首並べて弱気に転じるのか不思議でなりません。 在庫増加で業績悪化懸念が強いというのが弱気転換の理由ですが、もともと新日鉄やその他に目先の業績で(あるいは長期の業績)で、そんなに魅力があったのでしょうかね。 私は、時価153円の川鉄は「買い」だと思います。
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第15回 証券界は進歩したのか<7/7> 今日(6日)、米国安を受けて、相場はほぼ全面安になりました。顧客の持ち株では、ソフトバンクが1万1千円を割ったのが多少痛いのですが、その他は別にどうこういう水準ではなく、また買いを焦っても仕方がない地合いのようなので、常連さんには休んでもらいました。確か先週末にはカッカして、来週は買いまくってやろうと力んでいたのですが、アイカ工もオリコも山善も買わず、昨日ノジマを利食うまで株の手数料はほぼゼロでした。 その代わり、CBは自分としてはいっぱい買いました。先週書いたホソカワミクロンのCBは、111円台から116円まで週前半はほぼ全力投球で買いました。株価が昨日今日軟調だったのですが、CBの終値は114円90銭で、かつ下値にそこそこの買い物が入っていたので、ほっとしています。 CBは大好きな商品です。特に、100円から120円位までの、株価連動型が大好きです。普通の会社なら、たとえ倒産しても、ゼロになることはありえず、一般的には100円で戻ってくることがほぼ堅いと見られますので、最悪でも10数%の損を見込んでおけばよいわけです。それに対してうまくいった場合、株価連動型なら、利益は無限大ですから、実に気楽にキャピタルゲインの追求ができるわけです。 たとえば、ホソカワミクロンの場合、一昨日株価が784円のときに、115円でCBが買えました。この値段はもし転換すると783円で株を買ったことになり、株を買うより少し得でした。しかも、100円が保証されているということは、権利行使価格681円のプットオプションをただでつけてもらってヘッジしていることと同じであり、かつ配当より多い利息までもらえるのですから、言うことなしです。 もちろん、ホソカワミクロンの株価が上がらなければ損をするので、手放しでお勧めするわけにはいきませんが、実は昨日S高したタバイエスペックみたいな感覚で、株価も有望と考えているのです。(本格上昇は、9月決算が発表になる11月以降かもしれません) CBの仕組みまで、くどくど書いたのは、最近の日本の証券界は以前に比べ様変わりに合理化されたようでいて、元のほうがましだったのではないかとさえ思えることが多々あり、その一つが昨年からのEBの流行だからです。 EBは、商品としてはCBの反対の性質を持っています。つまり、CBとは逆に、普通の預貯金よりは高い利息をもらえる代わりに、株価値下がりのリスクを負担するわけです。最近話題になったソニーのEBは主に3月に発行され、3ヶ月満期で、利息が年率8%ですが、株価1万4千円以下になったら、満期金の代わりに株券でもらう約束なので、株券でもらうときは値下がりして評価損が出ているときなのです。 問題は、リスクに対してあまりにも見返りが少ないことです。1口140万円に対して、年8%といってもわずか3ヶ月ですから、利息は税引きで2万2240円でしかありません。それに対してリスクは問題にならないほど大きく、現実に全国の数多くの投資家に1口あたり約40万円(28%)の評価損が発生したのです。 このEBを勧めている証券マンに聞くと、必ずこう答えるはずです。 「一流銘柄ですから、そのうち必ず上がります。利息なんかよりずっと多い値上がり益が出るはずです」 本当にそう思うなら、なぜ最初から株を勧めなかったのでしょうか。募集中に株を買っても1万4千円(当時は分割前なので2万8千円)でいくらでも買えたのです。結果的には、株価が上がらなかったので今は同じ結果になっていますが、もし株価が大幅高していたら、利息とは比べものにならないほどの利益が出たはずです。 去年の今ごろ、ドコモのEBが発行され、それは結果的に無事満期金が戻ってきました。しかし、同じ時期にもし株を買っていたら、設定価格より利息分以上に安く買え、しかも3倍に大化けしていたのです。 EBの仕組みそのものが悪いのではなく、発行条件が驚くほど投資家に不利に設定されているのです。そしてそれを預かり資産増大のチャンスとばかり血なまこになって売らせる証券会社と、良心にフタをしているのか唯々諾々とセールスする証券マンが悪いのです。 かつてヤクルトなど上場企業が、EBと同じ理屈の日経平均リンク債(下がった時だけリンクするのです)で巨額の損失を発生させました。3年目にはノックアウト型のドル債で証券会社と顧客に10%以上の損失が発生しました。それにもかかわらず、証券会社はEBを勧め、某銀行は「為替上手」という洒落た商品名で、実に条件の悪いノックアウト型(今ではノックインというそうです)のドル債を勧めています。 実は、今回は、株のことで、投資家は信念を持つべきだ、アナリストのご託宣につられてストップ高を追いかけるようなことをするな、ということを書きたかったのですが、長くなりましたので、後日に譲ります。 なお、私はたまたま今週はCB中心の営業となりましたが、先週通りの銘柄観で強気方針を継続しています。 |
第14回 ありがたい状況<7/3> 先週の金曜日、アメリカが下げたので、またおつき合いでドンヨリとした相場になるかと思っていたところ、主力どころは相変わらずさえなかったものの、中低位や中小型は高くなるものが多く、相場地合いはまずまずの堅調さを維持しました。前日大幅高したフジクラ(まだ半分持っています)などは下げ、この日上げたのは、相当に質の落ちる出遅れ銘柄が多かったので、フン、ボロ株相場もいよいよドンづまってきたぞと考える弱気派も多いようですが、私はそんな考えはひねくれていると思います。 私の部屋にもいるのですが、彼らに言わせると、本当によい相場ならソニーやドコモや野村証券が上がるはず、そこらへんの一流銘柄が上がらないうちは、本当の上昇相場とはいえないということなのです。 しかし、私は、もしそうなら「本当の上昇相場」はもう来ない方がよいと思います。なぜなら、ソニーやドコモや野村証券は高過ぎたのではないですか。遠い将来のことは知りませんが、世界で何番目かの異常株価になってまだ上がり続けていたら、それこそバブルの上にはしごをつけたようなものになったのではないですか。 彼らには気分転換が必要だと私は思います。相場はいつまでも同じことをやっているわけではないのです。私は特別に中低位株をひいきしているのではないのですが、客観的に見て、今は中低位株のほうが投資魅力があり、株価が低いからボロ株だと考えるのは実にかわいそうなほど目が見えていないことです。 例えば、たまたま先週、こんなことがありました。私の友人がマルハを買うというのです。私は「そんなボロ株死んでも買いたくないね」と悪たれを言いましたが、後で四季報を見てホーッと思いました。食品株は今興味がないので、じっくり調べはしませんでしたが、あのマルハでさえそこそこの利益が上がる見込みになっており、PERでは割安にさえなっているのです。うまくいけば、そのうち1株利益20円台だってありえない話ではありません。とすれば、150円台のマルハの買いを反対する理由はないのです。 そごうやゼネコンなど、酸素吸入を受けている会社まで買うのはどうかと思いますが、低位だからと言ってバカにするのは当分やめたほうがよいと痛感してしています。例えば、三菱伸銅(5771)は、タマキンと言って私はバカにしていたのですが、先週、日経の報道により、一挙新高値に買われました。半導体・通信部品関連として市民権をえたようなもので、そうなるとPERの低さがキラキラと光ってきます。 思い込みほど危険なものはないと思います。日本の内需企業はそのほとんどが滅びる、IT産業だけがグングンと伸びる、その見方が「二極化」をつくったのですが、見方が見方でなく、思い込みになって、2月の情報関連株のピークを迎えたものと思われます。 一方、彼らいうところのボロ株は2月にようやく下げ止まり、このごろになって人気の裾野が広がってきたわけですが、ボロ株をバカにする人が多くいる限り、中低位株中心の水準訂正は続くものと考えます。 日経平均ではそれほどでなくとも個別にはリターンのチャンスが大きい今のようなときこそ、我々外務員にとっては最高にありがたい状況だと思います。 <当面の作戦> 当面は利食いは2の次にして、強気の幅を広げたいと考えます。電子部品関連の割安株、市況関連の割安株-例:アイカ工(4206)842円のほか、商社や金融セクターにあるため割安になっている銘柄にも注目します。その意味で、これまでは比較的に消極的な投資に止めていたオリコ(8585)597円や山善(8051)215円にも積極買いを試みたいと考えます。 また高炉の下落で、電炉が逆に面白くなってきたと考え、長期大化け狙いで合同製鉄(5410)99円にも注目します。(私の今期予想1株利益は15円です) さらにもう一つ、ホソカワミクロン(6277)のCB112円も面白いと考えます。CBなのでリスクが限られる一方、2万円台から長期的に下がった株なので、今9月期の決算の具合では、思いがけない上値を目指すことも十分考えられるからです。 |
第13回 機関投資家に逆らう <6/29> 今日(28日)、東京エレクなど主力ハイテクが小幅な動きをするなかで、大証のローム(6963)が1200円高となりました。ただし、これは先週金曜から月曜にかけ、おそらくたいした理由もなく大幅安していたのが戻ったのであり、今日の上げにもたいした意味はないと考えます。さらには、先週末の下げも、主な原因はその週の前半にたいした理由もなく上げ過ぎたことにあると思われます。 ロームは最近は超値がさ株になってしまったので、あまり売買しませんが、以前から大好きな銘柄です。半導体という浮き沈みの激しい業界にあって、安定的に高業績を維持し、かつ素晴らしい成長を示しています。先日、日経新聞の期間別のランキングで、3年前からとか5年前からでは、他の銘柄の値上がり率のほうがずっと上ですが、10年前との比較ではロームが値上がりトップを占めていました。 そのロームがなぜ3万円と3万4千円の間でこのところ毎日のように乱高下する必要があるのでしょうか。アドバンテストなどはほとんど動いていないにもかかわらずです。ロームを悲観するのなら、アドバンテストはもっと悲観していいはずです。ロームを楽観するなら、アドバンテストだって楽観すべきです。 なんでこんなことをムキになって書いているかといえば、実はこの2週間すっかり振り回されてしまったからです。 実は、だいぶ前に33000円で買って利食い損ねた信用建て玉があり、先週戻ったところでとりあえず処分しようということになり、600円高の32900円で損切りしたところ、なんとその日中に33900円まで異彩高で上昇したのです。お客ともども、残念というより、これは強い相場が始まったのかもしれないと思いました。すると次の日は大幅安となり、さらに次の日も1000円近く下げたので、31500円で喜んで買い戻したのです。ところが、買えた途端に下げがきつくなり、その日のうちに30600円まで下げ、次の日(一昨日)には30000円ちょうどまで下げてしまいました。(値段等すべて記憶なので細かな違いはあるかもしれません) 本当だったら、こんな買戻しのあとのこんな経過なら、大失敗の結果になるのがこれまでの経験則です。また反省文をここに書くはめになったはずです。 ところが、なんと今日の大幅高です。嬉しいというより、あきれています。 仕手株やナスダックのアマゾンではあるまいに、なぜこんなに値動きが落ち着かないのか。 私は、どう考えても、普通の神経の人が売り買いした結果ではないと思います。普通の神経なら、買う必要がないときに買い、売る必要がないときに売っているとしか思えません。 犯人は、間違いなく、内外の機関投資家だと思います。 おそらく彼らの神経では、10%位の高安は問題ではないのでしょう。買うと決めたら多少の値動きは無視して買わないとポートフォリオが方針通り出来上がらないし、下がり始めたらストップロスを確実に実行しているのでしょう。きっと巨大資金を長い目で運用するためには、ぜひ必要なことだと彼らは信じているのでしょう。 それをとやかく言う必要はないのかもしれません。でも、私には彼らが本当に合理的な運用をやっているのか疑えてなりません。もちろん、いろいろな機関投資家がいて一概にはいえないにしても、ロームのような本来安定度の高い銘柄を、仕手株みたいに腰を落ち着けずに売買しているとしたら、相場観とか運用の志がどのへんにあるのか、ぜひ聴いてみたいものです。 毎朝、12チャンネルで、投資信託の運用会社のCMが流れます。背の小さな男性が背の高い女性に叱られながら、不器用にダンスを踊っているところに、「あなたがそうしている間にも」というナレーションが流れ、ファンドマネージャーたちが忙しげに働いている光景が映し出されるのです。 このCMは、明らかに個人投資家を蔑む印象を与えると感じるのは、私だけでしょうか。
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第12回 早期発見・早期気分転換 <6/26>
キンセキと三菱伸銅の買いは、やはりタイミング的に失敗でした。いずれ相当に上がると思っているので、いまさらジタバタする気はありませんが、重大な逸機でした。 たとえば、同じ先々週の金曜日に買った京セラは気持ちよく利食えました。それに対し、キンセキは火曜日に1850円の高値をつけたものの、週末は1702円と買値1710円さえ下回る始末。伸銅はほとんどよいところなく、買値390円に対して388円の終わり。つまり、日経平均16200円台で危険を冒して買ったかいがなかったのでした。そして、それは結果論ではなく、あのとき冷静に週足チャートを確かめてさえいれば、多分他の銘柄を買ったはずなので、つくづくに自分を過信したことが悔やまれます。
それは贅沢な悩みだよと思われる方がいらっしゃるといけないので、ついでに書いておきますが、伸銅の言い出しっぺである「当たり屋」は、今回は伸銅は全然買わず、キンセキは私の買った翌日、つまり月曜日に私よりやや安く買い、この前書いた通り次の日の買い気配の1850円ですべて売り切ったのですが、金曜日には今度は私の1週間前の買値と同じ1710円でまた買っていました。
この両銘柄に関する限り、彼と私の判断には月とスッポンの差が生じました。幸いにして、大きな評価損は生じていませんが、今後の戒めにしなければと考えている次第です。
ところで、相場で当たり続けることはもちろん不可能に近いことです。昔から、少なくとも買い方の相場師はほとんどすべて最後は大失敗で終わっていると言われますが、是川銀蔵さんも最後の最後で惜しいことをしました。日セメや住友鉱山の成功は、幸運に恵まれた面もあると思いますが、他の有名相場師(仕手屋さん)のように、わざと経済の合理性に反してカラ売りを誘うマネーゲームであったり、発行会社に高値買取を強要するようなものではないので、私は日本の有名相場師では石井久さんに次いで尊敬しています。
是銀さんの不二家での失敗は、どう見ても当たり続けて自信過剰になったせいではないかと私は思います。それまでの銘柄に比べて、発想に新鮮さがないなと私は思いました。あたかも金と運に任せれば、なんでもできるぞというような驕りを感じました。
当たり続けるのが難しいとすれば、失敗した時どう対処し、再び態勢を整えるかが問題ですが、これがまた非常に難しいことです。ちょうど好例がありますので、ご紹介します。
先週、為替の世界では有名な人の講演会があり、私の会社の人間も何人か有難がって参加しました。その席上、今がドルの絶好の買い場だと力説したそうです。105円から108円のボックスは近々に上放れ、115円を目指す展開になるというものです。ところが、それから1日か2日たったら、なんとご存知の通りの円高傾向が突然に出現してきました。
この皮肉な現象は、偶然のようでいて偶然ではないと思います。その人は実は5年前に円高のピーク80円を当てた人であり、2年前の140円台の円安まで当たり続けました。ところが、円が170円どころか200円以上にもなると言い出してからおかしくなり、多分それからずっとハズレていたのだと思います。
だから、またぜひとも一発当てたくなったのではないでしょうか。曲がり屋さんが当てようと力めば、往々にしてますますハズレるのが経験則です。買っている人が「買いだ」と強気に力めばますます下がるし、逆に「投げるしかない」と弱気に転じれば逆に反騰に転じるという現象はつねに生じます。
相場の世界では、曲がり屋になったら、休むしか打つ手がないようです。我々は生活上、長くは休めないのですから、なるべく曲がりがこじれないよう、早期発見、早期気分転換を心がけるしかないでしょう。
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第11回 蛮勇も時によりけり<6/21>
今日(火曜)、日経平均は続伸し、先週の買いは成功した形となりました。このことは素直にバンザイを叫びたいと思います。お陰で、しばらくは余裕を持って、相場を眺められると思います。 ただし、月曜日になって気がついたのですが、先週末の自分は、冷静なようでいて、実は冷静さを失っていました。端的な例が、三菱伸銅とキンセキの買いです。月曜日のザラ場中に何気なくチャ−トブックを広げて、愕然としたのです。
私は特にケイ線を重んじるほうではありませんが、それでも株を買う場合は、チャ−トで見れば大体どんなところを買おうとしているのかは、頭に思い浮かべています。細かいところは気にしませんので、普段はいちいち見なくても、大体のイメージは合っているのです。
キンセキは、私のイメ−ジでは、1500円どころから2000円まで急伸した後、先週は棒下げで1700円ギリギリまで下げたので、調整十分と考え、1710円で買ったところ終わりは1750円だったので、金曜日の段階では得意満面でした。
ところが、週足チャートで見ると、なんと900円どころから9週間も休みなしに上げ続け、2000円で頭を打った次の週に、上げ幅からすれば割と小幅な陰線を初めて出した形になっていたのです。このチャートを見ると、常識的には、買うにしても、焦らずにじっくり拾いたいという気持ちになります。そして、今の相場では、資金が比較的限定されているのですから、お休み気分の銘柄を焦って買う必要は全然ないわけです。
三菱伸銅についても似たようなことがいえます。実は私は自分は冷静なつもりでしたから、伸銅の450円やキンセキの2000円がついたとき、これは冷静な値段ではないと「冷静」に判断し、それよりもちょっと下の値段で利食い、その後急落したので、それ見たことかとほくそえんでいたのです。
しかし、今冷静になって考えると、ミイラ取りがミイラになったというべきか、それとも目くそ鼻くそを笑うの喩えが当たっているというべきか、いずれにしても冷静なはずの自分が本当は冷静でなく、欲ボケと己惚れにはまりこんでいたことを痛感します。
ちなみに、前に三菱伸銅を買うときにちょっと触れた相部屋の「当たり屋」に、遅まきながら相談すると「私なら買いません」というツレない返事でした。ついでに書けば、彼はキンセキは昨日1690円あたりで買って、今日の寄り付きの1850円で早々と利食ってしまいました。目先は彼のほうが明らかにうまいようです。
彼とのつき合いはまだ短いので、長い目でどうなるのかは分かりませんが、このところまさしく当たっています。手数料は私の2倍から3倍稼ぎます。問題はお客をどのくらい儲けさせているのかですが、今後じっくり観察していかなければと思っています。
株は本当に本当に恐いものだと思います。一つの結果がよければ、不思議なもので次の結果もよく、周りもよく見え、失敗して焦っている人も心理状態も冷静によく読め、万事がうまく行き、自分がアインシュタイン級の株の天才ではないかと思えてきます。
セルフコントロール。株で要求されるのはつきつめると、これに尽きると思います。私が株にやりがいを感じるゆえんです。
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