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第220回 様々な上昇(2)<2/12>

 東証1部の電機にアイコム(6820)という銘柄があります。2年前まで大証2部だったきわめてマイナーな銘柄なので、証券マンでも知らない人が多いくらいです。
 この1か月、ほぼ連日のように小刻みな上昇を続け、1月16日の1160円から今日はとうとう1500円台に乗せてきました。一日の値動きは非常に地味で品薄でかつ上げ下げのうねりがまったくありませんから、短期売買を好む投資家にはまったく不向きであるものの、結果的には1か月足らずで30%以上の値上がりを示しています。
 私の顧客で、10××円の信用建て玉がありますが、これは実は昨年の5月に1700円で買ったものを期日にクロスしたものです。だからというわけではありませんが、いかに安値980円からは5割以上の上昇率になってきたとはいえ、まだ上値余地が十分あると考え、持続しています。
 上値余地の根拠は、1株株主資本2262円、株主資本比率90%の超優良財務内容であること、収益の面でも今期は表面減益だが実質的には増益であり、1株利益140円の実力があること、かつ無線LAN関連製品の採算は底堅く将来性があることです。

 アイコムのことを長々と書いたのは、現在の相場の性質を表わす典型的な例だと思うからです。市場で動いているのは1カイ2ヤリの資金だから、自分も短期売買でいくと考えている人も増えていますが、私は現在の市場にはいろいろな資金が流れ込んでおり、物色対象や選好の方向性を一概に決めつけられないところに特徴があると考えます。
 ある人は配当利回り、ある人は低位思惑株、ある人はベンチャー株、ある人はバリュー株、ある人は超優良株とまさに百花繚乱の趣があると考えます。
 これを書いている途中で、日経平均が問題の8600円を抜いてきました。主力銘柄は動きにくい環境にあることは確かですが、それでも現在の水準は決して高くはないはずなので、それなりの上昇を示すでしょう。
 私個人は、バリューの高い小型株にもっとも魅力を感じ、第一部の主力株、特に優良株の上値はさほど期待できないと思いますが、小型株には不安感を抱く投資家が多いので、とりあえずはその方にとって安心感の高い銘柄でよいから、少しでも持ち株を増やしてもらうことが今は大切なのではないかと考えています。


第219回 合同製鉄<2/7>

 合同製鉄が77円までつけて76円で終わりました。問い合わせが多いので、私の意見を述べさせていただきます。
 まず合同製鉄が復配を果たせば、100円以上の株価が当たり前となると考えていますが、残念ながら、今期復配は相当に難しい状況の方に進んでいます。
 最大の障害は、みずほの株価が15.2万円以上に上昇しない限り、また評価損が発生することです。昨年みずほ株だけで7億円も減損処理して、簿価は5億円強(1749株)に下がっていますが、もし3月末も12万円台なら、3億円強の評価損計上を強いられます。
 また本業の利益も、目先的には原料スクラップ高の先行でやや会社予想を下回る可能性があります。
 もともとの予想が連結1株利益9円台、単独5円ですから、数億円の利益予想未達でも復配は難しくなります。
 ただし、来期については、今期の状態が悪化に向かえば向かうほど、非常に期待できる状況になると考えられます。
 まず、みずほ株については、今期仮に3億円以上の減損処理になれば、残額は2億円となり、来期以降の株価はもはや大きな問題ではなくなります。(減損処理損は現金が流出するわけではないので、合同製鉄のように株主資本がある程度ある企業では当期損益が見かけ上減少し配当が難しくなるだけで、将来に対してはむしろ身軽になります)
 次に、原料高は一時的には収益の圧迫要因となるものの、製品の需給がバランスしている限り、将来的にはむしろ収益の増加要因になりやすいといえます。
 特に主力の棒鋼では、東京鉄鋼との提携で関東地区の需給をかなりコントロールできる状況にあり、価格転嫁は難しくないはずです。それに、鋼材製品の価格上昇は、中高層ビル向けでH形鋼から割安の棒鋼へのシフトを促進することから、棒鋼需要にプラスになる側面もあります。
 したがって、来期の合同製鉄および東京鉄鋼の業績については明るい展望が持てる状況であると考えられ、今期決算を発表する5月以降の株価には大きな期待を抱いています。
 ここにきて国際的な商品市況の上昇ムードを受けて、鉄鋼関連の中低株が相当に水準訂正の動きが出ており、合同製鉄の80円接近もその一環と考えられますが、今回の動きはあくまで水準訂正の域に止まるとすれば、とりあえずは80円台前半があればよいほうかと想定しています。
 もっとも、私は売り惜しむタイプなので、今後は70円台が当たり前になるのではないかと楽観し、信用で買った50円台、60円台の建て玉さえまだほとんど売りを考えていません。


第218回 様々な上げ<2/5>

 日経平均は今週こそ8300円割れ必至と見られたのに、思いがけない粘り腰でまた徳俵で踏みこたえました。
 もっとも、強いのは日経平均ではなく、個別の株価です。個人投資家や我々外務員にとっては願ってもない展開です。
 我々にとっていちばん辛い展開は、指数先物の上げ下げによって現物株が十杷ひとからげに揺れ動く機械的な相場です。例えばちょうど1年前に、当局のなりふり構わないカラ売り規制で日経平均は3月初めにかけて棒上げしたものの、個別物色の機運はまったく高まらず、我々にとっては喜びのない株高でした。その点、先々週の中低株中心の大商いは平均株価の堅調ぶり以上に我々にも喜びを伴う相場現象でしたが、今週の個別株の動きはそれ以上に心沸き立つものを感じさせます。

 心沸き立つ理由は、まず第一にごく一部ですが、将来に対して明るい受け止め方が台頭してきたと見られること。典型が12月新規上場のテンポスバスターズ(2751J)です。前にちょっと買われたと思うとすぐに買い物が引っ込んで大幅安になってしまったと書きましたが、それもつかの間のことで、その後上昇を続け時価総額100億円の一歩手前で反落調整したものの、昨日はとうとう100億円に乗せました。適正マージン率の低い小売業を売上高の2倍以上に買うには当然ながら売上高の飛躍的な成長に強い確信がなければできないことですが、現在の市場にはよい意味で企業の成長可能性への期待が蘇りつつあるのではないかと感じます。デジカメ関連でストップ高した三井松島(今日はペンタックス)、ADSL200万件乗せで大幅続伸したソフトバンクなどについても、企業の将来についてネガティブ一方ではなく、明るい面からも評価しようという動きの一端と考えられます。
 心沸き立つ第二の理由は、個人投資家の活躍が目立つ相場とはいえ、ある偏った傾向の銘柄群が集中的に賑わい、あとはまったく閑散というのではなく、様々な傾向の銘柄群が思い思いにあちらこちらで物色されていることです。
 例えば現在の相場は、ある投資家にとっては新興市場の銘柄で面白いように儲かる相場なのでしょうが、投資家によっては低位株がやはり大儲けできる相場であり、別の投資家にとっては、第一部の超優良株を買って儲かる相場であり、いろいろなタイプの資金が市場に流れ込んでいることを感じさせます。
 私は83万円で買ったミレアが89万円に値上がりして喜んでいます。10日もかけてたった7%の値上がりかと馬鹿にされる方もいらっしゃるかもしれませんが、要は資金の性質です。堅実な銘柄だからこそ買えるという資金があり、堅実な銘柄だから大きな割合で投資できるという側面があります。
 私見では、投資家は2回のバブルを経験して賢くなっており、以前のように個人投資家の資金がある偏った傾向に熱病のように集中(例:80年の誠備仕手株乱舞、87年NTT・東電、その後のウォータフロント、95年阪神大震災建設相場、2000年ネットバブル)することは今後は起こりにくくなってきていると考えます。
 つまり、今後、様々なタイプの銘柄群が、様々なタイプの資金によって物色され、短期売買をまじえながら次第に水準訂正してくるという傾向が続く可能性が高いと考えます。
 私見では、様々な流れの中でも、狙うべきは
 @埋もれている小型成長株(あるいはバリュー割安株)
 Aいわれない不安感で売られている好内容低位株
 B年金の代行返上で売られている優良株(ただし、値幅は小さい)
 と考えています。


第217回 純投資<1/29>

 今週に入って朝の外資系売買動向が売り越しに逆戻り、市場全般も急速に模様眺め気分が強まり、動いているのは低位にしろ小型にしろ多少マニアックな感じの銘柄が目立つようになりました。
 私は先週書きましたように、基本的には本格的な相場転換(3月?)を待つ構えですから、別に一喜一憂する気持は全然ありません。ただ、悪くても日経平均の終値で8300円を守ってほしいなと願っている程度です。(後記、この文章が書きかけのまま午後に入ったら、日経平均が急落し8300円さえ危なくなっていますが、8300円を割ったらいやだなとは思うものの、いまさら弱気に転じるつもりは全然なく、ひたすら本格的な上昇相場を待つのみです)

 外国人の買い越しがいつまで続くか意見が分かれるところです。弱気の人は、買い戻し中心だから量的・時期的に限界があり、3月末以降にまた売ってくるよと言います。その次に多いのが、欧米との比較感で日本株に資金がシフトするという意見で、その典型がヘッジファンドが米国株を売り仕掛けするに際してヘッジで日本株を買う動きが今後も期待されるという見解です。
 いずれの意見も、日本株それ自体には、まだ本格的に投資するほどの魅力がないとするところに本質があります。
 それに対して、いや欧米の機関投資家がいま日本株をじっくりと狙っているんだという意見(純投資説)は少数です。TDKの筆頭株主に外国投資機関が突然踊り出たり、個別的な銘柄に個別の投資家が積極投資を実行する例はあっても、全体としては欧米の年金やら投信の事情から、そうはなばなしい資金流入が続くはずがないというあきらめがコンセンサスになっています。

 外人買いに多くを期待できないとすれば、あと期待できそうなのは個人投資家だけですが、@持ち合い解消売りに対抗できるのか、A配当目的の穏健資金が中心だから上値を買うエネルギーに乏しいのではないかという冷めた見方がやはり大勢です。
 結局のところ、需給関係には大きな期待が持てない、だから持ち合い解消売りが出そうもない銘柄に限定して、短期の人気につき、機敏な売買を繰り返すのが得策だと多くの投資家が思い、現に目下にぎわっている銘柄は多分にその傾向があります。

 そのような中、私は純投資にこだわりたいと思います。やや手前味噌ですが、前回底値をつけるのではないかと指摘したミレアは、今週に入ってむしろ逆行高しており、底打ち確認有望の動きです。極端な悲観の中で、なにもかもが売られる相場だった昨年と違い、今年の相場はたいていの銘柄にある程度の下値感が働くと考えます。割安と確信できる銘柄の下値を買えば報われるはずという通常時のごく普通の投資感覚を私は持ち続けたいと考えます。
 どの銘柄が割安か、上値魅力があるかという視点からは、ハイテクや銀行など値動きの激しい銘柄がきら星のように魅力的に見えます。
 しかし、現時点では上値の魅力は多少犠牲にしても、リスクの小ささな銘柄を第一の評価対象とせざるをえません。
 そのような観点からは、今日の値段では凸版(7911)の830円台はまさに安値ぎりぎりの水準であり、かつ企業内容から安心感が高いと考えています。その他、三菱倉庫、石油株などに純投資すべき状況と考えています。(いずれも、業績の変動リスクが小さく、かつそのわりに故なく売られていると思うのです)


第216回 個別的に対応<1/22>

 先週金曜日の朝に「無気力なムード」と表現しましたが、これは間違っていました。皮肉なことに、その日あたりを境に昨年来の総見送りの状況とはちょっと違う現象が生じてきたからです。一部外人投資家と国内個人に積極的な買い姿勢が顕在化してきたのは疑いありません。
 買われている銘柄が低位株中心なので、日経平均で見る限り横ばいの状態が続いているものの、
局地的には活況相場といってもよい状況が久々に現出してきました。1カイ2ヤリのディーラーにとっては願ってもない状況ですが、問題は、一般の投資家のほとんどは迷うばかりで、なにもできないということです。
 私の顧客の場合でも、まがりなりにも動いているといえるのは2人だけです。あとの顧客はこの間の相場で、相当なフォローの風が吹いているものの、昨年秋以降の建て玉や現物買いを利食うにはやや物足りず、といって買い乗せもしくは他の銘柄を買い増しするほどには相場の先行きに自信が持てないという両すくみの状況となっています。
 例えば、大発会でみずほを11.1万円で買った顧客の場合です。相当に大きなリスクを覚悟で買い、すぐに10万円割れを経験したのですから、顧客も私も13万円程度で利食う気はさらさらなく、といって、これ以上新しいお金でリスクを背負い込む気にもさらさらなれないという状況なのです。おそらく、この顧客から新しい資金が出るとしたら、みずほの20万円台か日経平均の1万円台か、いずれかが実現したときでしょう。
 本来、株が安いときほど資金を増加させるべきで、高くなってから追加するのは愚かな所業なのでしょうが、現在のような異常な状態のときは「もっと普通の状態にならないと、おちおち資金を追加できないよ」という顧客の考え方ももっともだと思われます。
 現時点でどのくらいのリスクを背負うかは顧客に決めてもらうほかないことであり、私にできることは、顧客のそれぞれが負担してもよいと考えるリスクに合わせて、運用方法を提案することです。現在積極的にリスクの負担を増やしてもよいと考えている私の顧客は2人だけですが、他の外務員もおしなべてほぼ同じ状況のようです。

 以下、リスク度別に、現在の私の勧めている銘柄を書きます。
 まず、低リスク志向では、ちょっと前までは三菱重工でしたがやや水準が上がってしまったので、今はミレアH(8766)です。ディフェンシブ性が強く好みの銘柄ではありませんが、中低位株が上昇した今、なおかつ下値不安が小さいという銘柄を探せば、夢がなくなるのはやむをえないと思われます。
 ミレアHは一昨日83.5万円と安値更新し、今日も顔合わせです。東京海上の株価は、バブル崩壊後おおむね1000〜1400円で推移し、安値は92年の840円でした。バブル前では85年に1000円台に乗せたあと、86年に826円の安値があり、東京海上=ミレアと大雑把にみれば、時価は底値になってもおかしくないと考えます。
 株価を支える要因としては、配当利回り1%とPER(17倍だが実質は28倍位)では弱く、1株あたりの株主資本が104万円という事実にもっとも期待が持てます。
 ミレアは損保のトップであり、損保は決して構造不況業種ではなく、特に欠点のないトップ企業が株主資本割れに評価されるのは異常と考えられるからです。(ミレアの資産の簿価は信じてよいと考えます)
 低位株ブームに乗れず安値更新直後であるのに加え、同じ金融セクターの銀行株の上昇は需給関係でむしろマイナスに働くことも考えられることから、目先的な動きでは期待薄ですが、ダウンサイドのリスクが小さい一方、金融システムへの不安感が後退すれば、100万円を回復するのではないかと考えています。
 あと詳しくは書く余裕がなくなりましたが、比較的ローリスクのハイテクで日本特殊陶業(5334)、内需で三菱倉庫(9301)など。ミドルリスクでサッポロ(2501)、東京鉄鋼(5445)など。ハイリスクで日本無線(6751)、ニチメン(8004)などの低位、アライドテレシスなどの小型成長株をお勧めしています。


第215回 日本株回復への道のり<1/17>

 新年の相場は、今週に入って底堅いとはいえ、上値は重く、無気力なムードが強く漂っています。
 配当利回りは魅力的だ、長い目では底値圏だろうとたいていの人が言います。しかし、その一方で、ただでさえ世界経済に停滞感が強まっている中、日本経済はとりわけ成長の期待が小さく、底割れの不安さえあるのだから、当分日本の株が上がるはずがない、とそれ以上に多くの人が考えています。
 多くの人の意見が一致することは本来危険です。けれども、多くの人が買いたいと思えば相場は騰がり続け、簡単には反転しないように、多くの人が上にも下にも行きにくいと考えている以上、簡単には相場は動きません。現在の抜き差しならない膠着状況が終わり、明暗いずれかの新局面が始まるためには、よほどの新材料か、それとも日柄かのいずれかが必要ですが、悲劇的なことに、少なくともアップサイドに対しては、国内から抜本的な好材料が出現することは非常に考えにくく、頼りは日柄だけです。

 日柄的には多少の期待があります。
 過去の底練りは3〜6か月だったと経験的に思います(詳しく検証したわけではありません)。たとえば、98年10月の底からは、翌年1月二番底、3月初め急騰という日柄を鮮明に記憶しています。今回も、昨年10月が底だったとすれば、現在はそろそろ最悪期を脱出しかかっているタイミングと考えられます。
 ただし、99年の場合でさえ、躍動感が出るのは3月で、それまでは底打ち後も、店頭の成長株など一部の銘柄を除けば重苦しい展開が続きました。今回も仮に大底打ちを果たしているとしても、まだ当分は日々不安で心もとない状況が続くことは必至と思われます。 
 私は大雑把に、1月中に底打ち確認(つまり昨年来の日経平均の下値レベルを下回ると考える人がほとんどいなくなる)、2月は平均株価での上値は限定的ながら、個別株の一部で躍動感が蘇りかけ、3月には平均株価である程度の活況(1万円回復)が期待できるのではないかと考えています。

 私たちが本当に待望するのは、日経平均でいえば1万5千円以上をつけて、1万円以下であったことが嘘のように思える日が来ることです。現段階では気が遠くなるほど先の話としか思えませんが、来てみれば案外に早いのではないかとも愚考します。


第214回 万里の道<12/27>

 来年の相場について、今年ほど期待感の乏しい年末も珍しいでしょう。その意味では、13年前の熱気ムンムンの年末と好対照であり、あるいはという期待を逆に抱かせます。
 しかし、期待感が乏しいということは、やはり株にとって悪材料です。熱気ムンムンが一転崩壊に結びついたように、極度の不安感なら急反発に結びつくでしょうが、期待の乏しい市場が急速に立ち直ることは難しく、悪くすればジリ貧の長期化です。
 「株の死」がいわれた米国の1970年代から80年代初頭までのボックス相場を彷彿します。当時のNYダウは500ドルから1000ドルを往来したのですが、今後の日経平均の上値は1万円、もしくはせいぜい1万1千円だという人が多く、もしそうなら、下値をよほど切り下げない限り、ボックス相場どころか、単なる膠着相場ということになってしまいます。

 上に書いたような相場観が一般化した結果、株はやるなら短期売買に徹すべきだという人が増加しています。典型がネットによるデイトレーダーで、最近の市場シェアの大きさは馬鹿になりません。一般の投資家も、「上がったら、すぐ売るから教えて」という人が多くなりました。「どのくらいですか?」と訊くと、さすがに10%位は欲しいということで、しかも10%上がったから必ず売るというものでもなく、たいていの場合、短期売買は単なる願望で、実質的には中期投資であるものの、それにしても、株は上がるにしても小幅で、持ち続けることには危険が伴うという意識が多くの投資家に沁みこんでいます。
 それに対し賛成か反対かはさておき、私自身は株の短期売買にはむいてないとはっきりと感じます。たまに狙うならともかく、短期売買を主業にする意思はまったくありません。私の狙うのは、あくまで大幅な投資成果、すなわち大幅なインカムゲインの享受もしくは大幅な水準訂正高によるキャピタルゲインの獲得です。

 現在、日本の代表的な株式の配当利回りは2%台が普通になっています。例えば三菱重工は6円配当予想に対し280円位ですから、利回りは2.1%です。私の投資感覚ではこのインカム自体には興味が持てません。そして、将来の増配を考慮しても、せいぜい10円で3.6%が期待できる程度ですから、インカム狙いとしては期待が小さすぎます。
 ただし、将来、必ず株式の配当利回りと国債利回りが再逆転するときが来るはずです。国債の利回りが低すぎるのが現在の異常現象の主因であり、株の配当利回りはむしろいまが正常とも思われますが、それでも三菱重工のような一流銘柄の利回りは1.5%位でよいと私は思います。利回りが1.5%に低下すれば、現在の配当でも妥当価格は400円です。配当が近い将来に7.5円に増配される可能性大と見れば、妥当価格は500円になります。
 280円の時価に対して、これらの目標価格は2倍以下ですが、三菱重工が規模・流動性ともに高く、保有する安心感が非常に高いことを考えれば、小型株に比べ上値魅力が低いことはやむをえないと考えます。

 逆にいえば、現在、三菱重工のような超大型株でさえ、50%高を簡単に想定できる状況ですから、日本株の潜在的な上値魅力は相当に高いといえます。
 日本株が、平均株価で2倍になるような日はいつ来るか分かりません。ただし、いつの日か三菱重工の利回りは1.5%に低下し、日経平均は1万7千円位に上昇するはずです。私は、千里どころか万里の道も一歩からという心境で、その日に備えた営業を続けていきたいと決意しております。


第213回 日経平均9連敗のあと<12/17>

 日経平均の9日連続下げにはびっくりしました。
 前回述べたように一喜一憂しても仕方がないと達観していますので、いまさらジタバタするつもりはまったくありませんが、それにしても市場の買いマインドの低さには驚かされます。個人の源泉分離売りが出るのはやむをえないとして、私自身も含めて、一般の個人投資家も機関投資家もいまほど買い気を消失させているときは珍しいのではないでしょうか。

 転機が訪れるとすれば、メガバンクの去就について新材料が出るときと考えていましたが、今朝起きたら、銀行の減資を考えないという金融庁の方針が大きく報じられ、かつNY相場の久々の大幅高です。やっぱり9連敗目は買いだったかと、ちょっと残念でもあり、それ以上にほっとしました。
 公的資金注入に際して、減資は考えないという政府方針は前々から伝えられていました。にもかかわらず、低位メガバンク2行の株価は、2分の1減資を織り込んだ株価(つまり10万円近辺)になっており、その株価が長く続くうちに、だんだん減資が当たり前のように思えてきて、減資どころか紙くずになることさえ怖れ始めていたというのが昨日までの相場状況でしょう。今日の新聞報道は、実はなんら新事実を伝えるものではないにもかかわらず、市場に安心感を与え、行き過ぎた悲観を訂正するという点で非常に意味があったと考えます。
(つきつめれば、減資の有無はそれ自体ではまったく株の経済的な価値を変化させるものでなく、多分に気分的な問題に過ぎません。むしろ、公的資金にしろ銀行の自力調達にしろ、新株の発行による株式の希薄化のほうが実質的な問題ですが、現在の株価水準は希薄化がどうのこうの以前の、つまり収益価値を云々する以前のレベルと見られます)

 メガバンクへの安心感が戻ったことに加え、米国株に久々の買いマインドが見られたことで、今日の相場条件は、鬼に金棒ともいえる状態となりましたが、やはり今日の相場は気迷い感が強く漂っています。
 仕方がありません。投資家のマインドは簡単に回復するはずもありません。今日上げないからといって、いまさらがっかりする必要もないでしょう。
 私自身は、みずほの11万円台を久々に複数の顧客で買ってもらいました。メガバンクの自己資本比率維持がどうなるかは、1月後半にも見えてくるはずです。今日のところは打診買いです。
 昨日、四季報が出て、ぱらぱらと見ると、喉から手が出るような魅力的な銘柄がたくさんありそうでしたが、どうせ・・・・と考えて、すぐ閉じてしまいました。現在は、小型銘柄は特にどうせ手が出ないのです。
 きっと、現在の小型株市場は宝の山なのだと思います。一例を挙げれば、先週の10日にジャスダックに新規公開したテンポスバスターズ(2751)は、業態がユニークで成長期待があり、かつ財務的な安心感もありそうなので魅力を感じます。
 しかし、そのテンポスでさえ、34万円から47.5万円まで棒上げし、やはり売出価格が安すぎたのでこの銘柄だけは別格の動きを続けるのかと思っていたら、40万円前後まで急反落し見送り商状となり、現在の買い手の層の薄さをまざまざと感じました。

 ところで、新税制は土壇場でまずまずのものになりました。1年超保有の税率優遇が撤廃されたことは歓迎すべきことだと思います。原則10%で優遇なしという税制に改まったことで、損失の繰延以外には自分で申告するメリットがなくなり、特定口座の存在意義が高まったことが好材料です。
 これまでの税制でも、源泉分離の場合、信用の利食いをわざわざ現引きしてからすると得になるなど煩瑣な面がありましたから、私自身は新税制のほうがよほどいいと考えます。
 源泉分離でないと困るという人は年内に売るわけですが、その売りもあとわずか。年明けは徐々に新税制のメリットが認識されてくるのではないでしょうか。 

 それやこれや、今回はまとまりのないことを書きましたが、来年に向けて暗い材料ばかりではなく、ちょっと見方を変えれば明るい材料も準備されつつあると私は思うのです。


第212回 脱一喜一憂<12/10>

 日経平均は今日とうとう8700円の攻防に追い込まれてしまいました。
 9100円突破が通常は強気転換のシグナルなら、8700円割れは通常は弱気転換のシグナルと考えるべきでしょう。
 ですが、私は気にしないことにしました。前回申し上げた通り、今回の大底形成は紆余曲折なしにすっきりとV字型反騰が実現するはずがありません。10、11月の底が真の底であったとしても、そうでなかったとしても、当面は闇夜のような相場展開を強いられざるをえません。ただし、私は、日本株の前途を厚く覆っている暗雲に裂け目が生じ、歴史が動く前夜にあることだけは疑いません。
 やや長い目でみれば、現在山積している日本株の悪材料は、そのほとんどが第二次大戦後の日本経済の躍進の裏返しとして、バブル崩壊後に一挙に噴出してきたものです。
 日本経済の悪材料は、主には次の3つだと思います。
 @不良債権(土地神話崩壊)
 A持ち合い解消売り
 B社会的非効率(日本型経営、親方日の丸主義、官僚主義)
 銀行は、これらのことごとくに直接にからんでいるので、現在袋叩きに合っていますが、反省すべきなのが銀行だけでないことは明らかです。証券会社もひどいものでしたが、もっとも反省すべきは官僚だと思います。
 役所の非効率がいったいいつになったら改善されるのか、それを思うと暗澹たる気持になってしまいます。しかし、@とAは、前途多難とはいえ時間的には先が見えてきたことは確かです。@は来年春がまさに正念場で、Aの期限は再来年9月です。Bも民間企業だけに限れば、相当に変革が進んでいます。
 株価は先見します。おそらく遠くない先に、新しい日本経済の姿を織り込む動きを見せるはずだと私は考えます。
 その前夜にいると考えれば、目先の動きは達観できます。蛤御門で長州兵が壊滅しようが、池田屋で志士が殺されようが、歴史は動きました。これから来る日本株市場の新しい姿は、それほどドラマティックなものではないかもしれませんが、少なくとも、気が滅入ることばかりではないはずです。
 これを書いているうちに、日経平均は8800円台を回復してきました。できれば、このまま堅調に転じてほしいという気持はやまやまですが、とりあえず、一喜一憂せずに相場の陽転を待ちたいと考えます。


第211回 山が動く<12/3>

 そこに山があって行く手を完全にはばんでいるとします。ダメだ、引返そうと考えるのが私自身も含めた普通の人間心理です。
 しかし、そう考えない2通りのタイプの人がいます。1つは、念ずれば山も動くと考える神がかり的な人たちです。もう1つは、雪のアルプスだって越えようと思えば越えられると果敢にチャレンジしたり、超えるのが無理だと見れば山のどてっぱらにトンネルを掘ってでも前に進もうとする人たちです。
 おそらく経済や政治の新しい動きは、前者の神ががり的な人たちによってではなく、後者のチャレンジャーたちの努力によって切り開かれます。
 そして、私たち普通の投資家に求められていることは、一見まぎらわしい前者と後者をはっきり区別し、後者の成功確率が高まったら、速やかにその動きにつくことです。

 この2年半、特にこの半年の日本株の動きはまことに無残なもので、投資家のほとんどは行く手をはばむ山に心をうちのめされました。
 株を止めた人、去って行った外務員は数知れません(給料の保証されている証券会社社員の離職率はそれほどでもなかったようです)。株を続けているにしても、気持はずたずたで、できればこんなものは忘れたいと考えた投資家も含めれば、ほとんどの投資家や証券関係者がチャレンジ精神を失うに至ったといってよいでしょう。
 私自身ギブアップ同然でした。証券市場の新しい未来を築くんだという志を本音で抱きながらも、できるなら、当分は何も考えず、何もしないでいたいという負け犬根性にどっぷりとひたっていました。
 しかし、先週以来の日本株の動きは、明らかに新しい動きです。絶望的なほどの壁と見られた日経平均9100円の壁は、あっけないほど簡単に破れました。あまりにも簡単に破れたため、いまになっても今度は9300円台や9500円台が大きな壁で、どうせすぐ8000円台に逆戻りするよと心の底で思っている人がほとんどです。

 だから、まだ日本株が大底をつけたと断言するわけにはいかず、これからも紆余曲折は当然ありましょうが、山が動くときはそのようなものでしょう。
 例えば明治維新、大政奉還しても、薩長軍が箱根の山を越えても、まだ徳川の世が続くと思い込んでいた人が多いのですから、長州征伐に失敗したあたりで、これは幕府が倒れて新しい時代が来るぞと考えた人はまだ少数でしょう。ましてや、洋服と靴の時代が来ると考えたのはごく少数でしょう。
 現在の日本株は、まさに維新前夜にあると考えます。今後の紆余曲折は当然あるとはいえ、いずれにしても日本株が大底圏にあることは確実ですから、前夜という表現は間違っていないと思われます。

 1つの問題は、多くの人が日本株が底打ちしたと考えて投資行動する、つまり普通の状態に戻った日本株市場がどのようなものになるかです。
 日本経済はどうせたいしたことないから上値もしれているよと考えることもできますし、いや日本経済は意外な回復を示すのではないかと考えることもできます。私見では、先行きのことは人それぞれのイメージで判断するしかないと考えます。すなわち、日本の平均株価の上値がどのくらいになるかは、現段階では議論してもあまり意味がないと考えます。
 それよりも緊急の問題は、今回の反騰がどのくらいの規模で、どのような投資行動が適切かということです。
 現実的に考えた場合、当面の反騰のバネは日本の将来像ではなく、単なるリバウンドです。反騰の初期のリバウンドは通常は主力株に人気が偏るのが経験則であり、この間の下げがきつかったハイテク大型株はそれに該当します。
 したがって、当面は、日立、NECなどに強気の中心を置き、銀行に代表される国内系銘柄や本来魅力的な小型株は余裕がある場合に考えたいと思っています。

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