第280回 日々の浮き沈み(続)<4/1> いまの相場の特徴として昨日書いたことを再掲します。 1.NY株が上がったからといって、日本株が上がる必然性はほとんどない。 2.平均株価の上げ下げが必ずしも市場のセンチメントを表わすわけではない。 3.三菱東京に限らず主力株の上値は限定されており、激しい上昇が続くはずがなく、大きな幅の上昇のあとには反落幅もかなり大きくなる。 では2について―― 去年のいま、つまり3月末の日経平均は7972円でした。当時は8000円を割れたのだから、5000円台もありうるという悲観論も珍しくありませんでした。 このような状況においては、参加者のほとんどすべてが、日経平均の上げ下げをかたずを呑んで見守らざるをえません。平均株価のトレンドが下向きで、かつ急落不安もあるという状況では、どんなに気にいった銘柄でも売りに押される可能性が強く、投資家は買いの手を引っ込めます。しかし、平均株価がプラスに転じるや、目をつけていた銘柄を買い逃すことを怖れる投資家はただちに買いを入れるので、平均株価の上昇が個別銘柄の上昇につながり、それがまた平均株価を押し上げるという形で、市場のセンチメントが大きく変化していきます。 しかし、現在の日本株の状況では、平均株価のトレンドが上か下かをかたずを呑んで見守り、刻々の上げ下げに神経質になっているのは、指数先物をやっている人くらいです。多くの人は、日本株が急落する可能性はきわめて低いだろうという見きわめを持っている一方、大暴騰するはずもないとたかをくくっている傾向があります。だから、よほど気が小さい人を除けば、日経平均がちょっと下げてもやはり下げたかと思い、日経平均が上げてもやはり上げたかと思う程度で、慌てて売買注文を出したり引っ込めたりはしないはずです。 今日の前場も、日経平均は途中で上下にぶれてたものの、終わってみれば10円高。昨日と同じで、先物で小幅な値ざやで売買をする人を除けば、日経平均の高安なんて気にするだけ損という結果です。 次に3について―― 今日の前場で、ソフトバンクが310円高していますが、これとヤフーなど少数の例外を除けば、時価総額の大きな銘柄、すなわちいわゆる主力株が大きな率で値動きすることは今年に入ってきわめて稀です。 例えば、新光証券が1か月で5割高しても、野村は2割も上がりません。東京製鉄とJFE、川崎汽船や商船三井と郵船の関係もほぼ同じです。時価総額は大きいものの、三井住友、UFJ、みずほと三菱東京との関係も基本的に同じです。 理由ははっきりしています。 年金の代行返上売りという要因ももちろんありますが、本質的には株価形成上の問題として次のように考えるべきだと思います。 まず第一に、現在、2で述べたように、市場全体のセンチメントはきわめて安定しています。加えて、時価総額の大きなトップ企業の場合、業績も安定しており、株価がぶれる要素が小さいということがいえます。 第二に、経済の先行きに対する投資家の見方は表面的には依然慎重であるものの、心理的には、悲観から楽観に大きく反転しつつあります。悲観が勝る状況下では、安定感が尊重され、トップ企業の株価が押し上げられる一方、不安定な企業の株価は、大きなプレミアムをつけて割り引かれ、極端に押し下げられます。昨年来起こっている現象は、株の債券に対する復権であり、あまりにも大きなリスクプレミアムの修正運動であるともいえ、トップ企業が蚊帳の外に置かれた形になるのはやむをえないといえます。 第三に、96年頃から明確化した機関投資家主導の株価形成は、当初は「二極化」という形で従来のいびつで不合理性に満ち満ちた日本的な株価形成を是正するものでしたが、99年夏頃を境に、だれもかれもが合理的な価値判断をせずに、投資にはトップ企業がよいと決めてかかる衆愚的な「二極化」信仰となり始め、大きな流れとしてその修正運動が始まる時期にさしかかっていたと考えられます。 例えば三菱東京について、私は次のように考えます。 メガバンクの株価は5月末頃にかけてまだ上値はかなりあると想定するものの、目先的な投資効率は低いという判断をしています。他の3行については、すでに信用建て玉は全部はずしており、現物もかなり売却したものの、三菱東京についてはほとんど売っていません。そのわけは、よくも悪くも安定感があることで、銀行を売って他の銘柄に注力する際に、読みがはずれて銀行の大幅上昇が続いた場合でも三菱東京を残しておけば多少なりとヘッジになるという考えからです。三菱東京の巡航的な1株利益は6万円くらいと考えますので、PER20倍相当の120万円くらいはあっておかしくないと考えます。 ここにきて、なぜこんな会社がストップ高を続けるのかと首をかしげたくなる動きも出ていますが、日本の株式市場が、かつて大手証券や特定の仕手筋の思惑で動いていた頃のような不合理な株価形成に戻ることは決してないと思います。 合理性を尊重するムードが市場に浸透しているからこそ、日経平均の動きは当面ちまちましたものにならざるをえず、日経平均の動きがちまちましている限り、今回の相場は長続きするはずです。 多分、日本経済の先行きに対する投資家のマインドが抜本的に好転し、主力株の将来の業績、ひいては株価の上値に対する見方が変化したとき、日経平均は大幅に上昇し、反落し、次の相場(業績相場)に向けての調整期に入るものと考えています。 以上、いろいろ書きましたが、いわんとするところは、当面は自分の確固たる方針のもとに、投資価値に比べて非常に安くて魅力的と思える株を買い、日々の株価の動きに惑わされず、簡単には売らないで、信念を貫くべき相場状況だと考える次第です。日経平均の上値とかかわりなく、天井の高い銘柄は小型株を中心にまだ少なからず存在すると信じます。 |
第279回 日々の浮き沈み<3/31> 先週、三菱東京が5万7千高で100万円台に乗せ、びっくりしたことを書きましたが、昨日はたまたまその三菱東京があっという間に5万円安になり、不安になった顧客の一人から、何かあったのかと問い合わせの電話がありました。 昨日の朝のうちは、NY高を受けて、日経平均が大幅高して1万2千円にいよいよ肉薄確実という雰囲気が充満していたのです。それが途中からマイナスに転じて、ベテラン営業員の中にさえ何か悪材料が出たのではないかと慌てる人もいましたし、なんでアメリカが高いのに上がらないんだと憤慨する人もいました。 えらそぶるようで気が引けますが、これらの反応をする人たちは、いまの日本株の相場の特徴をまったく分かっていないとしか思えません。 いまの相場の特徴を私は次のように考えます。 1.NY株が上がったからといって、日本株が上がる必然性はほとんどない。 2.平均株価の上げ下げが必ずしも市場のセンチメントを表わすわけではない。 3.三菱東京に限らず主力株の上値は限定されており、激しい上昇が続くはずがなく、大きな幅の上昇のあとには反落幅もかなり大きくなる。 まず1について―― 昨日、日経平均の大幅高を期待した人の考え方はこうです。NYが上がったからハイテクが上がる、ハイテクが上がれば日経平均が上がり、日経平均が上がれば銀行など内需株も上がる。しかし、現在の米国市場ではかつてのように、半導体の先行きの需給に対するセンチメントを中心にしてハイテク株が日々大きく値動きし、それが市場全体のセンチメントに影響するという構造ではなくなっています。かつては日々5%以上も上下していた半導体関連株の値動きは、ここにきてナスダック指数2000ポイント回復の過程でもきわめて緩慢でした。このような状況では、米国のハイテクがたまたま1%強上昇したからといって、日本のハイテク株が同じ方向に動かなければならないという必然性はまったくありません。 加えて、外人買いの現在の傾向にも留意すべきです。今年の外人買いは欧州投資家を中心に、米国市場の比重を落とし、日本市場に少しずつ資金シフトしつつある傾向が歴然としています。すなわち、国際分散の中での日本株への配分割合の増加を投資戦略としている国際的な投資家にとって、NYの険悪な下げは、日本株にとっても売り要因であるものの、小幅な下げは売り要因でなく日本株への投資を促進し、逆にNYの上昇は場合によっては日本株への投資の抑制要因として働く可能性があることに注意すべきでしょう。現に、伝えられている寄り付き段階での外資系動向は、NY高にもかかわらず昨日も今日も売り越しでした。 次に第2について―― ・・・・・・残念ながら、時間がなくなりました。今日は私の注目株であるニチメン日商、日軽金、中山鋼、日本電波、コーナン、ソフトバンクなどがいずれも高く、あわよくば買い増しを狙って忙しい日でした。 以下は、明日書き継ぐ予定です。 |
第278回 顧客との様々<3/24> 調整必至ということで臨んだ今週ですが、それでも昨日のお昼頃は日経平均の1万1千円割れさえ間近に迫り、不安感にさいなまれました。私の頼みの顧客の一人であるAさんからも、ふだんは愚痴を言わない人なのに、やっぱり売っとけばよかったとやや後悔めいた言葉が出ました。 Aさんとの電話が終わった数分後です。指数先物に強い動きが出て、瞬く間に戻しに転じました。3万円以上下げていた三菱東京が、終わってみれば高値更新など、いまさらながら日本株の基調の強さを思い知らされました。 ・・・・・・ここまで書いたところで、今日の相場が始まり、いつもだったら、9時半には本を読むほど暇になるのに、忙しいまま前場が終わってしまいました。いま近くで買ってきた弁当を食べ終わり、再び書き始めた次第です。 朝に書いた部分で、三菱東京の高値更新にびっくりしていますが、前場終値はなんと103万円の5万7千円高。先週まで、他のメガバンクに比べて極端に値上がり率が悪かったのが嘘のようです。 実は、先ほど書いたAさんと昨日の場が終わったところで再び話したのですが、そのときに、Aさんがまだほんの少し弱気の気分を引きずっていたこともあり、昨日急騰した東京製鐵の売りと合わせて、三菱東京の信用分の売り注文を99万円の指値でいったんは受注したのです。しかし、よく考えると、三菱東京の現物は株数が少なく、この際もう少し増やしていてもいいのではないかと思い直して、Aさんに再び電話して、全部売らずに、一部を現引しないかと提案しました。すると、Aさんは中途半端がきらいな方なので、それならいっそ全部現引しようと言い出しました。私が「とてもそんな現金の余りはありません」というと、では様子を見ようということになり、売り注文は取り消しになりました。 前場段階では売るはずだった値段より4万円上昇しています。もちろん、本当の結果はわらじを脱ぐまで分かりませんが、もし99万円で売っていたら、いっときの心理で初志が腰砕けになり、弱気な行動に走ってしまったことを顧客ともども悔やまれてならなかっただろうと思います。 Aさんとは長いつき合いです。バブルの前半までは預かり資産数百万円でしたが、NTT株が上場してくる頃、マンションを売って賃貸に移ったということで、元本が5000万円強に急増しました。この元本が、バブルがはじけて半年たった90年夏になお好調で1億2000万円ほどに増加したのですが、平均株価が下がっているので信用取引でよけい儲けようと考えたのが最初のつまづきで、あっという間に数千万円の損を出し、92年には元本割れまで落ち込みました。その後は信用売りと買いを少額ずつ活用し、97年に再び1億円を超えました。 一昨年の9月、テロ事件で日経平均1万円割れになったころ、私はこの欄に頼みの顧客の資産が20分の1以下になったと書きましたが、あれはAさんのことでした。 私が歩合に転向したのは、98年10月の平均株価安値の直後です。このときAさんの資産は約6千万円。それまでの約10年間、Aさんの資産は元本金額前後とその2倍水準を往ったり来たりしていたことになります。 いま思うと、私の歩合転向に合わせ注文を多く出してくれた結果かもしれませんが、この頃を境に信用取引の比率がだんだん増加し、資産評価額の振幅が激しくなりました。 すなわち、98年10月の6000万円が、2000年夏には2億8000万円に達したのもつかの間、2001年末には1000万円を前後する水準まで急落しました。しかも昨年は地獄からの生還という形で急反発、10月には1億円に達したものの、その瞬間に暗転、12月には5000万円近くまで急落、昨日現在が9000万円強です。 (積極型の人にとってはいまだに昨年10月がピークという例は珍しくありません) 顧客の資産状況についてあまり具体的なことは書くべきではありませんが、何分の1とか何倍とかいう表現では、実感が出ないのであえて大雑把な金額を書き入れました。申し上げたいことは、我々の仕事がいかに顧客の資産の増減に激しく影響するかということです。特にAさんのような積極運用の方にとって、私の推薦する銘柄や相場観はいうまでもなく、ちょっとした発言のニュアンスや、場合によっては電話するタイミングの些細な違いで、運用成績に天と地の開きが生じます。 Aさんに限らず、手数料の多寡を超えて、なんらかの形で私に証券マンとして期待してくださる顧客たちに、なんとかしてよい結果を残したい、そのためにもこれから数ヶ月は去年の数か月につづく重要な日々になると自分に言い聞かせています。 |
第277回 どう選ぶか?<3/17> 会社四季報がまた出ました。日経会社情報も同じ日に出ますが、業績予想は基本的に公表済みの発行会社予想なので意外性に欠けます。それに対して、四季報は独自の取材努力が十分に反映されており、かつ個人投資家への影響力も大きいので、毎回自分の勧めている銘柄のページを開くときは少しどきどきします。 今回は、全体としては大きなサプライズがありませんでしたが、ニチメン日商の記事の表題が「好伸続く」となっているのにはちょっとびっくりしました。しかも、「特損も一巡」し、「合併会計に伴う損益計上の自己資本への影響は限定的な公算」とあります。もしこの見方が正しいのなら、株価には大変な好材料です。ちなみに、日経会社情報は、来期の業績では1株利益241円と首をかしげたくなる(私でさえ現時点の来期予想としては過大に過ぎると思います)ほどの高い予想になっている一方で、日商岩井の含み損が表面化し特損が出る恐れありと記し、どちつかずの判断になっています。 含み損失問題がはたしてどういう推移をたどるか、依然予断は許しませんが、もともとハイリスクを覚悟して買うべき銘柄であり、腹をくくって経過を見守るほかないと考えます。 このところ書いているコーナン商事については、四季報の今期(来年2月期)予想は1株利益236円で、この会社の利益成長のトレンドからはまず常識的な増益予想となっています。このところで、さすがに水準訂正し、1900円台まで上昇していますが、転換社債による希薄化を考慮に入れても1株利益が200円強あることになり、実質PERでも10倍以下です。自己資本比率の低さが低評価の1つの要因になっていると思われますが、成長期の企業としては不思議ではない財務内容であり、同業のコメリ、ホーマック、ケーヨーに比べても割安感が強いと私は考えます。 同社はホームセンターの比較的後発で、数年前までは6番手くらいでしたが、不振のケーユーはもとより、成長性で定評のあるコメリを上回る伸びで、前期段階で2位(1位は非上場)に躍進しているようです。去年から関東地区への出店を開始しており、投資家への知名度もこれから高まると予想されます。 日軽金については、ちょっとがっかりしました。来期業績に大きな期待を抱いていることは前に述べましたが、四季報によれば、来期は経常利益で小幅続伸、1株利益では16円に低下予想です。 市況産業株の利益は出たとこ勝負の面が強く、予想はきわめて困難ですが、特に今年については、@商品市況と景気の好調がどのくらい続くか、A需給関係から原料高をどのくらい製品高に転化できるかどうかで、大きく考え方が変わります。 国際商品価格の高騰による日本企業の業績への影響は、一説には3兆円にのぼるともいわれています。それを国内景気の好転による売上高増加が補うと考えるのが一般的な考え方ですが、需給関係から見た場合、最終需要者への転化は進みにくいものの、素材メーカーやパーツメーカーのセットメーカーへの価格転嫁は、鉄鋼を筆頭にスムーズに進む可能性が高いといわれています。 私はこのような考え方を受け入れ、素材メーカーの日軽金や中山鋼、加えて電子部品の日本電波工などの業績はきわめて明るいものになると考えています。 だから、日軽金では四季報の数字にちょっとがっかりしましたものの、大風呂敷を撤回するには至っていません。 今回は、四季報発売にからめて、自分なりの銘柄への考え方の一端を述べさせていただきました。午後に入り、日経平均は1万1400円台を固めつつあり、日本株の一段高に向けて非常に順調な展開と考えています。 |
第276回 何を買うか?<3/10> 相場観については、もはや考えるべきは考えたと思い、あとはどう行動するかの段階だと自分自身では勝手に納得しています。 株の運用にロマンチックな思い入れは余計かもしれませんが、職業として考えた場合、日本の経済と株価が歴史的な転回を遂げつつあるとすれば、それに立ち会っている現在の日々はかけがえのないものだという思いに迫られます。 単に上がりそうな銘柄を捜すのではなく、この日々、この銘柄たちに賭けて悔いなしといえるような銘柄選び、というよりポートフォリオのラインナップを組みたいと考える次第です。 今朝のTV(12chモーニングサテライト)で、某証券の人がTOPIXコア30を勧めていました。外務員の中にもETFやその他の銘柄の詰め合わせ商品を勧めて商売になっている人がいますが、詰め合わせ商品は我々の業態には向きません。喩えていうなら、もし街の豆腐屋が、自分のところで毎朝作った豆腐ではなく、工場で大量生産された出来合いの豆腐を売っていたら、スーパーに勝てるはずがありません。我々も、顧客それぞれの希望に応じた手作りの銘柄提案という方向に活路を見出すほかないと思っています。(日々の相場の上げ下げを予測できるという自信がある人なら、商品は出来合いでもかまわず、タイミングの提案だけで存在意義を発揮できるのでしょうが、我々の多くは無理です) 銘柄を勧めるといっても、我々の場合、単品の提案をすればよいというわけではありません。一投資家の立場なら、ふとした思いつきで適当な株数を投資して、結果をわくわくしながら待てばよいし、悪い結果になっても株を止めてしまうことも可能ですが、我々はどのような結果であろうと、顧客の信頼をつなぎ止めて、手数料をもらい続ける必要があります。そのため、我々は銘柄を分散して勧めざるをえず、どのような形で銘柄を組み合わせるかに腕のふるいどころがあります。 いちばん悪い形は、次々と人気銘柄を勧め、上がったものから回転し、だんだん失敗銘柄ばかりが残るという行き当たりばったり型です。また、社員セールスの中には、1人の顧客に思いきり同じ銘柄をはめ込み、返す刀で別の顧客に違う銘柄を勧める、極端な場合には同じ銘柄のカラ売りを勧めるという形で、「リスクを分散」する行動パターンをとっている人が現実に存在しますが、我々外務員ではありえません。 もし仮に、あるお客様が新規に株式運用を始める場合、私のお勧めの基本的なパターンは、以下のようになるでしょう。 まず、顧客の財産のうち運用に振り向ける資金額を決めてもらいます。最初たいていの方は、もう少し積極的になってほしいと思える金額しか出しませんが、とまれ出発時の運用元本が決まり、あとは成果次第で余裕があれば増額ということになります。 次に、相場観を話し合い、もし私の相場観に大きな異論がない場合、いまでしたら全額ただちに株式買いとし、かつ銘柄については、先週も述べましたが、@金融・商社など内需関連、A商品市況関連、B日本が圧倒的なシェアを持つハイテク製品関連、C小型ニッチ企業を顧客の選好に応じて適宜配分することとします。 ただいまの瞬間なら、@のグループでは、もはや銀行は勧めにくく、丸紅なども勧めづらいので、財務上の不安を了解していただくことを前提にニチメン日商でほぼ決まりです。この銘柄に大きなパフォーマンスを期待していることから、運用額に対する比重が高くなることはいうまでもありません。先週はコーナン商事を例示しましたが、小粒な銘柄なのでグループの代表選手という意味ではありません。それに、内需関連の中でも消費関連株の本格的な水準訂正はまだ先のような気がします。 Aのグループでは、鉄鋼の中山鋼とアルミの日軽金が私のメインで、目下は価格水準から日軽金に注力中です。両銘柄のバブル崩壊後の株価の足取りは酷似しており、92年以降97年に二極化が鮮明化するまで、ともに500円前後を下値(日経平均1万4千円台)とするボックスを形成しています。現在の公表今期予想利益はともに18円ですが、来期大幅増益で株価はかつてのボックスの下限500円方向を目指すと想定しています。 Bのグループでは、日本電波工にこだわっています。水晶機器の利益率は比較的低いことから、世界的にも競合企業が少なく、財務内容のいいトップメーカーとして、過去のIT需要拡大期には業績が大きく上ブレし、株価も躍動しています。 Cのグループは、いわばオプションで、お客が特に希望しない限り、ポートフォリオに組み込みません。ネット関連などで成長の夢を大きく抱えた銘柄が、低PERかつ低PBRで買えた夢のような時期はもうとっくに過ぎ、大きなリスクを覚悟せざるをえません。ソフトバンクは、大型インフラ企業で、私の掲げるこのグループの範疇にあてはまりませんが、株価の動きはネット関連の小型株とほぼ同一ですから、便宜的にこのグループの代表選手と考えています。 きょうはいま日経平均で150円安。その中で、みずほが待望の40万円をつけましたので、一部売っていただきましたが、これが高値になる可能性が高いと考えたからではありません。みずほだけで見れば、まだまだ頑張って持ち続けたい水準ですが、さすがに他の銘柄と比較して特に魅力的とは思えなくなってきたからに他なりません。 |
第275回 エクイティーの夜明け<3/4> この1週間で、相場地合いに大きな変化が生じたことは疑いありません。売買高が昨夏以来の水準に急増しました。経験的には、そのエネルギーは、天井圏での最後の賑わいと考えるより、数か月タームでの相場基調の転換(つまり始まり)と受け止めるべきと感じられます。 ここにきての株価上昇で、利食いすべきかどうか顧客から相談を受けたとき、私は「現在の相場上昇が一過性かどうかについて、どう考えますか?」と逆に質問することにしています。 一過性の動きなら、上がった銘柄は売ったほうがよいのはいうまでもありません。また、相場全般の堅調が1か月くらい続く動きなら、それほど慌てることはないにしても、個別銘柄の吹き値は売るぞという姿勢も必要でしょう。 だがもし、現在が大きな相場リズムの中で昨年6月頃の位置にいるのなら、いま上がっているということは、その銘柄が中期的にも有望である可能性が高く、それを売るのは絶好の利益機会をみすみす逃してしまうことにつながるかもしれません。 私にとっては待望の変化ですが、変化が起きたと思っている人は多いはずで、多くの人が日経平均の1万3千円くらいはあるだろうと口では言います。 もし、全員揃ってがんがんの強気なら、ぞっとするほど恐ろしいことです。しかし、幸いにして、がんがんの強気を実行している人は国内ではまだ少ないようです。 外人がこつこつ買っているのを横目に、そうはいっても一本調子の上げはないだろうとか、日本経済と企業の課題はまだ多いとか、様々な分別やこの数年に痛められた経験などが頭をよぎり、よくも悪くも慎重なスタンスを選んでしまいます。弱気ではないものの、持ち株の量を積極的に増やそうとせず、売れた分だけで次の買いを考えるスタンスを採っている人がほとんどではないでしょうか。 よくも悪くも慎重な、と書きましたが、投資にとって慎重なことは本来大切だと思います。私が証券会社に入社した頃の、発行会社の都合や花買いや手数料稼ぎにまみれた日々のインチキくさい相場、仕手が流行りマルキならなんでも上がったお祭り騒ぎの相場、証券マンも銀行マンも投資家もほぼ全員がバブルに酔い痴れ、慎重さなどどこかに置き忘れていた頃の暴力的な相場、あるいは近いところでネットバブルの乱痴気相場など、馬鹿騒ぎの数々を思い起こすと、投資家が慎重で冷静な現在の相場は隔世の感があります。 ただし、新生銀行で巨額の利益を外資に持って行かれたことが端的に示す通り、日本の投資家は「投機」は好きでも「投資」にきわめて慎重に過ぎる傾向が濃厚です。 欧米人より、よけいに「元本保証」を好むのではないでしょうか。預金が大好きで、次に債券、株をやる人さえ、顧客登録の際に投資選好を書き込む欄で、元金の安全を第一にチェックする人が大勢います。 加えて、株=エクイティー(持分)という視点が伝統的に欠如していると思います。普通の投資家にとって、株を買うことは債券や投信と同じく「金融商品」を買うことにすぎず、企業の「持分」を買うという意識がほとんどありません。 いまは多分変わっていると思いますが、ちょっと前までは証券営業マンの資格試験の勉強で、株の投資価値は3つに分解できるとし、配当をもらえる側面として収益証券、会社解散の場合に残余財産の分配にあずかる側面として物的証券、最後に経営にタッチする側面として支配証券という言葉を教えられました。問題は、最後の支配証券というのは大株主の場合であって、通常は一般の投資家にはかかわりがないというふうに教えられたことです。 企業が株主のものであり、株がその持分という当たり前のことが当たり前に浸透していれば、ことさら収益だ、物的だと分けて考える必要もなく、特に支配証券なんていちいち言わなくても普通株である限り議決権があるのは当たり前の話です。ましてや大株主でない限り、議決権にあまり意味がないと決め付ける考え方は、資本主義的には言語道断の社会風潮だったと思います。 当初、私は今回の表題を「エクイティの復権」と記して書き始めました。現在の相場波動を、@日本経済の見直し+A株が債券に対して失われたシェアを回復する過程と考えたからに他なりません。しかし、書いているうちに、復権とか回復とかいう言葉より、勃興とか夜明けのほうが当たっているのではないかと思い始めました。 すなわち、日本経済が見直され、株が戻るというレベルの認識ではなく、日本経済と日本の資本市場に新しい息吹が始まったというスケールで考えるべきではないかと思うに至った次第です。 現在の相場波動は、昨年の上昇第1ラウンドに続く第2ラウンドに成長する可能性が高いと考えられます。問題は、その質です。多くの人が今度は業績相場であり、優良株が買われると言います。しかし、私はそのような通常の景気サイクルに合わせて考えるより、もっと大きなスケールで考えるべきとかねてから主張しています。 私の考えでは、昨年5〜10月の上昇は、金融相場というより「回復相場」の第1ラウンドであり、現在は第2ラウンドの始まりです。そして、第1ラウンドが世界的な株価上昇であったのに対し、今回は、日本経済の見直しもしくは日本株の水準訂正という要素が強いことに特徴があります。国際比較でいえば、10数年来負け続けた劣等生が昨年ようやく下げ止まって五分に終わり、今年は失地回復の兆しを見せつつあるということで、日本株にとっては今年こそ回復の第1ラウンドと考えることも可能です。 (NYダウに対する日経平均の倍率が昨年春に1を割った時点で、大底を打ち、再び1を割った2月上旬に今回の上昇につながる転換点を迎えたことは象徴的です) 今回の上昇は、多分主力株の値上がり率では、大銀行株が5倍になった昨年のような派手なものにはならないでしょう。今日の日経金融は国際優良株がPER割安なのはおかしいと指摘していますが、たとえばトヨタの13倍や武田の15倍は、国際的な同業比較では相当に評価されており、日本株の出遅れ訂正という波動にはあまりそぐわないのでしょうか。私はそれより、今後収益環境が激変する可能性のある@内需関連、A商品市況関連、加えてB日本が圧倒的なシェアを持つハイテク関連やC小型ニッチ企業などに水準訂正の余地が大きいと考えます。 Bで一例を挙げると、水晶機器の日本電波工(6779)2120円です。比較的手堅い投資対象としては、@でコーナン商事(7516)1740円、Aで日軽金(5701)247円などに注目しています。 |
第274回 グロースかバリューか?<2/25> 月曜日に日経平均が10800円台まで買われ、日本株一段高かと思われましたが、昨日は早速急反落、主力株の上値の重さをいやというほど見せつけられました。 3月になれば需給関係がよくなる、とあまりにも多くの人の意見が揃っているのは、一つの警戒要因ですが、私もいまのところ素直に3月高を基本想定にして動いています。昨日の急落はがっかりとはいえ、一喜一憂しても益はないと自分に言い聞かせています。 大局的に見て、いまがどのような位置にあると判断し、どのような行動を採るべきなのか? 根本的な問題は、つねにそこに在ります。 まず大局観ですが、デフレを脱却しつつあると考えるかどうかで180度変わります。デフレはそう簡単に終わらない、不良債権もかたづかない、雇用も回復しないという悲観論は相変らず根強く存在し、そう考えること自体がデフレをはびこらせる元凶になっていると思うものの、だからといって否定することもできません。あくまでひとり一人が自分の責任で選択する問題です。 もしデフレが終わると考えた場合、それでも株は上がらんかも、いろいろ心配の種はつきないからね・・・・なんて言う人も結構存在しますが、これは無視してよいと思います。日本経済を十年以上にわたってのたうち回らせている大悪材料の他に、まだあれもこれもと並べ立てて心配していたら、投資の機会は永久にやって来ないでしょう。 私はデフレは終わりつつある、あるいはすでに終わっていると考えます。そしてこの考えは、「株は即刻買い」という判断と直結します。 だから、問題は何を買うか?であり、いつどのタイミングで買うかは二の次の問題でしかありません。 何を買うか? 資金に限りがある我々にとって、これは難しい問題です。現在がデフレからの脱却という千載一遇の投資チャンスにあると考えた場合、つね以上に悔いの残らないような銘柄選択をする必要があるからです。 銘柄選択の考え方として下記が考えられます。 @銘柄を選ばない(ETFなどパッシブ運用志向) A銘柄傾向を固定しない(市場人気志向) B業界トップの優良銘柄で固める(01銘柄志向) C配当利回り重視(ディフェンシブ志向) Dバリュー重視(割安株志向) Eグロース重視(成長性志向) 以上のうち、@とAについては、私が本気で志すところではなく、特に意見はありません。BとCについては、少なくとも昨年の上昇相場では、ソニーや武田、あるいは東電が示すとおり、よい選択ではなかったという結果になっています。今年は意見が分かれるところですが、私は大局的にはやはりベターな選択とはいえないのではないかと考えています。トップ銘柄がつね以上に頼もしく思われたり、2%台の利回りがものすごく魅力的に思えたりするのは、所詮経済の萎縮期だったからで、デフレ脱却で真っ先に狙うべき銘柄群だとは到底思えません。 結論的に、私はDかEかを中心に今後の銘柄を考えていきたいと考えています。 DかEか、すなわちバリューかグロースかは、いまに限らず銘柄選択における根本的な問題です。昨年の相場で活躍が目立ったのは、銀行自身を含む「再生」関連銘柄ですが、今年はもはや「再生」という漠然としたレベルではなく、立ち直ったその企業にどのような投資魅力(バリューorグロース)があるかが問われるはずです。 例えばカネボウは、数年前までの株価が示すとおり「再生」期待がつねに先行する銘柄でしたが、再生機構の支援で銘柄の存続が安泰になったとしても、オリコのような形で株価を大きく上げるような投資魅力を発揮する可能性はきわめて低いといわざるをえません。 現在の市場では、バリュー面からの人気を先導するのは、TOBで大化けしたユシロ化学とソトーでしょう。資産に大きな傷がなく、財務内容がよく、かつ業績も悪くないのに株価は解散価値以下で、しかも低PERという銘柄は品薄の小型株を中心にまだ数多く存在します。 一方、グロース面からの人気の代表選手は、ヤフーです。その他一部の成長期待銘柄は高PERに買われていますが、まだまだ成長期待が高いのにPERは低く、しかもPBRまでそれほど高くないという低評価の銘柄は、やはり品薄の小型株を中心に数多く存在します。 バリューかグロースかは、投資家ごとの選好の問題であり、当面の相場では、その両面のいずれからの銘柄選別も大いに効果を発揮するのではないかと私は考えます。 |
第273回 強気を再構築<2/17> 1月最終週のUFJショックに続き、2月入り早々に某週刊誌記事でニチメン日商の株価が続急落し、私の営業態勢も大きくぐらつきました。目先の株価の高安にはたかをくくっていても、会社の存続にかかわる深刻な問題となれば話が別です。信用を中心にその不安(あるいは株価の泥沼化)に耐えられない持ち株は投げさせられました。投げたのは週刊誌報道があった2日で、485円前後です。その2日後には428円まで下げ、他の持ち株の下げで追証の怖れも出てきた信用顧客にさらなる売りを提案すべきかどうか苦しみました。しかし、幸いにもすんでのところで思い止まり、その後はニチメン日商の株価も小康状態に入りました。 きょう前場の日経平均は81円高の10,629円。みずほ32.5万円、ソフトバンク4240円など、新値に接近している銘柄もあり、顧客のポジションにようやく余裕が出てきました。信用顧客の担保に余裕が出てきたら強気になり、不足が出てきたら弱気になるというのは、相場観としては下の下ですが、われわれ営業マンの立場からはある程度やむをえない面もあります。 下世話な言い方をすれば、所詮われわれ営業マンは顧客のフンドシで相撲を取っているのであり、顧客の目的が純粋に損益とリスクの如何にあるのに対して、われわれの目的は顧客から手数料をもらうことと長いつきあいをすることです。 リスクを取りたがらない顧客に対してはなんとか強気になってくれないかと願う一方、リスクを取りたがる顧客に対してはなんとか強気も程ほどにしておいてくれないかと願う習性があります。 だから言うのではありませんが、公平に見て、今週に入って地合いの変化を感じます。明日のGDP発表をうまく通過すれば、需給関係が一変し、久々に躍動感のある相場が出現する可能性を感じます。 少し地合いがよくなると、期待感を多く持ちがちなのも証券営業マンの習性ですが、それに加えて私の場合は、98年ごろから抱き続けている日本株大勢底打ちへの期待というより思い入れがあり、そのために強気になりすぎる傾向があると、過去の失敗を顧みて反省もしています。 とはいえ、強気は本音です。顧客に損をさせたくないのはもちろんですが、儲けそこなうことを怖れます。だから、現金な話ですが、ついこの間まで、もし下落が深刻化した場合どうなるかを顧客ごとに検討し、安全第一に考えていたのに、今度は上昇局面に入ったらどうなるかを一生懸命考えています。 顧客からすれば、なぜ安いときに買いを考え、勧めてくれないかと思うでしょうね。 今回は私の営業の近況についてとりとめもなく書きました。明日のGDP発表後の相場に大きな期待を寄せています。 |
第272回 ニチメン日商について(臨時)<2/12> 合併の細目の発表やムーディーズの格上げ方向での見直しを受けて、朝方24円高まで回復したものの前場終値は3円安、後場寄り付きには100万株の売りを浴びるなど不穏な動きが続いており、読者から「つぶれるんじゃないか」と問い合わせが来ていますので、もう一度、情報を整理させていただきます。 まず第1に、週刊ダイヤモンドの記事は、先週も書きましたが、本来は問題にするに足りません。会社側に念のため確かめたところ、記事が破綻の具体例に挙げているインドネシアの製紙会社「250億円あまり」の「出資」は、出資の事実がそもそもないということです。インドネシア向けの投融資は、実質的に1300億円強であり、LNGなど健全事業が中心であることを考えれば、巨額の焦げ付きの発生は考えにくいといえます。また、もう一つの例に挙げている「マンション事業」は手持ち在庫1000億円強ですが、販売用不動産はすでに時価会計に移行しており、現在の監査体制の中で、巨額の含み損失を隠しておける余地があるとは考えられず、ダイヤモンド社の記事は、読めば読むほど、思い込みと当て推量と恣意に基づくものと分析できます。 第2に、日経の報じた来期に1000億円の含み損が残るという観測は、資産デフレが進行中の現在、資産評価の仕方によってはありえる金額ですが、3400億円の株主資本から見て、会社存続にとっては致命的な金額ではありません。 第3に、今日付けの日経金融新聞は、4月1日の合併に際して、ニチメンを存続会社として、日商岩井を買収する形での「パーチェス法」を採ると報じています。 この方法を採った場合、日商岩井の資産は時価評価により、新会社に取り込まれます。したがって、相当な程度において、新会社「Sojitz」の資産は、時価評価の試練を受けたものになります。資産の状態にある程度の自信がなければ採用できない方法といえます。 本来、よくも悪くも株価への影響が大きいムーディーズの評価ですが、格上げ方向での見直しにもかかわらずニチメン日商の株価の反応が鈍いのは、それだけ心理的な不安感が根強いことを物語っています。したがって、目先の株価動向にはまったく成算が持てないものの、中期的には同社をとりまく状況が日に日に明るさが増すと考え、当初の期待を堅持しています。 |
第271回 引き続き体勢立て直し中<2/10> ニチメン日商については、週刊ダイヤモンドの最大4000億円の隠れ損失報道に続き、日経に追加損失の発生額を1800億円に値切った報道がなされ、会社側はいずれも「憶測」の報道であるとして抗議声明を出しているものの、投資家に強まった財務内容に対する不安感は拭いきれないままです。 冷静に考えれば、週刊ダイヤモンドの記事は明らかに極端化されています。ニチメン日商の総資産のうち、含み損が潜在している可能性がある資産は、主に長期の投融資と固定資産ですが、合計で1兆4000億円しかありません。もし4000億円の含み損があるとすれば、@資産全体が28.5%の率でほぼ平均して痛んでいるか、A資産の一部がものすごく痛んでいるかです。@については、少なくともニチメン側の資産がアパレルや外食など日常分野で堅い評価ができることから考えてほぼありえません。またAについては、もし全損の資産がごろごろあるなら現在の会計監査を通過できるはずがありませんので、一部の例外を除けば、ほとんどの資産は損失処理を強制される50%以上の含み損はないと考えてよいと思います。図式的に考えて、仮に資産が40%平均で値下がりしている不良資産とほぼ時価どおりの良好な資産に2分割されるとすれば、4000億円の隠れ損失は、良好な資産が4000億円しかなく不良資産が1兆円あるという状況を前提とします。しかし、その状況は到底ありえないはずです。ニチメンはいうまでもなく、日商岩井だって、記事が例示しているマンションやインドネシアなど含み損がありそうな事業ばかりやっているわけではないのですから。 なにをぐちゃぐちゃ書いているかとお思いかもしれませんが、隠れ損失4000億円が事実であるかどうかは、株主資本が3400億円しかないニチメン日商にとっては重大な意味を持ちます。しかも、資産の評価額は、仮に時価を全面採用するにしても、銀行や商社の資産は基準の採りかたで大差が生じるので、よほどの優良会社でない限り、絶対に債務超過ではないことを証明することは不可能です。 以前、週刊ダイヤモンドの「つぶれそうな会社」特集で、合同製鉄が上位にランキングされたとき、その根拠になっている算式の会計用語にごく初歩的な誤りがあるのを指摘したところ、「どういう言葉を使おうと、言論の自由だ」と言い放たれ、あ然とするばかりでした。だから、いちいち問題にするだけ莫迦らしいと思うのですが、株価が下がると、もしやという不安が、上記のように理屈ではありえないと思っている私にさえこみ上げてくるのですから、顧客が不安がるのもやむをえません。 最大1800億円という日経報道が出たときは、買い気配になったほどですから、もし仮に追加で損失処理を迫られても、債務超過に陥る金額でなければ、驚くに値しません。(日経は追加損失が1800億円と報じていますが、うち今期中に発生するとする800億円は、会社がすでに中間期で計上済みの分と期末に計上予定を公表している分にほぼ匹敵するので、追加損失という表現は適切ではないと考えます) おそらく数か月内には不安感が払拭されるのでしょうが、当面については残念ながら躍動感のある動きは期待できないとあきらめています。 もっとも、第一部の主力株もまったくさえませんね。目先期待で買うなら、20日に第一部に昇格期待のある二部の割安株かと思い、ちょっと研究しましたが、JALUX、TAC、タカラレーベンなど強い動きをしているものが多いものの、なかなか乗れません。焦らず、割安感を心底から感じる銘柄を探したいものです。 |