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第40回 耐える日々11/19>

 
このところあまり書いていないのは、逃げているからではありません。通常、相場が当たっている人には相場全体がよく見えています。もっとも、当たりすぎて変に自信を持ったりすると、そのときから冷静に見えなくなってしまうのでしょうが、それでも、相場が曲がっている人が、依怙地になって自説に固執したり、あるいは逆に突然宗旨変えしたりしてもがくことほどひどくはありません。
 
 相場がはずれているときは、なるべくおとなしくしている他ない。そのことはつくづく感じます。固執も強がりもひがみもすべて洗い流され、損しているという事実をひとごとのように冷静にながめられるまで、じっと待つしかありません。
 
 最近になり、ようやく私もショックを克服しつつあります。先週末、1万6千円台の東京エレクや400円台のオリコや1000円のエイデンの期日が到来し、私のもっとも頼みとする顧客に大きな損失が発生しました。実はその顧客には12月にも相当な期日があり、その合計損はすでにその顧客と私との間で「覚悟済み」になっており、その顧客への定期的な報告(運用報告書)でも預かり評価額から差し引いておりました。すなわち、銀行でいえば引当済みの不良債権だったので、ショックは非常に小さかったのです。
 
 私が今考えていることは、「なんとか損を取り返したい」ではなく、「なんとか来年春まで切り抜けたい」ということに尽きます。たとえ目の前の相場がよくても、焦っている限りろくなことにならないというのが経験則ですし、ましてや現在の相場は一筋縄の状況ではありません。
 
 現在、私がやっていることは、ボクシングでいえばジャブ程度のことです。ジャブなら、態勢がくずれないので、比較的気軽に打ち出せます。東京エレクの顧客は、半値での期日売りはいかにも悔しいのですが、東京エレクはまだ他にも持ち株があるので、あえて売り切りにし、同じハイテクの村田製作をちょとだけ買いました。オリコも売り切りにし、エイデンはすでに大きな下値はなさそうなことから同株数でクロスしました。
 
 信用期日でのクロスは、必ずしもよい結果が出るとは限りません。けれど、小型株が軒並みに売られているとき、小型株で信用期日になった場合、人気の陰の極であることも多く、クロスは有力な手段と思います。同じ顧客で、昨年2月に日本電波工が期日になりクロスしたところ、短期2倍高という嘘みたいな大成功を収めましたし、昨年12月にアイカ工をちょっとまとまった株数でクロスし、結果はやはり大成功となりました。
 
 他の顧客でも、現在はやはりジャブ程度です。たとえば、私の3番目の顧客に、先週金曜日、太平金を5000株おそるおそる買ってもらいました。結果は首尾よくストップ高となったので、もっと買ってもらえばよかったですねと後で顧客と話したのですが、5000株だから上がったので、力んで買っていたら下がっていたかもしれないとも考え、それほど後悔もしていません。
 
 ところで、太平金は木曜日に1株利益36円という好決算を発表し、7月高値から半値以下ということもあり、きっと上がるだろうと考えたのですが、寄り付きはなんと5円高の166円、その後もぱっとせず163円まであったのです。あまりに買いが入らないので見送っていたところ、その後さすがにジリジリと値を上げ、前場189円で終わったところで、顧客にオファーしたので買えたのは194円でした。
 
 太平金の前場の状況は、現在の相場がいかに買い気がないかを象徴しています。
 
 ここには、私の相場観を書きませんが、毎週それらしきものは書き続けています。もしよろしければ、日本不動産経営協会のHPでご参照ください。


第39回 勝利への展望<11/4>

  前回、表題に「がっくりも2日続けば・・・・」と書きましたが、「・・・・」の意味は、本文にある程度表れていると思いますが、2日続きのがっくりの後、3日目はだれでももう完全にがっくりしており、そこで売り物が出れば相場の転機になりやすいというのが経験則です。(酒田手法の「三空」と同じ理屈)
 
 10月31日の前場は、最安値になった可能性も強まってきました。日本の連休中のナスダック相場がしっかりしていたことも支援材料ですが、なんといっても、先週後半の相場つきは基調の転換を感じさせるものでした。
 
 もっとも、今回の場合は、相場が底入れしたからと言って、だれもがたちまちにハッピイになれるような陽性の反発は期待しにくいようなので、手放しで喜ぶわけにはいきませんが、とりあえず前途に明るみも差してきたことで一応の安心はしています。
 
 私の顧客の場合で言えば、大きな評価損となっているのは、東京エレクやキンセキなど半導体・電子部品関連ですが、先週の相場つきで見る限り、全体相場に落ち着きが戻り、反発が明確になっても、一時的には取り残される可能性が強まっているように感じられます。
 
 したがって、短期的な効率からいけば、それらを見切り、動きのよいもので勝負するということを考えるべきかもしれませんが、私たちはそういうふうには動かないことに決めています。
 
 反騰相場にもいろいろあり、最初の局面でもっとも強かった銘柄群が結局その後大きな相場をつけていくというパターンばかりではありません。
 
 自分の意見に固執するわけではないのですが、今後日本株が本格的な相場を出すとすれば、当然、業績相場の性格を強く帯びるはずなので、7月頃の活躍銘柄(半導体と国内市況関連)がいずれは再び買われるはずだという考えには変化がありません。
 
 当面は、負け犬のように動きの悪い建て玉を維持しながら、わずかな余裕で機動的な売り買いを仕掛けるしかないと考えています。
 
 本当の勝負は、7月高値期日の1月以降でしょう。 


第38回 がっくりも2日続けば・・・・<10/30>

 先週金曜日には正直なところ、がっくり来ました。前日、午前中安かったところ、終わりにかけ戻り始め、終わってみたらプラス。もしかしたら底入れかと期待したら、寄り付き早々に先物で15000円をつけたとたんに反落開始、無残な安値更新となって日本株の上値の重さをいやというほど思い知らされました。
 そして今日は、赤字決算のセガなどCSKグループの軒並み安が、時間とともにソニー、ドコモ、ソフトバンクの主力トリオにまで波及し、川崎製鉄が21年前の第2次オイルショックのときにつけた当時のど安値103円さえ一時下回る始末。正直言って、またがっくり、今度こそ本当にがっくりしました。
 
 引け後、日産自動車がすばらしい増額修正を発表しましたので、明日はどうなるか分かりませんが、ここまで来たら、いっそなまっじっか反発するより、本当にがっくりきた売り物が殺到して、大幅安したほうが相場のためにいいのではないかとさえ思えてきます。
 
 辛い日々が続いています。評価損は仕方がないとして、顧客によっては、この下げ局面をある程度の資産規模を維持しながら乗り切れるかどうか、危機的な状況にもなってきました。
 したがって、本来なら、私の投資スタンスでは、もっとも積極的な仕掛けを考えるはずの決算発表シーズンに入ったものの、行動は鈍ったままです。
 
 もっとも、今は、好発表に対する市場の反応は、驚くほどせちがらいですね。
 たとえば、金曜日の下げの中で、小物ですが、機械のCKD(6407)と鉄鋼の大和工業(5444)がすばらしい増額修正を発表しました。CKDは連結EPSで予想の48円が65円、大和工は62円が72円です。株価はともに少し上昇し始めており820円台と360円台、ファンダンメンタルズと株価位置からも買えるはずだという判断で、お客さんにそれぞれ少しだけ買ってもらいました。
 
 当日は、それぞれ、839円と370円で終わり、発表直後としてはまずまずかと思いました。ところが、新聞に掲載された後の今日は、ほとんど株価が伸びず、終値では、4円安と9円安でした。私の感覚では、ふだんの相場なら、少なくともCKDは大幅高してもおかしくないはずと思います。
 
 せめてもの救いは、私のかねてからの注目株ユシロ化学(5013)が、やはり連結EPS75円という増額修正で、実質30円高の555円で終わったことです。
 
 なかなか予断を許さない相場が続いていますが、次の局面への希望だけは捨てず、なんとか乗り切っていきたいと考えています。


第37回 絶不調のその後<10/15>

 前回これを書いた頃は個人的に絶不調でした。しかし、先週は相場そのものが絶不調となり、買い方はみな苦しい状況となりました。株が下がることは辛いことですが、全面安ならまだ気持ちの持ち方が違います。相場を冷静に考え直してみようという気力が持てます。
 
 私は超能力や超自然現象などは信じないほうですが、バイオリズムや運不運の流れというようなものは結構信じます。半導体株やオリコを勧めたのは、自分自身の至らなさがすべての原因と素直に反省しますが、それにしても自分の勧める銘柄がことごとく悪いニュースに見舞われたのは、自分の運が最悪のところにさしかかっていたからと考えています。そして、そういうときには、ジタバタしてもかえって悪い結果をどんどん作っていくことになるので、なるべく次の局面に備えて力を蓄えるほかないということを身に染みて感じています。
 
 先々週末には、とうとうアイコム(6820)まで下方修正して、これで私の勧めた銘柄のことごとくに悪材料が揃った形になりました。そこで、先週はいったいどういうことになるかと注目していたところ、アイコムはもちろん下げ、特に悪材料の出ていないカテナまで下げ、表面的には絶不調がますます続きましたが、新しい悪材料は何も出ませんでした。
 それどころか、前回書いたように背水の瀬戸際まで追い込まれていた東京エレクが、地合いの割にはものすごく強い動きとなり、用意していた追証の計算が今のところ無駄になるという嬉しい誤算がありました。
 
 まだ油断は禁物ですが、私自身のバイオリズムは底を打ったのかもしれません。麻雀でいえば、降りてばかりいないで、そろそろ軽く勝負して、流れの変化を確かめてよいころにさしかかっているのかとも思えます。
 
 およそ2週間ほど、相場判断は一切しませんでした。曲がり屋が下手に判断すれば逆になる可能性のほうが高いと肝に銘じて、相場が上か下かはお客に聞かれても、なるべくお客自身に決めてもらうような答え方をしていました。
 今週もまだ自分の曲がりが克服できたかどうか自信がないので、日々の売買は自然体で臨むことにしていますが、場合によっては、久々に積極的な判断をしてみようと思っています。そして、その試金石としては、ほんとうは先週末の米国相場が急反発しないほうがより試せたのですが、最近になってようやく出始めた米国株の写真相場からの脱却が定着するかどうかです。
 
 毎週書いている顧客向けレポートに、日本株に対する強気意見を久々に掲げました。実はこの意見は、金曜日に日経平均が大幅安したまま終わって、ナスダックもたいしたことがなくても書こうと思っていた意見ですから、ナスダックの急反発でやや拍子抜けしてしまったくらいなのですが。
 
 最後に、大和総研のアナリストが、80円台のニチメンをレーティングAとしたことは拍手したいと思います。総合商社の前途は厳しく成長性はないかもしれないが、資産は健全、当面の利益基盤も十分あるのに100円以下の取引が続くなら、何を信じて日本株を買ったらよいのか分からなくなるはずです。今後、こういう形で、異常に割安に埋もれている銘柄の魅力を丹念に掘り起こすことが、日本株全体の取引の活発化につながるはずだと私は考えます。


第36回 絶不調<10/3>

 9月22日のインテルショック以来、私にとっては恐ろしいほどの悪いニュースが相次ぎました。
 私が勧めて買ってもらっている銘柄が次々と水浸しになり、お客の中には「今度あんたが何か勧めたら、カラ売りしてやるよ」と言っている人もいます。
 今朝は、ホソカワミクロンです。前9月期の業績修正の日経記事に目を疑いました。増額修正が当たり前のこの時期になんと経常赤字とは・・・・。株価は620円の80円安、CBは4円安の102円50銭で終わりました。
 
 ホソカワミクロンの業績悪の主因は、西ドイツ子会社の非常な受注不振にユーロ安が重なったことです。為替の先行きはともかくとしても、西ドイツ子会社は前期末から回復基調にあるということで、
11月に発表される今期の業績見通しに期待したいところですが、前期回復を確信していただけにがっかりしました。
 
 勧めた銘柄が水浸しになり、悩み多い毎日を余儀なくされています。当たっている時は、こんな楽しい仕事はないのですが、曲がっている時はその倍返しで辛くなります。それにしても、悪い時には、不思議なほど、変に感心してしまうほど、悪いことが重なるものです。
 
 ホソカワミクロンはCBでお勧めしたので、下値のリスクは限定されており、まだしも安心できますが、問題は信用取引で買ってもらった急落銘柄で、特に東京エレクトロンです。
 
 顧客の一人は、その人自身の強い希望もあり、東京エレクを度外れの割合で買ってしまいました。あっという間の50%下落なので、資産全体を揺るがすほどの評価損が発生し、今日の9120円でとうとう維持率割れ寸前となっています。
 
 もし明日も安ければ、現金入金は到底無理なので、建て玉処分を考えなければなりません。今日、東京エレクが今後下げ続けて8000円と7000円になった2通りの場合で、その他の銘柄もある程度下げると仮定した上で、どの位の建て玉と現物を売らなければならないのかを試算し、売却銘柄もリストアップしました。
 
 唯一の救いは、その試算結果を顧客に伝えたところ、「そう。貧乏になっちゃうけど、へこたれないよ」と言ってくれたことです。それから、前に書いた80歳の顧客は、「また安いところを買うぞ!」と元気旺盛なことです。
 
 つくづくにこの仕事は難しいものだと痛感します。積み上げた利益があっという間に姿を消し、積み上げた信頼関係も危機に瀕します。しかし、世界的な株価大暴落がない限り、幸いにして、ほぼ全員の顧客がまだやり直しのきく範囲の状態でこの秋を切り抜けられるはずなので、私は顧客の信頼を頼りに、今は焦らず、ポジションの回復に努めたいと考えております。


第35回 前を見すえて歩きたい<9/25>

 先週末から、私にとってはショッキングなことが相次ぎました。
 先ず最初は、インテルショックですが、金曜日の朝の安寄りは仕方がないとして、午後に入ってハイテク以外も含めて一段安になったこと、そして欧米の株価が結果的には下がらなかった後を受けての今日(月曜)になっても、日本株の戻りがはかばかしくないことです。
 次に、金曜日の引け後に発表された合同製鉄の減額修正です。
 さらに、オリコにいたっては、今日発売の「東洋経済」のスクープ記事でストップ安してしまいました。
 
 悪い事が重なるときは、相場を見るのがいやになりますが、職業として選んでいる以上、簡単に思考を停止することは許されません。気分転換するにしても、ある程度の目安をつけ、顧客と当面の方針を相談してからでなければ、直面した事態から逃げるわけにはいかないのです。
 
 まず日経平均の1万6千円割れ。この問題に対しては、逃げるわけでなく、もはや考えても仕方がないだろうという結論に達しました。今回のインテルの下方修正自体は、私はインテル固有の要素も強く、場合によっては他の半導体関連企業にとって下げ一巡の機会になるのではと考えたのですが、週末の米国株価の推移を見れば、その方向性も十分に現れています。問題は、半導体うんぬんではなく、米国株が下がりそうだというので大幅安して、結果的には下がらなかったのに戻りきれない日本市場の弱さです。
 
 しかし、虚心に考えて、弱いから売るべきという判断は現状では採用すべきではないと思えます。これは、理屈ではなく、現在売っている人と買っている人のタイプを知る限りの範囲で、自分なりに照らし合わせた場合、必ずしも現在売っている人のタイプが相場的に賢明、買っている人が馬鹿だとは到底思えないからです。(例えば、さわかみファンドの澤上さんは強気ですね)
 
 もちろん、そんな理屈抜きのことを判断材料にして、完全に方針を決めてしまうわけにもいきませんから、当面は虚心坦懐に相場の行方を見守るということを基本方針にしつつ、納得のいく銘柄があればリスクを負える範囲で買うという姿勢を貫くことにした次第です。
 
 次に、合同製鉄の問題。これは調べた結果、比較的明るい気持ちになれました。
 ショックだったのは、特損の増加ではなく、上期の経常が予想をわずかながら下回る見込みになったことですが、これは5月以降の製品市況の回復が実際に納入する価格の上昇に結びつくのにタイムラグが生じるというのが主な原因になったと見られ、下期の収益には非常に明るい感触がえられました。
 特損の増加にしても、退職年金積み立て不足額の一括償却、出向者に特別退職金を支払って完全に退職扱いにしたことなど、今後の収益を考えた場合、明らかに前向き要因です。
 当初は5年かけて償却する方針だった年金積み立て不足額22億円の償却を今期一括に繰り上げたこと、およびまだ猶予のある時価会計を前倒しで導入し、減価損を計上することは、会社側が考えられる損失を早めに出し、今後の本格浮上を狙っていることを強く感じさせます。
 
 問題はオリコです。「東洋経済」によれば、オリコに残る実質3800億円の事業貸付金(バブル期の不動産担保貸付、引当金控除後)をメインバンクの第一勧銀が全額回収不能とみなしているということです。
 オリコは9月15日付けの日経に報じられている通り、前期大幅に不良債権を償却し、今後に予想される2次損失は上記のうち1250億円程度であることを重ねて表明しています。
 すなわち、両方の見方では2550億円の評価の差があり、この点で大幅な債務超過であるかどうかの解釈が分かれるわけです。(その他に1000億円以上が確実な保有不動産の含み損がありますが、これはオリコ自身がディスクローズしていることなのでここでは省きます)
 
 「東洋経済」の記事に対し、オリコは「前期に一括償却を実施し、その時点で行うべき貸倒引当金の処理を完了しております」と全否定する文章を発表しました。また、第一勧銀も「当行の自己査定の最終数字」はオリコの発表数字と大きくは違っておらず、この記事が「実態の財務状態と大きく乖離したものに」なっているというコメントを発表しています。
 オリコが言う通り、監査法人も適正としているのですから、オリコの決算は現行の会計基準に違反しているわけではないのでしょう。要するに、不良債権に対する見方の差であり、厳格かつ保守的な見方をすれば、上場会社で債務超過に陥る会社はオリコに止まらないはずです。
 かつ「東洋経済」がスクープした第一勧銀の内部資料も、結論はオリコが今後の利益で健全内容に回復することが可能としているのですから、オリコの存続を危ぶむところまで悲観するのは行き過ぎと考えられます。
 
 オリコが本来の業務である信販業務で、年間700−800億円の利益を出していくのは確実と見られます。したがって、仮に4000億円以上の含み損があっても、年数をかければ、償却可能のはずです。しかし、当面は、不良資産の絶対額に?が残りますので、株価的には大きな期待は持てません。私の予想では、日本信販の値段(220ー230円)が一つの下値めどになり、390円のジャックスを上回ることは近い将来においては不可能と思われます。
 
 持続するか、投げるか、明日以降、買っていただいたお客様の1人1人と相談せざるをえません。この欄においても、数回にわたりオリコをお勧めしたことをお詫びします。
 
 株の売り買いを人様にお勧めすることは大変なことだとつくづく思いますが、投げ出さす、前を見すえて歩いていきたいとあらためて決意しています。


第34回 それぞれの道<9/21>

 一昨日、日経平均1万6千円割れからの急回復、昨日は大幅続伸ときて、普通なら10人の証券マンのうち、8−9人が大いに興奮して今日に臨むはずでしょうが、昨日のうちから、ほとんどしらけきっていましたね。
 というより、お客さんのほうが乗ってこないのですね。外務員は8月よりますます手数料が上がらなくなり、まじで生活の心配やら、成績未達による契約解除の心配をし始めています。中には、お客さんの信頼をいいことに、ほとんど意味のないクロス(同時同値売買)を勧めて手数料稼ぎするものさえ出る始末です。
 
 いきなり、投げやりの書き方をしましたが、今の営業現場の雰囲気を表わしたつもりです。私は、先週も述べた通り、気持ちを持ち直し、相場の答えがなかなか出ないなら、出るまで自分の信念を徹底して持ち続けようと覚悟を決めていますから、それほどまわりの雰囲気に毒されていません。
 
 結局、今の日本株を買いと見るか売りと見るかは、2年前の大底と昨年の反騰をどう考えるかで分かれると思います。
 もし2年前の大底で日本経済の基本的な悪材料が織り込まれ、昨年から大局的な上昇トレンドを形成中と考えるなら、最初の上昇に対して十分なほどの反落と調整をへた現在は明らかに買いと判断されるはずです。
 それに対し、2年前の安値はあくまで最初の底であり、現実の厳しさを十分に織り込んではいないため、もう1度あらためて売られて下値を確認するはずだと考えるなら、近々にも相当な突っ込みを想定すべきということになるはずです。
 いずれにしても答えが出るのはそう遅くないはずです。
 
 私は、もちろん上に挙げた2つの見方のうち前者を想定しています。だからこそ、この欄に書き込みを始めてから、まるで万年強気のようにずっと強気なのです。
 
 強気を選ぶ根拠は、ありていに言えば、私の投資感覚です。私は、今の日本株のうち、相当な数の銘柄に投資魅力を感じます。できることなら、自分自身で株主になってじっと持っておきたいという株が相当に数多くあります。みなさんはどうでしょうか?
 
 ところで、今日の「日経金融新聞」に「日本株は本当に割安か?」という記事がありました。私はびっくりしたのですが、どうも論点は、日本株の業績好調から第一部の平均PERは40倍割れまで低下したが、アメリカが30倍以下なのでまだ割高、為替リスクを冒してまで外人は買う気しないだろうということらしいのです。
 そんなことは、株をやっている人間ならだれでも分かっているのに、なぜ今ごろになってもっともらしく書く必要があるのかということにびっくりしたのです。できれば、数年前、まだ日本の内需株が思い切り高い値段で取引され、国際優良株に限ってなぜか不思議なほどPER割安だった頃か、せめて今年の春頃にに言ってほしかったですね。
 いずれにしても、景気のソフトランディングを期待して金融政策を行っている米国の株価と、景気回復の兆しが出てきたかもしれない日本の株価をPERで単純比較するのは明らかに乱暴と思います。
 ましてや、NTT3兄弟や都銀株を筆頭に、日本にはまだ不可思議な割高株(あえて言えば高ブランド株)が存在します。HOYAやファナックなども良い株ではあるのでしょうが、業績に不安がないことをいいことにあまりにも高値が当然のようになっている気がします。それら、業績の大幅改善の望みにくい、そのくせ高PER株を除いて考えれば、今日本株には、PERでそれほど高くなく、かつ業績にまだ不安はあっても逆に大幅な期待も持てる、すなわち変化率が高そうな銘柄が数多く存在します。
 
 それらの銘柄に私は今かつてないほど投資魅力を感じます。そして、その感覚が私の強気選択の唯一の理由になっているといってもよいでしょう。
 
 追記
 ホソカワミクロンのCBを買ってもらったお客様にお詫びがあります。最新の四季報によると、業績の回復度がそれほどでもないと書いてあります。四季報の業績予測はわりと正確であることが多いので、11月に発表される決算は予想を下回るかもしれません。ただし、それでもなお時価は買い余地があること、およびCBでの投資ですから、リスクも限定されていることにより、投資は失敗にはならないと考えております。


第33回 自信やや回復<9/17>

 日経平均はなんとか1万6千円台をキープして、3連休に入りました。週明けは18日なので、9月決算前の需給悪には峠が見えてくることになるはずです。でも、市場マインドが急に好転するとは思えません。
 原油高にナスダック安、景気対策のトーンダウン、銀行の不良債権のさらなる増加・・・・とちょっと考えただけでも弱気材料にことかきません。といって、ほとんどの人は、日本の株価にいまさら大きな下ブレリスクがあるとも考えていないはずです。
 結局は、よほどの大事態が出現しない限り、今の相場動向を決めるのは日本人のマインドそのものだと私は思います。そして、マインドを変化させるのは、現状では株価以外に考えられません。
 
 これは、一見堂々巡りです。株価が上がらない限り、日本人は弱気のままだろうと考えるのはよいとして、日本人のマインドが変わらない限り、株価は上がらないだろうと考えた場合、まさに堂々巡りになってしまいます。しかし、幸いにして株価は日々揺れ動きます。揺れ動きながら、下を試し、上を試しし、どんな膠着相場もいずれは新しいトレンドの相場へとつながっていきました。
 
 先週の私は、上に述べた堂々巡りの理屈の中で、日本の株価の主体性のなさにガックリという気分でしたが、思い直して、前途に希望を持っています。証券マンを殺すのに刃物はいらないという言葉があり、我々証券マンがいちばん青菜に塩でシオレてしまうのが無気力な膠着相場なのですが、前途に希望を持てばいくらでも耐えることができます。
 
 3連休中に、やや古い本ですが、「陽はまた沈む」と「2001年、日本は必ずよみがえる」を読みました。90年に「陽はまた沈む」が出たとき、没落英国人のやっかみだとだれもが思ったのですが、みごとその通りなりました。
「2001年」のほうは米国人とはいえ日系三世の人が書いているので、ひいきめの意見と思う人も多いかもしれませんが、なかなかどうして日本人の体質に厳しい意見が書かれています。そのうえで、日本人は日本の先行きにあまりにも自信をなくしているが、そこそこの成長トレンドに復帰するだろうという意見なのです。
 
 先週末に、ロームが上方修正を発表し、半導体関連の主要企業の最新業績予測が出揃いました。私の計算では、アドバンテストが今期予想PER43倍位なのを除いて、東京エレク、村田、ロームが37,8倍、京セラは33倍と米国の同種企業に比べて割安感が出てきたと思います。インテルが高値圏から下がってきたからといって、いちいち騒ぎ立てるのはどうかと思います。
 
 半導体の需要が2−3年後にどうなるのかは、もっともっと真剣に議論されるべきです。しかし、日本では、米国の相場が上昇したら、それ行けになり、反落したら、それで議論はおしまいになって、それじゃ次のものということになってしまいます。しかし、客観的に見て、IT産業の中で日本が世界に誇れるものはそんなにありますかね。半導体(電子デバイス)とゲームを除けば、少なくとも株価が割高だと私は思います。
 
 半導体に国内市況関連を加えて、業績相場的な色彩が強まり、そのうちに消費関連の中小型好業績株が加わり、日本の景気回復を買う相場になっていく・・・・というのがかねてからの私の基本想定です。
 現実は、いろいろな紆余曲折があり、想定をどんどん修正する必要が出てくるのでしょうが、今のところ7月後半以降の相場的な紆余曲折により、当初の基本想定を変更する必要が生じたとは考えません。
 
 以上が、私の自信回復の経過報告です。


第32回 自信喪失<9/10>

 金曜日に日経平均が反発し、9日連続安はまぬがれましたが、むしろ10日連続安でもしてくれていたほうがよかったのではないかとやけくそに思う位、ため息の出る気分です。
 先週は、「投資精神に復活の兆し」と掲げたくなる位、昂揚した気分だったのです。ところが、その後の経過を見ると、第一部市場で買われたのは、ソフト関連や通信関連で、見かけは勇ましいものの、実はリスク「逃避型」の精神にどっぷり漬かったような展開だと私は思っています。
 
 NECソフトやNTTドコモは、成長が期待できるという点で、JR東日本とはもちろん違います。しかし、景気動向次第で、業績が大きくブレてしまうのではないかという不安がない点で、買い方の心理には同じような作用が働きます。すなわち、発想はディフェンシブであるわけですが、株価位置はJR東日本も含めてディフェンシブではありません。人によって違うのでしょうが、私の神経では、この手の株を、いくら業績の心配がないからといっても、今の株価水準で買えば心配でなりません。
 
 先週の市場では、半導体も含めて、景気動向に敏感そうな銘柄は総じて見送られました。もしかしたら、これはご明察で、週明け早々のGDP統計の如何にかかわらず、日本の景気は今後悪化していくのかもしれません。いや、そんなことはありませんよと断定する自信は私にもありません。だが、本当に今後の景気動向について、自信を持って「悪化する」と言い切れる人はどの位いるのでしょう。
 大半の人が、自信を持てず右往左往しているのではないでしょうか。
 
 株を売り買いするからには、景気に対する自分の判断はぜひ必要だと思います。難しく考える必要はなく、白か黒か、丁か半かの自分自身の選択です。私は、バブル崩壊後初めてというほどよくなる方向にあると考えています。少なくとも、企業業績はまだまだよくなると考えています。
 
 日本の株式市場は、7月以降の経過を見る限り、日本の景気の先行きについて悲観的に立っていることを認めざるをえません。相場のことは相場に聞けに従う限り、その事実を素直に受け止めるほうがベターかもしれません。しかし、私は相場参加者のいちいちの内実や、銘柄の買われ方を見ると、到底素直にその事実を受け入れたくはないのです。前日のNECソフトの買われ方や、銘柄までアメリカの写真相場になって、日々右往左往している今の相場には情けなくて吐き気をもよおしてくるのです。
 
 先週書きました通り、カテナというリスク覚悟の銘柄の上昇をいいことに、80歳の顧客に東京エレクというやはり価格変動リスクの高い銘柄を月曜に14710円で買ってもらい、金曜日の終わりは13210円とちょうど10%下がりましたが、私はそのことで自信をなくしているわけではありません。
 
 株式投資の原点は、リスクをとるか回避するかのいずれかです。リスクをとった以上、結果が悪くても、つらいことですが、やむをえません。ただし、今の市場を見ると、はっきりとした結果を出すのが、夏休みの宿題みたいにズルズル延ばしになる可能性が高いと思わざるをえません。まるで、外人さんが日本の景気について答えを出してくれるのをただ待っているような受身姿勢を感じるのです。
 
 これだけ落ち込んでいれば、週明けは案外日本市場にも久々に上げ下げのメリハリが復活するのかもしれませんが、とりあえずあまり期待せずに市場の本当の答えを待つこととします。


第31回 中小型株の中から<9/2>

 週末の平均株価は下がりましたが、私は負け惜しみでなく、それなりの感触が出てきたと思っています。
 
 例えば、店頭の鷹山の1600万円という驚くべき初値です。私はこの会社に今のところまったく興味がなく、この値段が高いか安いかを論じるつもりはありませんが、注目すべきはこの値段を買ったエネルギーです。
 
 鷹山に向かった買いエネルギーはおよそ2つに分けられます。
 1つは、7月末から続いている新規公開株に対する異常な人気の延長線にあるものです。第1部市場がだめだから、値動きの軽い新顔銘柄で板の間稼ぎをしようという動きです。本質的には、去年の今ごろの井筒屋やシルバー精工を買うのと一緒で、ちょっと高級めいているだけです。
 もう1つは、ネットバブルでいじけまくっていたIT技術の夢を買う動きの復活です。私見では、NECソフトやマネックス証券を買い上がったものとは違う性質のエネルギーがここにはあると思います。
 
 私はバリュー株投資は好きです。しかし、成長の夢を買う投資も好きです。現実の値打ちをどう評価するかという動きと将来性をどう評価するかという動きは、当然株式市場に並存していなければないません。それなのに、昨年からの株式市場はあまりにもヒステリックに、両方の価値観の間を揺れ動きすぎました。将来の夢だけをブーム的に追いかけ、バリュー株を叩き打った後、今度は将来を買う精神をまったく喪失し、PERが高いものは買えない、日本のITは当分だめだとまるで別人のような弱気を吐き始めたのです。
 
 7月頃から、日本の市場で買われたのは、電線と硝子株など光ファイバー関連だけ、それも米国市場の写真相場の色合いが強く、独自に将来の夢を買おうとする動きはほとんどなかったと言ってよいでしょう。
 やや強引ですが、私は鷹山の異常高に、その是非はともかく、投資精神の復活の兆しを感じたのです。
 
 先週末は、この日第一部昇格となった銘柄が軒並安となるなど、中小型株相場は順風万帆というわけではありませんが、大真空の新高値接近、カテナの1400円台乗せなど、中小型株に限っていえば明るい動きも見えてきました。
 カテナが上がりましたよと80歳になるある顧客に電話したら、よし、それじゃ、東京エレクを来週買おう!と言ってくれたのは嬉しいことでした。


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