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第80回 新規開拓<7/3>

 先日顧客が一人減ったからではありませんが、今週から久しぶりに「新規開拓」の作業を始めました。
 相場はこのところ上がったり下がったりしているものの、目先的にはまったく参加したいという気がわかないのは私だけではないでしょう。
 目先は捨てて、先だけを考えて行動するしかありません。中期的には私は強気ですから、余裕があれば半導体株を少しでも増やしておきたいところですが、多分上がるのはうまく行って米国の決算発表が一巡する7月後半でしょう。

 というわけで、久しぶりに開拓活動を始めたわけです。
 証券会社の正社員だったときは、二言目に出る言葉が「開拓」でした。そして私は、どうもそのことに、うさん臭いものを感じていました。

 お客をどう増やすかということが、営業の世界ではもちろん大事だということは分かります。しかし、それ以上に、お客にどうやったら満足してもらえるかのほうが絶対大切な先決問題であるはずです。
 その先決問題が、証券会社では長い間なおざりにされてきたと私は思います。最近、あちこちの証券会社が法令違反を摘発され、それなりの処罰を受けていますが、やっとそういう時代になってきたかという感慨があります。
 私の経験では、開拓、開拓と社内で騒ぎ立てる人間は、大体において、贈り物や飲食接待以外には、どうやったらお客に本当に喜んでもらえるかということを思いつかない、あるいは考えようとしないタイプが多かったですね。(もちろん、今はそんなことはないと思いたいです。)

 私の場合、開拓は、若い頃から同じパターンですが、自分の文章をチラシにしてある地区に大量に投げ込むことです。現在取引をいただいている多くのお客様はこのパターンでご縁ができました。
 私は書くことが好きです。株も好きですが、それ以上に好きかもしれません。というより、私の心の中では、嘘のない文章を書こうとすることと、ダマシや自分に対する思い上がりや突発的な不幸など、様々な不透明要素に満ち満ちた株式市場で、少しでも他人にも自分にもだまされないように生きていくことは、ほとんど一緒のことです。

 ところで、これを読んでいる皆様はいま何をお考えですか? もしよろしかったら、相場その他もろもろのことでディスカッションしませんか? 何でも結構ですから、下記にご意見をお寄せください。
   sales@neuralnet.co.jp(ニューラルネット(株)から転送します。)
これは目的が「新規開拓」ではありませんので、同業者の方でも結構です。


第79回 様々な投資家<6/28>

 今朝、顧客の一人から電話があり、ネット取引をやってみたいので、株券を他社に移管する手続きをとってほしいということでした。
 この顧客は、1年前に退職した外務員から引継ぎ、10回ほど売買をしていただき、そのうち何回かは私に意見を求められたのですが、そのたびに、顧客との呼吸が合わず、適切なアドバイスができないもどかしさを感じておりました。
 顧客から見れば、手数料は高いのに適切なアドバイスを期待できないのであれば、いっそネット取引のほうがよいと考えるのは当然だと思います。

 株は結果の世界ですから、どんなに誠実に対応しても、結果が悪ければ顧客は離れていきます。ただ、私の経験からは、よほど不運(はずれ)が続かない限り、長い間には、結局その顧客と呼吸を合わせられるかどうかに収斂していくようです。
 営業マンである限り、どんな顧客とも呼吸を合わせたいと思います。しかし、顧客と考え方が根本的に違う場合に、口先だけ調子を合わせるのではなく、顧客の息づかいを大切にしたうえで自分の意見を述べていくことは至難の業です。
 結局、本当に呼吸が合うのは、もともと考え方や気質である程度ウマが合う顧客か、それとも顧客がよほど寛容な(度量の大きい)場合ということになります。

 今回株券を引き出す顧客の場合は、株式投資に求めているものが私とはまったく違うということを強く感じていました。その顧客は、察するに、株価の流れに乗って大もうけを狙わず10%位ずつスイスイと利益を出していきたいのです。
 そういう売買を私は悪いとは思いませんが、なまじっかの感覚では難しいと思います。例えば、銀行株が上がり出したというので、大和銀行や中央信託を買おうとされます。首尾よく10%上がることもありますが、高値づかみになることも多々あります。
 問題は、銀行株がものすごく下がってきたときに、この前買った株は大丈夫かと相談を受けることです。私は、明快にお答えすることができませんでした。きっとその顧客は、理屈ではなく、気持ちににふんぎりをつけるためのきっかけが欲しいのだとは感じつつも、どちらつかずのことしか言えませんでした。

 様々な投資家が存在すべきだと思います。そして、様々な投資方法に合わせて、もっとも適した注文の出し方が存在するはずです。その意味で、ネット取引の急速な普及は大変によいことだと心から思っています。
 我々外務員は、顧客に対してなんらかの存在価値を発揮できない限り、今後粗大ごみ化していく恐れあることを強く感じます。
 
 今日、日経平均は200円安となり、また暗雲がたれこめています。二番底形成のはずがそれさえも危うくなってきていますが、今は一喜一憂すべきでないと思います。


第78回 個人投資家の変容<6/26>

 合同製鉄が143円と新値をつけてきました。しかし、当面は売りをお勧めする気がなく、またお客様の多くも今回は達観している人が多いようなので、相変わらず暇です。

 最近数週間は、外人が売りに回り、国内が総じて買い越しという珍しい形になっており、中でも、個人投資家が久々に相場のリード役になっているようです。
過去のこのような局面では、中低位株が乱舞するのがつねで、今回も中低位の動きが目立つ点では一緒ですが、その動き方に過去とはまったく違うものを感じるのは私だけでしょうか?

 過去は、ありていに言えば、単なるボロ株相場でした。まともな株の動きが悪いと見るや、つぶれそうな低位株などにホットマネーが集中し、破天荒な値動きをし、その値動きを見てまた投機資金が集まり、短期のババ抜きゲームが一時的に盛り上がるという形でした。

 ところが、今回の中低位株相場は、日々の値動きが地味で、その代わり息が長いという点で明らかに過去のボロ株相場と様相が違います。石川島や同和鉱はもう1年以上にわたって上げ相場を続けています。

 これをどう見るかについては、いろいろな角度からの考え方が可能です。

 去年の春のネットバブルの崩壊を境に、日本の中低位オールドエコノミー株の長期トレンドが歴史的な転換をとげたという角度からの解釈ももちろん可能です。

 実は前々回に、久々にハイテク株の買いチャンスと見て、古河電工を買いましたと書いたところ、その部類の銘柄は今後10年停滞だよとお叱りのメールを(ニューラルネット(株)経由で)頂戴しましたが、私もまさしくそのように感じております。ネットバブルの崩壊と並行して、日本の在来型中堅企業の中から、新しい評価を受けるものが少しずつ出てきたわけです。私もこの動きは、今後の日本経済の一つの動きを示唆するものだと考えております。(ただし、私の場合、在来型企業に加えて、日本の半導体や電子部品株に対しての長期相場観がその方よりだいぶ強気かもしれませんが)

 現在の相場様相に対して、国内投資家の投資スタンスの角度からの解釈も可能です。
 日本の投資家は、かつては機関投資家も含めて、その多くが大手証券の言いなりだった時代がありました。バブル期の野村によるシナリオ相場はその典型でしょう。
 それが90年代に入ると、今度は大手証券も含めて外資系証券のご託宣のままに動くという傾向が顕著になりました。その行き着いたところがネットバブルになったと思います。
 現在の相場は、大手証券の主導ではなく、外資系のレーティングをいちいち気にしているのでもなければ、仕手屋さんの情報による飛びつき買いでもありません。

 私は日本の投資家自身の感覚が今までになく価格に反映されつつある結果が、今の相場を今のような形にしていると思います。
 私の見るところ、在来感覚の証券マンは今の相場について行けないようです。彼らはなにしろ、お祭り騒ぎのような相場でないと大きな手数料が上がらない形になっており、静かにコツコツ上がるような相場は苦手ですからね。

 投資家の変容は今後も大きな趨勢として続き、日本の株式市場を変化させて行くのではないでしょうか。
 いろいろな投資家がいろいろなことを考え、その結果として価格が形成されれば、市場はよりクレバーな答えを出すはずです。
 日本ではこれまであまりにも少数の権威者(?)の意見が市場を左右しすぎ、投資家のよい相談相手になるべき証券マンがあまりにも不勉強だったと私は思います。


第77回 プロードバンド<6/21>

 いま9時半を過ぎ、寄り後一服の動きとなったので、また書きます。
 昨日の午前中は、やはり取りあえずの買い場だったようですね。現在が3月と明らかに違うのは、実態の悪さをだれもが知っていて、なぜ下がるかがはっきりと分かっていることです。
 悪くて下がる相場は、いずれはコツンと来るはずだという安心感があります。それが昨日だったかどうかは定かでありませんが、たとえ昨日が底だったとしても、まだまだ回復への道のりは長そうです。

 ナスダックJ市場の有線ブロードが連日のストップ安になっています。ソフトバンクグループがADSLの事業構想を発表したからです。前に書いたようにぼつぼつ勧め始めた矢先で、買ってもらった顧客もいるので、ストップ安は大変に痛いのですが、発表された構想があまりにもすばらし過ぎるので、やむをえない経過とも考えます。

 孫社長は、8月から事業を開始し、年内に100万件の申込獲得を目標に掲げています。100万件まで工事費無料ということなので、実現可能性がありそうです。また今度も構想倒れになるよと否定的に見る人も多いようですが、私は日本経済の発展のためにぜひ成功してほしいと心から声援を送りたい気持ちです。

 もし、ソフトバンクのADSLが成功すると、有線ブロードも光ファイバーの普及速度のうえで打撃を受けることになりますが、NTTはそれ以上ですね。NTTのADSLは、値段はおろか情報量の点ではるかに及ばず、次世代であるべきはずの光ファイバーでさえ(NTTのは)情報量がほぼ同等というのでは、とりえがまったくないとも言えます。
 ISDN(ネット64)という中途半端な「新」情報網へのこだわりに始まって、伝えられるところでは他社の新情報網整備の動きに様々な妨害工作をほどこすなど、NTTは日本のためにいったい何をしているのかと思いたくなります。

 いずれにしても、有線ブロードの株価のためには痛くても、ソフトバンクのADSLはぜひ成功してほしいですね。


第76回 久々にハイテクにもチャレンジ<6/20>

 10日ほど前に「待てば長い日々」という表題で2回連続書きました、相場全体の好転を待つなら、それなりに覚悟してかかるべきだろう、待つ以上は日々の動きに一喜一憂していちいちぼやいたりするべきではない、という意味でした。
 昨日は、朝高で期待した後、午後に入ってマイナス、日経平均は12,500円台に落ちるという一番がっかりするパターンになってしまい、このところ比較的静かだった我々の部屋にも、久々に愚痴や、怨嗟や、弱音や、悲鳴が乱れ飛びました。
 深刻に考えれば、いい形で反発を示しかけて崩れたのですから、よほど救いようがないと思えてくるのは自然です。しかし、今はそんなことをいちいち気にしていても仕方がないことだと思うのです。

 どう考えても、すっきりした相場なんか当分来てくれそうもありません。もしあるとすれば、ナスダック指数が突如吹き上げるときですが、アメリカのハイテク株の現状は、上にも下にも、急にはどうもこうもならない膠着状態にあるのではないでしょうか。

 ましてや、日本では2年3年かけて改革をやると首相が言い放ち、それが支持を集めているのですから、目先の一時しのぎで株式市場の望むような「対策」が出てくるはずがありません。

 私は、8月頃には、主にアメリカから答えが出てくるはずと考えています。
 この前、女房に、3ヶ月位我が家の収入は期待しないでくれと言ってしまいました。
 待つのを基本にせざるをえないと思います。

 本当は、我々は平均株価なんか無視すべきなのかもしれません。機関投資家と違って,我々は市場を買うのではなく個別銘柄に特化することも可能だからです。そして、例えば、前に書いたリケン(6462)のように、全体相場とまったく関係なく、毎日少しずつ上昇している銘柄も存在します。

 しかし、現実的には、お客さんは別として、我々セールス側からは、平均株価なんか関係ないという営業は無理です。地合いが悪ければ、目先的に当たりになる確率が落ちますし、第一にお客さんが乗ってきません。
 もしバフェットさんみたいな投資家が日本にも多ければ、平均株価と関係なく個別株を自信満々に勧められるのでしょうが、現状ではトーンダウンせざるをえません。

 したがって、このところ私は大人しくしているのですが、今日は久々にハイテクにちょっとだけチャレンジしようと思っています。
 例えば、古河電工の950円台を今さっき買ってもらいました。この銘柄はそれほど将来有望とは思っていないのですが、なんといっても、株価水準が魅力で、短期のリバウンド狙いです。通信設備関連株の下げも一巡近しと考え、3月安値接近のアンリツの1700円台は本格的にチャレンジしようかとも考えています。

 いま前場が終わり、合同製鉄は133円で1円安。四季報の来期1株利益10円というのは理解に苦しみます。経常利益が四季報の予想通りだとしても、最終利益はもっと多くてよいはずです。もっとも、株価の本質的な方向性は、そこに書いてある数字とは別にこれから時間をかけて決まっていくと達観しています。


第75回 合同製鉄<6/15>

 今日はいちだんとひどい相場になってしまいました。今、日経平均は12,600円出没の動きで、昨日にぎわった中低位株もふるいません。
 平均株価がここまで下がると、3月安値に対する二番底どころか、1万円割れだってあるかもしれないという不安がよぎりますが、私は現在目先の予想は捨てて、静観の構えに徹しています。
朝から伝票を1枚も書いていません。今月は歩合給をいくらもらえるか、考えるとぞっとします。昨日、家内が今月は住民税、住宅ローン、年金保険など払いが多いと言っておりましたが、女房が恐ろしくて株屋がやれるかと言いたいところですね。

 ところで、またかと思われるかもしれませんが、来週の顧客向けレポートに合同製鉄のことを書こうと思っていますので、ここにも簡単に書かせていただきます。

 今、合同製鉄は132円の3円安というところですが、昨年高値に絡んできた直後に、こういう地合いになっては、またしばらくもみ合いもやむをえないかと考えています。ただし、全体相場に下値感が出てきて、市場に買い気が戻った場合、平均以上に上昇するだろうと楽観しています。
 残念なことに、大手証券系のアナリストがこの銘柄についてはレポートを出していないようなので、来週出る会社四季報に来期の1株利益がいくらの予想で出るかも当面の株価に影響を与えそうです。
 この会社の傾向からして、東洋経済の取材に大きな目標数字を述べた可能性は少ないのですが、それでも来期の連結1株利益は20円台になっているはずだと私は考えます。

 目下、同社は月間3億円以上の経常利益を計上しています。このままのペースで行けば、通期では会社予想の35億円を上回り、40億円台になるはずです。
 しかも、現状くらいの景気悪化では、同社の採算が悪化する可能性は相当に小さいと考えられます。
 同社の収益源である鉄筋棒鋼のメーカーには、H型鋼の東京製鉄や大和工のような体力のあるメーカーが少なく、倒産した東洋製鋼や中山鋼業以外にもその寸前まで追い詰められた会社も多かったはずです。もし、安売り競争が続けば、合同製鉄もさらに赤字を拡大したかもしれませんが、体力の弱い競争相手がますます倒産し、結果的にはかえって高収益体質が早く確立したかもしれません。
 実際には、昨年から協調減産ムードが急速に強まり、安売りはしない、作り過ぎないということで業界の利害が一致しています。高炉と違い電炉の場合、生産量の調整が簡単にできるうえ、業界が減産方向に動いた場合、製品価格が引き締まる他に、原料のくず鉄価格が軟化するという二重のメリットがあります。
 長々と書きましたが、そういう構造になっていることから、当面、同社の収益源である鉄筋棒鋼の採算は好調を維持することがほぼ確実であり、来期についても増益のトレンドが続くと想定すべきだろうと考えます。

 昨日、発表された合同製鉄の信用買い残高は、依然1,000万株強とやや懸念すべき水準でしたが、今週外資系証券の買いが続いたことで、来週発表になる残高ではおそらく800万株台に減少すると思われます。
 上に述べた通り、来期の1株利益は30円(税負担なし)を想定してもおかしくない状況なので、1株純資産300円弱ということも合わせて考慮すれば、250円位の株価を目標にできると考えます。今後も、息の長い形で着実な上昇傾向を続けることを期待する次第です。


第74回 バリュー志向<6/14>

 外務員仲間のほとんどは、ため息をついています。中低位が結構にぎわっているので商売繁盛かと思いきや、最近の外務員は、ハイテク系が上がらないと元気が出ない構造になっているようです。
 私も、7千円台の東京エレクトロンなど半年前の期日に死に物狂いでクロスを振った建て玉や、京セラやアドバンテストのように3−4月に新規買いした株が、一時は大幅な利益勘定になったのに、今では評価損さえ出てきて、その面ではがっかりの相場状況ではあります。けれど、ハイテク一辺倒ではありませんので、銘柄によってはここにきて大幅高になり、総合的にまずまずの損益状況となっています。

 今日は、ニチメンが昨日に続く大幅高で、前場201円で終わりました。昨年の9月頃だったと思いますが、大和総研のアナリストが買い推奨のレポートを出したときは、ただの80円台だったと思います。
 その頃は、まだ国内系の中低位株にはだれも見向きもしない風潮でしたので、よくぞボロボロの株価にめげずに堂々としたレポートを出したものだ、偉いと感心し、それ以来私もニチメンファンになりました。
 そのときと今と、ニチメンの企業内容はそれほど変わっていないはずです。今期予想1株利益28円は全然意外な数字ではありません。しかし、株価が200円をつけてくると、俄然、なにかしら立派な会社に見えてきますし、ますます割安感が強く感じられます。

 考えてみれば、前期は特損計上で無配になったものの、今期は5円復配がほぼ確実、将来は増配さえ考えられる会社が、なぜ100円台の前半で取引されていたのか不思議です。
 株価が上がって初めて割安だと感じられる。このところ人気化している銘柄には、多かれ少なかれそのような傾向があると思います。

 市場がバリュー志向を強めているのは非常によいことだと思います。株式の醍醐味の最たるものは成長(グロース)の夢なのでしょうが、割安株に投資して率のよい配当金をもらうこともまた大変な醍醐味であることは疑いありません。
 夢の好きな投資家は成長性を買い、別のタイプの投資家は現実の企業内容を買う。もし投資家の多くがそのいずれかで、株を持っていることそれ自体に満足を感じているなら、たとえ相場が悪くて思うように値上がりしなくても、ため息ついたり、ぼやいたりしなくてもすむはずです。

 株は勝つか負けるかのゼロサムゲームなんかではない。私はそのことを声を大にして叫びたいのですが、これまでの日本の株式市場では、そんな考えが一笑されてしまうほど、ババ抜きゲームの要素が濃厚だったと思います。
 欲を言えば、現在の市場はあまりにも現実(PER)を重視するあまりに、成長の夢に対して冷淡になり過ぎているのではないかと思います。
 今日の日経金融で、有線ブロードに対して「PERが高すぎる」と書いてあったのにはガク然としました。まだそれほど買ってないので、利害関係で言うのではありませんが、これから新規大事業に取り組もうとする会社がもし低PERだったら、その事業は止めた方がよいと市場が判断していることになり、それこそおかしな話です。

 ところで、合同製鉄が昨年高値の140円をつけてきました。今週は日経商品欄の棒鋼価格が関西で下がったのでちょっとがっかりした矢先でしたが、やや弱目に見ても、実質1株利益は15円の水準であり、5円復配も有望であることから、来年にかけての株価には大きな期待をかけています。もっとも、そう考えているのは私だけではないようで、過去2年間、この銘柄は仕手株もどきに短期的に急騰し、あっけなく急落しましたが、今回は今のところ、実に着実な足取りです。おそらく、売買に参加している投資家の質が変化したためと思われます。


第73回 待てば長い日々(2)<6/12>

 今日は、天気も悪いせいか、ひときわ暗いムードの漂う相場つきですね。
 WDMなど光通信関連の設備需要が、業界の思惑に反して今年はマイナス成長になるという報道が、ハイテク株全般の株価に響いているようです。半導体なら今年は悪くても当たり前とあきらめている人が多いはずですが、光通信分野ではまだまだ期待していた人が多かったですからね。
 ネットもだめ、携帯もだめ、ケーブルもだめというのでは、IT関連株全般にがっくり気分が漂うのはやむをえないことでしょう。

 96年くらいまで、日本の株式市場では、ハイテクがだめなら、内需があるさという気分が濃厚でしたが、二極相場とそれに続くネットバブルの中で、ハイテク株を馬鹿にする人が減って、以前は建設と造船しか持ってなかったような投資家まで、ソフトバンクやソニーなどを在庫株にしている時代になったので、ハイテク株安は相場全般を暗くしてしまうようです。

 ところで、昭栄へのTOBで名前をはせた村上氏が、最近はサイバーエージェントやクレイフィッシュなど、急落したネット関連株の大株主として登場し話題になっています。本来、バリュー投資とは対極にあるはずのこれらの銘柄に、その資産価値の側面(PBR)から投資魅力が出てきているのは皮肉なことです。

 市場の反省点として考えなければいけないことは、まず事業のために必要がないお金を株式市場が供給し過ぎたのではないかということです。(村上氏は公募増資で集めた使い途のない金を株主に払い戻せと言っています)
 第二に、いろいろあったクレイのほうはともかく、サイバーエージェントはその創業者の経営資質を高く評価され、かつその評価自体には大きな変化はないはずです。それなのに、環境が悪化したからといってただちに資産価値を大きく下回るほど売り込まれてしまう、一方通行的な株価形成は考え物だと思います。(ベンチャーでPBR1倍以下というのは、その経営者の価値評価がマイナスということです。私は別にその社長のファンではないですが、わずか1年前にもてはやした人たちの気持ちが今は冷え込んでいるのだとしたら、あまりも評価の哲学がなさ過ぎると思います)

 しかめつらしいことを書きましたが、ここにきての相場展開から、ハイテク株について前向きに考えるなら、相当腰を入れて考える必要があると感じるからです。
 ハイテク製品の需要の回復は、どうやら年内には難しそうです。それどころか、来年もまだ無理というような意見さえ台頭しつつあります。
 したがって、ハイテク株に投資するなら、もうそろそろとか、もしかすると明日にも来るんじゃないかとか、目先に期待するあまり、その結果に一喜一憂する姿勢では、日々のもたつきの中で気持ちが持たないのではないでしょうか。
 現在の状況を持ちこたえるためには、1年でも2年でも喜んで待つぞ、というような達観が必要だと思います。どんなに悲観的なストーリーを想定しても、半導体と通信の設備投資需要はいずれ回復し、成長するはずです。

 幸いにして、合同製鉄やアイカ工が堅調なので、私自身は元気なのですが、ハイテク株が本格上昇に転じない限り、全体相場は元気にならないのではないでしょうか。そして、毎日、ただ待っているだけなら、イライラがつのるだけです。
 長い日々をいかに達観して有意義に過ごすか、前向きに考えていきたいものです。


第72回 待てば長い日々<6/7>

 SQ明けの株価上昇に期待する意見がわずかにある一方で、日本の株は当分上がらないのじゃないかというムードが支配的になってきました。
 諸外国の例でも、株価が本格上昇に転じるのに政権交代から2年くらい必要だったと、今朝の12チャンネルで外人ストラテジストが言っていました。
 そういえば、1980年にレーガン大統領が「強いアメリカ」政策を始めて、金利がぐんぐん上昇し、82年の夏には荷物をまとめて故郷に帰ろうかと思うくらいひどい相場になったことをまざまざと思い出します。

 実際、今の日本が、つけ焼刃の改革ではなく、本物の構造改革の途上にあるとするなら、すいすいと株価が上がるはずがありません。米国は、レーガンが出てからでも2年近く、その前にボックス相場が14年も続き、株式市場は死滅してしまったという本さえ出たのですから、日本もあと4−5年くらい往来相場が続いても不思議ではありません。

 日本の普通の投資家にとって、3年先5年先というのは長すぎるようです。結果的に10年以上も前の以上高値の株は持ち続けていても、3年でも5年でも持つぞという気構えで株を買う人はごく少数です。おそらく機関投資家でさえ、インデックス型を除けば、わりと短期志向の風潮が強いのではないでしょうか。ましてや、証券マンときたら、半年先どころか1ヶ月さえ待てないという連中がほとんどです。

 そのような中で、3年後の日本はどうなっているかを真剣に考え、仮に正しい判断を下したとしても、相場的に成功するかどうか微妙です。むしろ、判断が正しい場合にこそ失敗する確率のほうが高いかもしれません。(私は、比較的長いタームで投資の成功不成功を考えるほうですが、それでも、買った株が半年後に半値になっても、現物でじっと持っていて最後に2倍になれば成功だとは職業上考えられません)

 すなわち、今の日本の市場では、仮に理論的に正しい海図があったとしても、日々の外人の売買動向以外には目先の方向を定める羅針盤がなく、我々日本人は海図なき航海をしているのとなんら変わりがありません。

 おそらく、アメリカに劇的な変化が起こらない限り、この状態は長く続くのでしょう。ボックスの上限下限はいまだ定かではありませんが、例え海外連動で日経平均の上限が1万6千円にせり上がったとしても、日本の投資家にはいつまでたっても方向感がつかめない苛立ちと先行きへの不安感がつきまとうでしょう。

 私は、第一部市場のPERがほぼ30倍とよほど経済の悪化を考えない限り売られにくい水準にあることから、現在の1万3千円はボックスの下限にあると楽観しています。そして、上限については、アメリカのハイテク株に比較的強気なので、場合によっては年内にも1万7千円台にせり上がるのではないかと考えています。しかし、それでも、現在の相場状況では喜んで日本のハイテク株を買う気にはなれません。結果的には多分上がるのでしょうが、きっと上がるぞという心のときめきが涌き上がって来ないのです。

 日経平均は今60円高、気乗り薄な相場の中で、注目株の京セラが740円高の1,1800円、ふだんなら、すわ見直し相場の始まりかと大いに心がときめくはずですが、どうせ一過性だろうと冷めた思いのほうが先に立ってしまいます。

 だれにとっても、待つ日々です。力んでも仕方がありませんし、嘆いてもなんの意味もありません。問題は、何をどうようにして待つかです。

 買うべきか、売るべきか、はっきり自分の答えが出せるまで、様子を見ていよう。それはそれで、立派な対応だと思います。
 私は、本格的には、2年後3年後の半導体関連の業績回復に備え、京セラ、アドバンテスト、東京エレクなどの残高をゆっくり増やしていきたいと考えています。それと並行し、国内系の業績回復銘柄(例えば合同製鉄)はまだまだ大きな相場を作りそうなので、もっともっと買ってもらおうと考えています。

 しかし、一流ハイテク株なら喜んで買う人も、合同製鉄、ニチメン、リケン、アイカ工などはなかなか買いません。5年位前まではこの逆だったのですが、二極化相場でぼろ株志向が根強かった日本の投資家もすっかり優良株志向となってしまいました。これは、もちろん悪い変化ではありませんが、例えばバブル崩壊後に建設株が個人投資家の一番人気であり続けたように、直近の活躍イメージに左右されているだけの可能性もあります。

 その点では、これからの長い日々の中で、投資家が顔をそむけたがる中低位株や、万年不人気の小型好内容株のイメージチェンジが、次々と起こってくるのではないかと期待しています。

昨日、前沢給装がストップ高したり、サミーが再び吹き上げたり、日経平均の上げにはつながりませんが、意外な銘柄の活躍がこのところ目立っています。
 これを単なる幕間つなぎと考えるか、この動きの中から、第二第三のユニクロが出現する可能性もあると考えるか、それは大きな分れ目でしょう。


第71回 日経平均1万3千円割れ<6/5>

 今日は久々に下腹にズキンと来る下げですね。先週もズルズル下げましたが、みんなに余裕がありました。儲かるはずのところが、思うように行かないなという苛立ちこそあれ、損金の心配などだれもしていませんでした。

 まだそれほど深刻ではありませんが、一部では追証が出始めました。もっとも、出しているのは、常連の担当者で、いつも下げる直前になぜか決まって強気になってしまうタイプのようですね。

 もっとも、私だって、人のことを言えるほど下げに備えていたわけではありません。5月は、信用で腹いっぱい買うほどに強気ではなかったので、信用保証金には十分余裕がありますが、半導体関連では大幅利食いが小幅ながら損勘定に転じた建て玉がごっそり残っています。

 負け惜しみをいうわけではありませんが、類は類で、私の顧客は信用でも現物感覚で思いきり欲張る人が多いようです。例えば、アドバンテストを1万2千円前後で買って、1万5千円台までほぼ直進したのですが、少しは売ってみたものの、ほとんどそのままです。私も顧客も当面はこの位が限界と感じてはいるのですが、長期的には日本の半導体製造関連に非常な魅力を感じているので、持って損をすることより、万一異常高になった場合に持っていないことを怖れに感じてしまうのですね。

 半導体関連に加えて、合同製鉄やカテナなどに大望を抱いている関係上、よくも悪くも塩漬け状態になっている資産が増加してしまいました。その分手数料は上がりにくいのですが、いつの日にかに期待し、目先的には我慢しています。

 もっとも、目先的にも資産の一部でチャレンジしようよという顧客もいて、これが有難い手数料源になっています。
 今日下がっていますがサミー、昨日に続き高いビジコンなど、5月以来結構もうけさせてもらっています。
 この両銘柄が5月月間の値上がり率1位と2位だそうですが、小型で成長魅力があり今期増益、しかもPERが低いという共通点があります。

 6月は、ナスダックJの有線ブロードに注目していこうと思っています。東京メタリックのつまづきで、連想安となりましたが、NTTに対抗する光ファイバー通信網の収益化の夢は買えるはずです。

 合同製鉄は今日も119円中心の動き。外資系のアムロが下値を買い続けているので底堅いものの、先月人気化したときに買い越した国内系証券から売り物も結構出てきますね。私のお客は信用では76円(1月)から120円(先月末)まで、ほぼ全員持ったきりです。


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