第90回 今こそグローバルワイドで考えたい<7/31> ソニーやドコモが日本株のエースであることは疑いありません。そのエースの株価ががたがたになっているのですから、ただでさえ不良債権にあえぐ日本株市場が「世も末」というような下げ相場になってしまうのは、やむをえないことかもしれません。 しかし、日本経済を1つのチームとして見ず、世界経済を1つのチームとして見た場合、 今の日本経済は、残念ながら世界のエースではありません。 かつては、自分ひとりで世界を引っぱっているように自惚れたこともありますが、この10年間は負けが続き、世界のお荷物に近い存在であったことは明らかです。 小泉首相が各国の首脳に改革の決意を表明したのに対し、どの国からも暖かい励ましの言葉があったそうですが、当然です。このままずるずる負け続けられるより、しばらく休んで出直りをはかってもらいたいというのが諸外国の率直な気持ちでしょう。 その点、アメリカはこの10年間、世界のエースであり続けました。野球でたとえるなら、毎年30勝5敗くらいの驚異的な活躍を続けたようなものです。それに対して、ヨーロッパは15勝10敗くらいのまずまずの成績、日本は5勝15敗くらいのひどい成績というのが大雑把なイメージです。 そのアメリカがさすがに疲れて、もしかしたら肩を壊したかもしれないというのが現在の恐るべき状況です。 もしアメリカが肩を壊したののなら、これは大変です。今の日本のように、しばらく休んでまた頑張ればいいじゃないかとは簡単にいえないはずです。 先週、古河電工が筆頭株主であるJDSの投資評価損が、なんと5兆円以上になることが報じられました。1社でこれだけ莫大な評価損が発生するのですから、もしITバブルの反動が深刻化した場合、日本の土地バブルと同じような歯車の逆転が起こり、世界経済がデフレスパイラルに落ち込んでいく可能性は十分あります。 だから、私も今が株の絶好の買い場と断言するつもりはありません。アメリカが大丈夫かどうか私に分かるはずがないからです。 ただし、これだけは言えます。米国の株式市場に比べ、日本の市場はあまりにも悲観一方に傾きすぎているようです。 米国の株価で見る限り、米国経済はまだだめと決まったわけではありません。いや、今はカラ売り残があるからいいけど、そのうち崩れるよという人もいます。もしかしたら、そうかもしれません。しかし、日本が崩れたから、米国も崩れるのではないかという感情に少しでも支配されているとすれば、その予断は経験則からははずれる確率のほうが多いと私は思います。 いずれにしても、ソニーがだめだからハイテクはだめだ、日経平均が新安値を更新したから先安だ、などというこれまでの常識的な判断では、ヘッジファンドにいいように右往左往させられるばかりで、現在の相場には通用しない可能性が高いと考えます。 今、これを書いている最中に、日経平均は218円高になり、なんと昨日の下げ幅を一時ほぼ埋めました。だから、強いとはもちろん思えませんが、最安値に突っ込む直前の「98年9月に酷似」(今朝のTV)などと、日本株の状況だけで相場観を決めるのは非常に危険だということは確かだと思います。 私は先週申し上げた通り、相場的には強気含みながら中立、価値に自信のある個別株に強気というスタンスですが、もし米国の半導体株指数が700超になれば、完全に強気転換したいと思っています。ちなみに、その現在値は605で、ナスダック指数の2倍くらいの変動率があるとはいえ、まだまだ距離があります。 |
第89回 二進一退か一進二退か?<7/27> 昨日の松下通信に続いてソニーの業績悪が表面化し、ドコモに莫大な投資評価損が見込まれるなど、実態の悪化は止まるところを知りません。 買うべき材料は何もない、だから株はまだ下がると見る人が多いのもやむをえない状況と思われます。 しかし、私にとっては、買うべき材料が少なくとも一つだけはあります。それは、「どう考えても安い」と思える銘柄が増加していることです。 去年のネットバブル真っ盛りの中で、例えば石川島は100円近くまで売られました。「どう考えても安い」と言えば、「造船株なんかに買いが入るか」と鼻でせせら笑う人が非常に多く存在していました。 人気がなければ株が上がらないのは事実です。しかし、人気はつねに移ろうもので、今はだれも石川島のことを100円でよいと思わないはずです。 機関投資家や短期売買の投資家は、株の値打ちを主に他の銘柄との比較で行います。それに対して、投資家の中には、その銘柄の絶対的な価値を自分なりに目分量することによって投資判断をするタイプも存在します。 私もその一人ですが、株の絶対的な価値を重んじるタイプにとって、現在はまさによりどりみどりの投資環境になっているはずです。 あるタイプは、配当利回りや解散価値に重点を置き、足元を固めながら、確実に利をえようとします。 別のタイプは、成長性に重点を置き、多少のリスクを負担しても、大きな利を狙おうとします。 私見では、現在の状況では、バリュータイプも割安ながら、小型成長株系により割安性があるのではないかと思っています。 ほんの一例ですが、東証マザーズのリアルビジョン(6786)の140万円台は、今期予想PER100倍超ながら、実質的には大幅に割安なのではないかと考えています。 画像処理で世界最高速の認定を受け、これから収益が急拡大することが相当な確率で見込めるからです。もっとも、可能性は可能性であって、世界不況が深刻化すればそうはならないと悲観的に考える人には向きません。所詮、成長性を買うということは、収益変動の非常なリスクを伴うのが当然で、松下通信が5年間の成長が間違いなしという太鼓判を捺されている頃は3万円近くでも「買い」で、今度は赤字だから「売り」だという投資判断は明らかにおかしいと思います。(松下通信の時価に魅力を感じるわけではありません) 個別株のことを長々と書いたのは、現在の相場状況の中で、ある程度の信念を持って行動するために、株の絶対的な価値に信頼をおけるかどうかということが問われていると思うからです。 米国にはやや明るい風が吹き始めました。もしかすると、大底をつけたのではないかという期待も生じますが、仮にそうであっても、当面は日米とも目の覚めるような大幅上昇は無理でしょう。 98年の場合も、二番底からの上昇は最初は緩やかでしたが、今回は特に不透明な動きが続く可能性があります。現時点が二進一退なのかか一進二退なのかは、おそらくずっと後になってからしか分からないことかもしれません。 そのような中で、私にできることは、銘柄個々の投資価値を重視したうえで、これはと思える銘柄に強気行動をとっていくことです。 銘柄的には、魅力を感じるものは多数ですが、自分がよく知っている銘柄のほうがより安心感を持てます。したがって、中低位で1銘柄だけ選ぶとなれば、私の場合またかと思われるかもしれませんが、前場終値106円の合同製鉄になります。ハイテクでは戻り狙いでアンリツの1344円、長期でステラケミファ(4109)の2915円などです。二部店頭はそれこそ宝の山ですが、前述のリアルビジョン147万円に目下注目しています。 |
第88回 株の恐ろしさ<7/25> いまさら何をいうかと思われるかもしれませんが、昨日今日の日本株の動きには、つくづく株価変動の恐ろしさ、予測の難しさを思い知らされています。 昨日の朝、ナスダックの2000ポイント割れを受けて続落で始まるかと思われたところ、比較的にしっかり始まりました。この時点では、この堅調を喜ぶどころか、アク抜けが先に延びたと見る人も多く、まさかその日の2時過ぎから大幅高に転じるとは誰も考えもしなかったはずです。 今朝の段階でも、「昨日なまじっか上げたために、かえって相場がこじれた」と嘆いている人がTVに出演していました。 目先好材料はなにもない、だから底値感が出るためには、3月のように思いきり急落した後に反騰するというパターンでなければ難しいだろうという意見が大勢だったのです。 私自身も、昨日は朝から様々なお客様から相談を受けましたが、目先の相場に対しては弱気気味の意見に終始してしまいました。最終的な結果はもちろん分からないものの、少なくとも、私があと一押し強気意見を述べたら、目先の結果は大きく変わっていたという悔いが残ります。 ともあれ、日本株が当面の底をつけたのは、ほぼ確実と思われます。とすれば、狼狽売りや追証売りやストップ・ロスの売りがなくなる分、目先日本株が思いがけず軽く値を戻す可能性が出てきたわけですが、その戻り幅を決めるのは、今日ストップ高している古河電工の明日の値動きだと言ってもよいと思います。 私は1000円以上の古河電工については、中立意見です。機関投資家はナンバーワンの銘柄が好きですから、場合によっては新しい国内ナンバーワン企業として住友電工の株価を追い抜くかもしれませんが、WDMの成長の夢が復活しない限り、内容的には住友電工より相当下にしか評価できないと私は考えます。そして、もしWDMの夢が復活してくるのなら、ハイテク全般に株価回復の夢が広がります。 間もなく前場が終ります。日経平均70円高とますます堅調です。 |
第87回 相場観の再検討<7/23> 今日は、月曜日の朝早々に結構な売り物です。 我々の仲間はみなうめいています。ふだん、主力株にちょっと買いが入ると、底だ、底だと騒ぐ人も今朝は元気がありません。 私も、追証まではまだ少し余裕があるものの、急落した場合はあっという間なので、顧客別に傾向と対策を練りはじめました。 先週の18日、かねてから満を持していたタイミングが完全に裏目に出て、私の相場観は白紙同然となりました。本来は、裏目に出たのだから、この際にいっきょ弱気転換してしまうのが本道かもしれません。事実、そんな気持ちにもなりました。 しかし、3連休の間に、ナスダック指数が思いがけず堅調に推移したので、また私の気持ちは変わりました。なんと言っても、世界経済がぶっつぶれでもしない限り、今は欲しい株がたくさんあるのは事実で、多分、長い目で見れば、全体的にも今は安値圏であろうという感覚が弱気転換を邪魔します。(私は、ここで書くほどのこともない非常にマイナーな銘柄を今日自分のお金で買いました) それやこれやで、結局今週の顧客向けレポートの表題は「日米株価底入れの可能性(2)」ということにしました。先週の(1)が18日をめどに底入れ反転の可能性が高いという意見であったのに対し、今週は、8月までには底入れするだろうとやや後退したものの、売るよりも買うことを考えるべきというスタンスは継続しました。 目先的には、日経平均の1万円だってありえないことではないと私も思います。ただし、日経平均1万円前後は、上がりかけの84年の頃相当にもみあった実績もあり、簡単にはすっ飛ばさないはずで、もしあるとすれば、世界経済が完全に暗転するときではないかと考えます。 一方、楽観的に考えれば、ナスダック指数が2000ポイントを下値抵抗ゾーンにして、上昇に転じる可能性があります。その場合、日本のハイテク株も当然上昇するので、日経平均の反騰確率が高まります。 いや、ハイテクがどうであれ、銀行株が下がっているうちは日本株はだめだ、と言う人もいます。しかし、私は日本の都市銀行株は本来的な投資魅力が少なく、その水準はバブル以来つねに割高か割安かではなく気分で決まっており、その上げ下げにあまり大きな意味を持たせるのはどうかと思います。(つまり、銀行株がひどく安いということは、単に相場の先行きをひどく悲観している人が今は多いということを示しているに過ぎず、現実の先行きがどうなるかはまた全然別の問題ではないでしょうか?) 株の難しさは、一面では美人投票でありながら、あまりに票が集中すると、逆転の動きが起こることです。だから、今日のように、明らかに弱気が市場に多い場合、それと同じ方向に動くのがよいのかどうかは、結局のところ、分かりません。 だいぶ前に、市場が世も末と悲観しているときは少なくとも一時的には買いチャンスだと思うと書き、実際その日はそうでしたが、今日の場合は、今夜にもナスダックが2000ポイント割れになったら、とりあえず明日の朝も続落でしょうから、簡単に買いチャンスなどとは言えるはずがありません。 結局のところ、私のスタンスでは、目先の上げ下げより何より、世界経済がだめになる可能性についてどう思うかを顧客に聞き、だめにはならないという可能性に「賭ける」というのが顧客の意思であれば、これから8月にかけて買いチャンスを狙っていくということになりましょう。 8月にこだわるのは、参議院選挙明けに期待しているのではなく、遅くとも8月中には、米国のクリスマス商戦の傾向が判明するなど、いろいろな意味で米国経済のソフトランディングの成否に対して答えが出てくると考えるからです。 ここまで書いたところで、前場が終わり、その状況をある顧客に伝えたところ、「ここまで来れば、日経平均が1万円ったって、率的にはたいしたことない。1万円を割ったって、日本がつぶれるわけじゃない」と至極明快な判断で、わりとまとまった後場の注文をもらいました。この方は本業がものすごく忙しい人なのですが、下げ相場での割り切りのよさには、いつも頭が下がります。 今、後場が始まり、東京エレクが100円高と引き続き堅調です。これも銀行株の下げと同じ意味で、相場の先行きの判断に対してあまり大きな意味を持たせるのは危険かもしれませんが、少なくとも相場の先行きに対して希望を持つ人が日本市場に存在しているということだけは示しているはずです。 |
第86回 戦機遠のく?<7/18> 待ちに待ったインテルの決算発表ですが、今のところの展開は、期待はずれの結果になっています。 期待はずれの第一は、決算が案外によかったことです。決算がよくては、悪材料出尽くしかどうかの下値試しにはなりません。 第二に、決算がよかったにもかかわらず、時間外取引で株価が伸び悩んでいることです。しかも、インテルは今後についても明るい見通しを表明しました。にもかかわらず、今夜の本取引でも買われないとすれば、ハイテク株の上値が非常に重い、すなわち業績回復の道はまだ厳しいということをだれもが認めざるをえなくなります。 半導体がだめでもソフトは大丈夫さ、と言う人がいます。また、ソフトも含めてハイテクはまるでだめだが、中低位株は違う、と言う人もいます。いずれ相場が落ち着けば、それやこれやの検討が必要なのでしょうが、今はそれどころではないと私だけでなく思っているはずです。 半導体の回復を伴わずに、米国経済のソフトランディングをどうイメージできるでしょうか? コーラや薬などではもはや経済成長を支えることはできません。 ハイテクがだめだとすると、基本的に株は買えないと私は思います。 書き出した頃は、日経平均は小幅安でしたが、さっきついに1万2千円割れとなりました。今回は3月と違い、急には大幅安をしそうもありませんが、上値に対する期待感も大きく後退していることは否めません。(ちょうど、ここで顧客から電話があり、やや弱気の意見を言ってしまいました) もっとも、本当にだめかどうかは、まだもちろん決まったわけではありません。今夜ナスダックが大幅高することだってあるでしょうし、日経平均だって1万2千円前後で横ばいを続けていれば、底堅いという評価が次第に次の上げに結びつくかもしれません。 いずれにしても、今の私は相場観を喪失した状態ですので、うかつに予想などすべきではなく、当分はなるべく日和見状態で行くしかありません。 ところで、アンリツが69円安の1390円と連日の安値更新です。これは相場観と別に、他のハイテク株の水準との比較から不思議に思えます。 まだ、米国経済が完全に頓挫するとは決まったわけではないのに、この銘柄だけがずば抜けて悲観されているように思えます。アメリカの通信機器関連が急落しているといっても、銘柄ごとの選別はあっていいはずです。アンリツの場合、WDMだけが業績躍進の理由ではないので、よほど世界の通信設備需要が悪化を続けない限り、簡単には元の低収益会社に戻らないのではないでしょうか。 この会社が去年後半のハイテク安の中で、3000円台で人気化していたのも他の銘柄の水準とのバランスからずっと不思議に思っていましたが、今の状態もそれと同じ位不思議に思えます。(ただし、不思議に思うだけで、今は買いを入れていません) 追記 不思議と書いて漠然としているのでやや具体的に補足します。 去年12月にアンリツが3620円の高値をつけたほぼ同じ頃、東京エレクは6240円の安値をつけました。この時点で、東京エレクの予想1株利益は300円以上、アンリツは70円程度でしたから、それだけ通信機器業界の前途が楽観されていたわけです。 しかし、それから7ヵ月後の今、東京エレクは赤字もありえるが、2年後には前期レベルに回復可能性があるということで、7000円前後の水準を保っている一方、アンリツは業績悪化を悲観されて前場終値1383円です。つまり、東京エレクのちょうど5分の1の水準ですが、私には東 京エレクの業績が将来、前期水準まで回復するとすれば、よほどでない限り、ブロードバンドの設備需要も盛り上がっていると考えるべきで、アンリツの1株利益は100円以上、すなわち東京エレクの3分の1以上あると考えるのが普通だと思います。 |
第85回 天王山を前にして<7/16> 今年の夏が日米の株価の長期波動にとって重要な意味を持っていることは疑いないでしょう。日本株に限ってみても、もしこの夏じゅうに二番底確認にならなければ、バブル崩壊後の急落の後にはつねに相当な反騰局面があったのに対し、今回は短期的に本格反騰できないという初めてのケースになります。 再三書いている通り、私は、インテルの決算後の18日の米国株動向が大きな分岐路になる可能性が高いと考えており、今日明日は、多少の上げ下げがあっても動じないこととしています。 相場のほうも、全体的には模様眺め気分が非常に強く、動意薄ですね。ただし、局部的に見れば、結構動いています。 サミー(6426)の800円高は圧巻です。外人にも注目され始めたということで、年初から3倍高しても、まだ割安に感じられるから株の恐ろしいところです。 一方、同じくPER割安のはずのアンリツ(6754)は、今日前場で1475円と年初来安値を下回ってしまいました。この株は、去年の12月、半導体関連がガンガン売られ、東京エレクが今に至るまでの最安値をつけたあたりで、業績に安心感があると言われ、3620円と史上最高値近辺に買われていたのですから、株の恐ろしさをつくづく感じます。 先週、ハイテクが急反発した日に、指値して買えたのはアンリツだけでした。あの日、安値から5%以内に指値して、買えたのは結局この銘柄だけだったのですが、やはりそれだけ弱く、再び安値更新となったわけです。 通常なら、弱いには弱いなりの理由があると警戒すべきでしょう。でも、今のような局面では、そんなことをいちいち気にする必要はないと考えます。すなわち、今大切なのは、ハイテクを売るか買うかであり、もし買いを選んだ場合、どうせ買うなら戻りに転じた場合にどの銘柄が効率がよいかです。 今日の軟弱相場の中で、半導体関連では、信越化学とニコンが大幅高しています。ニコンの理由は分かりませんが、信越が買われている理由は、業績に不安がないということでしょう。そういえば、ステラケミファ(4109)も薄商いでなんと240円高しています。 昔の相場感覚では、相場の弱いときに強い銘柄は、相場が好転したときにリード役になることが多いと考えられました。しかし、機関投資家主導になった今、その考えが通用しないことのほうが多くなっているはずです。なにしろ、機関投資家の中には、半導体がだめになっても、アンリツは大丈夫と判断するようなタイプもいるのですから。 結局のところ、今日の上げ下げなんかたいした意味がないのではないかと考えていたところ、私の注目株ステラケミファも、ほんのわずかな売り物で3150円から、2900円台に急降下してしまいました。この動きこそ、今の相場を象徴していると思います。 それやこれや考え、18日以降、もし強気に転じたほうがよいと自信が持てたとき、どの銘柄を買うべきかを検討しています。 半導体値嵩では京セラが第一候補です。なんといっても、今期予想PERが低いので、市況好転の場合、東京エレクなどより安定した株価反応が期待できるからです。もっとも、割り切って勢いに徹すれば、東京エレクになるでしょう。理屈では、なんでこの銘柄はこんなにタフな動きをしているのかと思いたくなるのですが。 戻り狙いでは、今回のハイテク安の元凶であるネットワーク関連も(弱いからこそ)注目すべきと考えます。アンリツは多分減益必至でしょうが、相当悲観的に見ても1株利益は60円以上あるはずです。会社の5年後目標数値である経常利益500億円(1株利益換算200円以上)を考慮せずとも、時価1500円に割高感はないと思います。 (ただし、古河電工や板硝子と同様、私は大きな期待をしたいとは思いません) |
第84回 一部で強気行動<7/12> 今日は朝から久しぶりにドタバタしました。昨日、「来週に備える」と書いた矢先でしたが、来週決算発表のマイクロソフトが売上高の上方修正を発表するなどで、米国のハイテク株に上昇期待が急に高まってきました。 来週まで静観を基本としていたところ、顧客とあらためて対応方針を相談する必要が生じたのです。 その結果、そこそこの買い注文を出すことになりました。半導体が本命と見て東京エレク、アドバンテストの製造装置関連、直近の値下がりがきついのでリバウンド狙いの古電工、アンリツのネットワーク関連などにです。ただし、いずれも安値狙いの指値にしたので、買えたのはアンリツだけになりました。 冷やかしみたいな注文が多くなってしまったのは、こういうわけです。 私がどうしますか聞くと、ぜひ買おうという積極的に乗ってくる顧客がいます。しかし、そういう顧客は、当然ながら、すでに株に資産をつぎ込んでおり、これ以上は今の段階では冒険してほしくないと思う状態にあります。だから、なるべく買えないような値段を提案してしまいます。 一方で、信用の担保がガラガラに空いていたり、資金に十分な余裕がある顧客もいます。 私は、そういう顧客には、とりあえず今朝あたりは成り行きで打診買いを入れてほしいと思ったのですが、そういう顧客に限って、せいぜい前日の値段に若干のいろをつけた指値の注文しかくれません。 欲しがる人には余裕がなく、余裕がある人は欲しがらない。株が安いときはつねにこのミスマッチがあるのでしょうが、そのもどかしさに身もだえしながら、後場に入っています。 明朝は、半導体のAMD、ラムバスとネットワーク製品のジュニパーの決算発表が注目です。理想は、その決算は悪くてもその銘柄は下がらず、他がますます買われることです。 私は、想定としてはナスダックは今晩に続き、金曜日も続伸、月曜日あたりに一服して、インテルの決算発表前後に、本当の方向性が出てくるのではないかと考えています。 私はもちろん昨日が日経平均の二番底で、今日が雄大なる日本株上昇の始まりの日であってほしいと思います。 しかし、それは願いであって、確信なんかとても持てない以上、今日の段階では、ほんの一部の強気行動しかとれないまま過ぎていきます。 |
第83回 来週に備える<7/11> ふだん、株式業界紙は走り読みくらいしかしないのですが、日本証券新聞の「相場を斬る」というコラムは大変面白いと思っていました。しかし、今日の文章を読むと、書いている人のセンスに疑問を感じざるをえません。 文章の結論は、<私の心配していることが実現するならば、これから「円」はびっくりするほど安くなるのであろう>です。今の日本の状況はかつてのソ連に似ており、小泉首相の立場はゴルバチョフに似ている。ソ連の崩壊後に経済は混乱し、超インフレの時代が来た。だから今の日本は心配だというものです。 私が疑問に思うのは、この筆者はいったい何を言おうとしているのかということです。 読者として素直に読めば、株はまだまだ下がるという相場観として受け取れます。 しかし、相場観としてはピントが相当にずれています。現在の株安の本質は「日本売り」なのでしょうか? 少なくとも、90年代のように日本株だけが際立って売られている事実はないはずです。外人がハイテク株を売っているのは、世界中のハイテク株の前途に不安が生じているからのはずです。もしこの文章が相場観だとすれば、火事で大騒ぎしている真っ最中に、次の火事に備えて火災報知器を買えといっているようなものです。 いや今回は株の話ではないという見方もできます。世の中全般に漠然と警鐘を鳴らしているのだという受け止め方もできます。しかし、筆者の意図がどうであれ、これを読んだ投資家は、やっぱり株は下がるのではないかと思うはずです。そして、現実に株が下がれば、ほら、かねてから自分が警鐘を鳴らした通りの展開になったと主張することも可能な内容になっています。 私はそもそも、漠然と警鐘を鳴らすタイプの文章が嫌いです。抽象的に警鐘を鳴らすことは誰にもできますし、誰もが自分が偉くなったような快感をえられます。しかし、具体性に欠ける議論は、安易に流れ、考えを煮つめる努力を怠りやすいようです。 株式市場に対する警鐘としては、石井さんの「桐一葉落ちて天下の秋を知る」が有名ですが、ここにはかなりの具体性があり、かつタンミングに創造性がありました。 しかし、世の中に満ちあふれる多くの「警鐘」は、多分に漠然としており、そのタイミングにクリエイティブなものが感じられません。 1つの文章に長々と苦情を書きましたが、相場観が異なるからではありません。いよいよ正念場として、強気意見と弱気意見ががっぷり四つに組まなければならないときだと思うからです。円安のことなんか今は関係ないというのは、私の暴論でしょうか? 私はむしろ米国経済のほうが心配です。いよいよ始まる米国企業の決算発表を受けて、もしナスダック指数が反転上昇すれば、日本のハイテクも上昇し、自動的に日経平均も上昇し、日経平均が上昇すると途端に投資家のマインドが好転します。もしナスダックが下落すれば、まったく逆が起こります。 個人的には、私は7月後半の上昇に希望を持っています。特に17日のインテルの決算発表後、米国の半導体株指数がどう動くかかたずを飲んで、見守っています。「個人的」とことさら付け加えたのは、私は現時点では顧客に「いま、買ってください」という自信がなく、ある程度上か下かの流れが見えるようになってから買いに入っても遅くはないと考えるからです。もし、インテルの発表後が思わしくないと、19日のマイクロソフトの発表後が心配になります。 この夏、米国さえ大丈夫なら、日本株も心配ないと考えます。昨日、大幅減益報道にもかかわらず上昇した証券3社が今日もしっかりしているのは、市場地合いの1つの象徴として頼もしいことです。小型では前回書いた日本ビジコンが1800円台をつけてきて、これはちょっと自慢できるのではないでしょうか? |
第82回 厳しい下げ<7/9> 先週末の日米両市場の動きから予想されたこととはいえ、今日は朝から洪水のような売り物が出ています。日経平均では200円安ですが、感覚的には500円安くらいの感じで、激しく売られている銘柄が目立っています。 古河電工が引き続き悪役になっているようですね。800円を割ったのにはびっくりしました。業績は下方修正必至とはいえ、JDSの含み益を一部しっかりと懐に入れ、1株当たり株主資本が1000円超の好財務内容に変身したことから、下がっても850円くらいかと踏んでいたのですが、そのような常識的判断が通用しないような厳しい局面に突入してしまいました。 今後のことについて安易に予想を語ることははばかられるものの、我々の仕事はいつだって、判断を選択しなければなりません。売るか、買うか、休むか、です。もちろん、最終的な判断は顧客にお願いするしかないのですが、我々自身の判断を明確に伝えず、責任を回避すれば、それこそ顧客はなぜ我々に高い手数料を払ってくれるのか分からなくなります。 私の判断は、今日はとりあえず「買い」です。今日は、世も末とでもいうように前途を悲観した売り物が出ています。世界経済がこのまま縮小に向かうのなら、現在はたいていの株がまだ相当に割高ということになりましょうが、そんなだいそれた問題に簡単に結論が出るはずがありません。 過去は、世界経済の前途が真剣に懸念されたときは、結果的には杞憂となりました。だから、今回も大丈夫などといい加減な気休めを申し上げるつもりはまったくないのですが、根っからの弱気だったらともかく、これまで強気だった人が、この期に及んで「世も末だ」というふうに簡単に悲観に傾いてしまうのはどうかと私には思えます。 現在の下げについて、不良債権など国内問題に重点を置いて考える人もいますが、どう考えても98年までの「日本株売り」と下げの背景も内容も違い、米国発の世界経済の問題に根本があることは確かです。米国経済がもし深刻な調整に入るのなら、世界中の株はほとんど売りだと私は思います。また逆に、米国経済が当分大丈夫で、ソフトランディングの形になるなら、日本株は特に買いだと私は考えています。 米国発に問題を限れば、今すぐに結論が出る可能性は小さいものの、この夏中にはなんらかの方向性が見えてくる可能性が高いと考えます。 ソフトランディングなら、米国経済は6月までの四半期で落ち込みが止まり、7月以降の実体経済には底堅さがでてくるはずです。もしそうなら、米国の半導体株がいち早く昨年12月以来の底練りを脱し、やや上向きのトレンドに入るはずです。 (米国の半導体株指数は、先週末急落しましたが、それでもネットワークなど他のハイテク指数よりはましで、昨年来のボックス圏で比較的底堅い推移を続けています) 米国発の結論がどのような形でいつ出てくるか、現在ではまだそれはやや先だろうという感じだけで、私には定見がありません。期待するところでは、昨年9月にインテルから始まった下げですから、インテルの決算発表で悪材料織り込みになって7月後半上昇のストーリーですが、あくまで現状では楽観的な期待に過ぎません。 それよりも、当面は静観を基本としつつ、今日みたいに市場が悲観に強く傾いたタイミングでは、これはと思う銘柄を買うというスタンスを貫きたいと思います。 例えば、200円どころからずるずると下げ、150円台まで落ちたニチメン(8004)は本格的にも狙えると思います。5月の急上昇から半値になった日本ビジコン(9889)の1500円台も、1株利益94円かつ安定的な収益基盤から下値不安は限定的で、ソリューション分野での夢を加味して戻りを狙えると考えます。 下げの主役であるハイテクだって、たとえば古河電工の800円は、10%位なら戻りが狙えるタイミングだと私は思うのですが・・・・。 |
第81回 七転び八起き<7/5> 一昨日、この欄でご意見を求めたところ、早速にいろいろなメールを頂戴しました。 覚悟していた通り、厳しいお言葉もありました。そのいちいちに返事を書くのは結構大変でしたが、つい力が入ったりして、そんなに生真面目に返事を書くと、かえって嫌がられるぞと側で見ていた人から忠告されたりもしました。 性格はなかなか直りません。自分では思ってもいなかった点で指摘を受けると、しばらくは考え込んでしまいます。ネクラの性格とは全然違うと思いますが、結構引きずるほうかもしれません。ただし、根はタフですから、落ち込んだきりということはめったにありません。 いただいた貴重なご意見は、今後のバネにさせていただきます。 ところで、今日の相場はまた一段とひどいですね。ソニー200円安、古河電工55円安と、昨年後半の半導体株安の中でハイテクの砦になり、機関投資家の期待が最後まで高かった銘柄の下げがきついですね。 古河電工については、先日も書きました通り、958円で買いましたと書いたところ、その部類の株は当分だめだというメールをいただきました。ここにきて、まさしくご指摘の通りの結果となりましたね。(私の名誉のために付け加えますが、6月20日の買いは短期的に逃げることができました。あまり自慢になるようなことではないですが) どうも誤解があるようですが、私はハイテクに強気一辺倒ということではありません。こんな相場になったから言うわけでなく、ハイテクが上がらなければ相場が間違っているなどと思ったことは、少なくとも最近ではありません。 4月頃には、半導体株が底打ち反転するのではないかと大いに期待し、事実相場も少し明るみがさしましたが、その後これはなまじっかのことでは本格反転しないなという認識に立たざるをえず、お客様にもそのように申し上げています。 むしろ、中低位株中心にいわゆるバリュー株のほうが私自身もとから好きですし、目先も強気でよいと思っています。 ただし、長い目では、日本の半導体製造装置や電子部品はまだまだ伸びると考えています。半導体や電子部品の需要はいずれまた拡大するというのは、きわめて普通の考えだろうと思いますので、これを思い込みだ、将来のことは分からないと言われたら、株式市場で信ずべきものは一体何があるかと思ってしまいます。 私に根本的な思い込みがあるとすれば、持っているだけで価値のある株を買いたい、ということです。 価値なんか結局分からんと言ってしまえばそれまでですが、少なくとも、5年前、同じ5千円位出すならなら、兼松日産よりセブンイレブンを持っていたほうが、配当もいいし、株も増えるし、それに株主としての安心感があったでしょう。また、現在同じ130円位なら、シルバー精工を持っていつつぶれるかヒヤヒヤするより、合同製鉄の株主であったほうがよほど充実感があると私には思えます。(兼松日産やシルバーという企業が絶対に大成長しないと断言する気は私にはありません。あくまで確率を考えたうえでのことです。) 株主としての価値からいえば、今日日経に載った東京スタイルの問題は、非常に考えるべきことを多く提供していると思います。 筆頭株主になった村上氏の「本業に投資しないのなら株主に返すべきだ」という主張に対し、社長は「株主が経営に口を出したいのはわかるが、会社がつぶれたら株主も終わりだ」「どうして非難されたり、改善を要求されたりするのかよくわからない」という考えを持っているとのことです。 東京スタイルが優良企業であることは疑いありません。しかし、株主にとってよい会社であるかどうかは大いに疑問です。 配当は、過去10年間も据え置きです。社長は「年12.5円配当が安いとは思わない」と言っていますが、もし配当が今後も基本的に同じだとすれば、株主は配当だけでは株を持っている満足がえられません。国債のほうがまだましです。 もっとも、配当が今は少なくても、そのうちぐんぐん成長してびっくりするほどもらえるぞという期待があれば、それはそれで株主の今の満足につながるわけですが、この会社の場合、よくも悪くも超堅実経営なので、あまり成長期待がありません。 東京スタイルは、現金同等物の資産が多いので、前々からM&A候補と言われていましたが、実のところ村上氏が最初に手がけた昭栄ほどの魅力はないはずです。ただし、話題性は豊富なので、この村上氏の行動が今後どういう経過をたどるか楽しみです。 相場は一時戻り加減となりかけましたが、結局安くなってきました。合同製鉄はドレスナーの売りで下げ、アムロの押し目買いで止まり、小安いところで終わりそうです。私はこの株では、すでに七転八起きを経験済みですから、いまさら一喜一憂するつもりはありません。 私のほうから今買いをお勧めするわけではありませんが、もし買いたいという顧客には、どちらも化学で、内需バリュー系ではアイカ工業(4206)、半導体関連ではステラケミファ(4109)をお勧めすることにしています。 |