●「ひょっとしたら」と疑う能力
努力すれば必ず成功する?
世の成功者と称される人やたいていの経営者はこういう。
私は嘘だと思う。確かに努力は成功の一要素であるが、努力すれば必ず成功するという保証はない。(自分の身の回りの人達を観察すればいやでも納得せざるを得ないはず)
人間の一生という限られた時間内で成功するためには、努力の方向が正しくなければならない。ケイ線を毎日何百銘柄も引くとか、愚にも付かないようなバイブル本を何十回も読むとかいうのは明らかに間違った努力である。
例えば一目均衡表を勉強して投資した結果、失敗したとすると大抵の投資家は自分の勉強が足りなかったと安易に反省してしまう傾向がある。
ひょっとして一目均衡表の教え自体に欠陥があるのではないか、と考える投資家は少数派である。
しかし、この「ひょっとしたら」と考えることは株式投資で成功するための重要な要素である。
高名な株式評論家やアナリストの推奨する銘柄、テクニカル分析の本で必ず紹介されている投資手法、そんなものを信じて儲からなかった場合、なぜ失敗したのかをよく反省してみることである。
そうすれば「ひょっとしたらば、この評論家の名声は虚名ではないのか?」「ひょっとしたら、この手法はどこかに大きな誤りがあるのではないか?」という当然の疑問が発生してくるはずである。
株式投資の場合、かなり相場が上げ基調にある場合でも、儲かっている投資家よりも損をしている投資家の方が多い。大衆投資家は権威に弱い。その権威が声高に断定する方向に何の疑いもなく従ってしまう。そして、その結果があまり芳しいものでないことはすでに御承知の通りである。
株式投資の世界で生き残るためには、この「ひょっとしたら」と疑い「自分の頭で考える」能力が絶対に必要である。
当然のことながら私の提唱する投資法も疑ってほしい。疑って疑ってテストを繰り返し納得がいった上で実戦に利用して頂きたいと思っている。 |
|
株価変動を確率変動とみなし、統計的に勝てる確率の高いタイミングと、その時に作成するポ−トフォリオを機械的に検出し売買するための投資システムである。
以下具体的に解説する。
1)株価変動は確率変動である
確率変動であるということは一定の法則に基づいて天体の運行のようにきまった動きをするものではない、ということである。
統計学的証明は専門家による学術的な解説書にゆずるとして、このことは常識で考えても当然の事実である。
しかし、この事実は一方で、これまでのケイ線の法則の大半を否定することになる。なぜならば大半のケイ線は株価変動は周期性を持っており、一定のパタ−ンを形成した後には必ず所定の方向に大きく動く(そうならないのは極めてまれな例外であるとして「ダマシ」と称する)ということが手法の前提になっている。
我々は膨大なデ−タを長年にわたって日夜分析した結果、必ずしもそうなっていないという結論に達した。(従って大方のケイ線は実戦の役に立たないということになる)
それよりも株価変動は確率変動であるという事実を受け入れてしまって,株価変動がランダムな確率変動であっても確実に儲けられる方法を探るべきである。
そこで問題になるのが、どのような手法を使えばそれが可能であるのかという点である。
ここで考えて頂きたいのは株価は大衆によって動かされているということである。大衆とは芥川龍之介が言ったように「自分以外の人を大衆と思っている人」のことである。(「侏儒の言葉」より)
従って、機関投資家、大手のファンド・マネージャーといえども当然、この範疇に入る。
人間の類型として「決断がむずかしければむずかしいほど、また、間違う危険性があればあるほどさらにまた、客観的な評価尺度が少なければ少ないほど、人間の行動が一致する傾向が強まる」
(ダビッド・N・ドレマン著 村井幸也監訳「株は心理戦争だ」東洋経済新報社刊)
そのために相場は集団心理により、しばしば上下に行きすぎる。この行き過ぎたポイントで大衆と逆の行動をとれば市場平均を上回る投資成果が上がる理屈である。
騰落レシオのテスト
この行き過ぎを計る指標は昔からいろいろあるが、ここでは先にも述べた「騰落レシオ」の効用を厳密にテストしてみたい。騰落レシオは以下のように計算される。
(値上がり銘柄数N日間累計÷値下がり銘柄数N日間累計)×(100%)
通常この指標が70%を割り込むと相場の底入れが近いとされる。
前にもこの指標が70%を割り込んでV字反転したところで個別銘柄をバスケット買いすると効率よい投資ができることが多いと解説してきたが、今回、更に厳密に検証してみることにした。
(ここではN=25とした) |
日経平均上ではとても良い買い場をつかんだとは言い難いが、騰落レシオがその水準から上がっているという事実は、値下がり銘柄と値上がり銘柄の比率が改善していることを意味する。
従って、この時期に銘柄の選び方さえ間違わずに投資すれば良好なパフォ−マンスが期待できるのではないかという仮説を立てることができる。 |
上記は弊社の「JP1000」ソフトの<連続絞り込み>画面である。
2000年2月23日の例で以下具体的に解説していくことにする
1)対象銘柄選択(検索対象銘柄を貸借銘柄に限定する)
2)足取り(当日の株価が陽線の銘柄に絞り込む)
3)株価指定(当日の株価が30円以上1000円以下の銘柄に絞り込む)
4)出来高水準(100日平均で30万株以上の銘柄に絞り込む)
5)RJ指数(弊社開発オシレ−タ系指標RJが前日10以下当日15以下の銘柄に絞り込む)
6)相場欄計算(以上全ての条件に合格した銘柄の主要な指数を計算して一覧表にする)
7)検索結果→銘柄シ−ト(合格銘柄を1枚のシ−トに書き込み合成チャ−トを作成する)
上の画面は上記の作業をワンタッチで出来るように作られている。
2000年2月23日の合格銘柄は相場欄に以下のように表示される。
|
単に安いところを買うという全く単純な手法であるが、平均株価が一貫して値下がりしている時期にみごとに上昇銘柄を選んでいる点に注目して頂きたい。 |
ちなみに資金の関係で17銘柄も買えないというむきのために合格銘柄のうち、出来高の多い順に5銘柄のみを買い対象にすると下のような合成チャ−トになる。
●5銘柄に絞った場合 |
次に2000年10月30日の例をとって<絞り込み>の過程を具体的に見ていきたい。
|
1)検索対象銘柄選択→貸借銘柄に絞る(1587銘柄が合格する)
2)足取り→当日日足陽線(847銘柄が合格)
3)株価指定→30円以上1000円以下(641銘柄が合格)
4)出来高水準→100日平均で30万株以上(114銘柄が合格)
5)RJ指数→前日10以下、当日15以下(1銘柄が合格)
上記の作業で全上場銘柄のうち合格銘柄はたった1銘柄に絞られてしまった。
合格銘柄日足 |
●2000年11月1日の例・・(失敗したらこうなる) |
日経平均と合格銘柄の比較(2000年11月1日を100とした) |
この期間、日経平均の値上がりはほぼゼロにもかかわらず、合格2銘柄は6割上昇していることが分かる。失敗したケ−スでもこの程度の値上がりが期待できるのが逆張りの特徴である。 |
日経平均と合格銘柄の比較(2001年1月12日を100とした) |
ここで解説した投資法は、市場全般が安い時に、安い銘柄をバスケットで買う、という極めて単純な投資法です。
この投資法は秘法でも何でもありません。単純に下げすぎた銘柄を合理的手順を踏んで選び出したに過ぎません。
私自身、一時期ケイ線に凝って、ありとあらゆる秘法を大枚を払って研究した時期がありました。
しかし、ここで解説した程度のパフォ−マンスでさえ可能にする秘法にお目にかかったことがありません。
株式投資で何よりも大切なことは己の能力の限界を知り、合理的に儲けやすい時にのみ出動することではないかと思います。
(2001年1月12日以降の検証は次回にいたします) |
|